インパルス!の最初の一枚目
若い頃、ジャズ者初心者の頃から、インパルス!レコード(Impulse! Records)がなんとなく好きである。このレーベルは、かのフュージョン・ジャズの仕掛け人の一人、クリード・テイラーによって1960年に設立されたジャズレーベルである。
まず、ジャケットが良い。見開きのジャケットで、黒とオレンジ色で統一されたデザインが特徴的。紙の厚みもあって重厚、コーティングも上等で、その光沢がお洒落。そして音が良い。ブルーノート・レーベルの録音技師で有名な、ルディ・ヴァン・ゲルダーがサウンド・エンジニアをしている。インパルス!レコードの音には独特の個性がある。聴いていて「あっこれは、インパルス!やな」と判る。
アルバムの内容には、しっかりとした統一感がある。ジャズのその時点でのトレンドをしっかりと押さえ、旬の音を捉える。インパルス!のジャズの音はどれもが新しい。プロデュースがしっかりしているのだ。多くのアルバムはボブ・シールによりプロデュースされている。なるほど、ボブ・シールの仕業か。納得。
そんなインパルス!レコードのアルバムをカタログの順に聴き直している。まずは、Impulse! 9000 seriesからだろう。最初の1枚目(A-1)は、Kai Winding & J.J. Johnson『The Great Kai And J.J.』(写真左)。1960年10月、11月の録音になる。
ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Bill Evans (p), Paul Chambers (tracks 1, 3, 6, 7) ; Tommy Williams (tracks 2, 4, 5 & 8-11) - (b), Roy Haynes (tracks 1, 3, 6, 7) ; Art Taylor (tracks 2, 4, 5 & 8-11) - (ds)。当時として、なかなか充実の布陣である。パーソネルの選定にも気を配っていることが感じ取れる。
カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソン、二人の一流トロンボーン奏者の双頭リーダー盤である。二人の一流トロンボーン奏者の双頭リーダー盤なので、競演バトルが繰り広げられるのか、と思いきや、そうはならない。録音年は1960年。ジャズが鑑賞音楽としてのポジションを獲得しつつある時代である。
この盤の音世界は、一言で言うと「お洒落で聴き流しに最適」。ほどよくアレンジされて、カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソン、二人の一流トロンボーン奏者のユニゾン&ハーモニー、チェイス、アドリブ交換、どれもがとても心地良い響きを持って展開される。アドリブ・フレーズですら流麗で、これも事前にアレンジされているのでは、と勘ぐってしまう位な「お洒落度合いの高さ」。
曲によっては、その流麗さにブレーキがかかって「オヨヨ」と前のめりになるが、これはアレンジ・ミスが原因で、二人の一流トロンボーン奏者の問題では無い。二人の一流トロンボーン奏者はどちらも、この盤ではご機嫌なプレイを聴かせてくれる。
ピアノにビル・エバンスの名が見えるが、この盤では特に目立ったプレイを展開している訳では無い。あまり個性を前面に押し出しておらず、平均点なピアノに落ち着く。逆に、ベース、ドラムは、曲によってそれぞれ二人のプレーヤーが分担しているが、いずれもなかなか粋なサポートを繰り出していて、聴いていて楽しい。
お洒落な聴き流しが最適なトロンボーン盤である。トロンボーンのほのぼのとした、伸びやかなトーンをベースに、聴いていて、なんか優しい、聴いていて、なんか心温まる音世界が実に心地良い。とにかく、当時としてアレンジが新しい。鑑賞音楽としてのジャズが根付いてきたんやなあ、ということが追体験できる好盤である。
震災から5年7ヶ月。決して忘れない。まだ5年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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