やはり聴かず嫌いは良く無い
この人のアルバムは一筋縄ではいかない。この人のピアノは一筋縄ではいかない。スカッとシンプルにピアノが展開される訳では無い。捻りまくっていて、かつ耽美的で印象的。タッチは包み込むように繊細で柔らか。ダイナミックな展開を期待する向きには、聴いていて「イラッ」とする様な繊細で温和な音。
そんなケニー・ワーナーのピアノの個性を聴くことが出来るアルバムがこれ。Kenny Werner『Form & Fantasy』(写真左)。2001年のリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Werner (p), Johannes Weidenmueller (b), Ari Hoenig (ds)。ケニー・ワーナーは1951年生まれ、米国出身の今年64歳のベテラン・ピアニスト。
ワーナーのピアノは、明らかに「エバンス派」。ビル・エバンスのピアノ表現の流れを強く汲む音で、タッチは、ビル・エバンスほど、明快でダイナミックでは無いが、音のエッジが丸くて繊細で包み込むようなタッチは、喩えれば「繊細で優しいビル・エバンス」。
ちょっと欧州的なクラシック音楽の様なフレーズの展開は、ちょっとキース・ジャレットを彷彿とさせる。誠実に繊細にまとまったキース・ジャレットと形容して良い感じのソロ・パフォーマンス。ビル・エバンス+キース・ジャレット÷2=ケニー・ワーナーである(笑)。
このアルバムは基本的にスタンダード集という触れ込みだが、エリック・クラプトンの「Tears In Heaven」や、渋めのスタンダード「Dolphin Dance」「Time Remembered」などが収められていて,なかなか聴かせてくれます。ちょっと温和しめの繊細でエッジの丸いピアノは、疲れた頭を休める為に、ひっそり一人の部屋の中で聴くのがぴったりのピアノ・トリオ盤です。
内容的には、ピアノ、ドラム、ベースのそれぞれが弾きすぎず、叩きすぎず、優雅で優しい雰囲気で、それぞれの演奏が進行していきます。音の響きが美しい演奏が多い。フレーズの展開とタッチは明快に「ビル・エバンス」。
音的には、ケニー・ワーナーの個性について「つかみ所」がなかなか見いだせない、判り易そうで意外と難解なアルバムですが、ピアノ・トリオの演奏としては、やはり魅力的な内容だと思います。
我が国ではあんまり評価が芳しく無いケニー・ワーナーですが、聴いてみると意外と良いのでビックリしました。やはり、ジャズは自分の耳で聴いてみないとな、と思います。
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