マル晩年のソロ・ピアノ盤 『Mal Waldron』
秋である。やっと気温も落ち着いた様で、秋たけなわの気温、湿度に落ち着いた感がある。加えて、知らないうちに日が短くなった。ここ千葉県北西部地方では、夕方の6時になればもう辺りは暗い。肌寒くなるわ、湿度は低くなるわ、日は短くなるわ、で物寂しいこと限りなし、である。
そんな物寂しい「秋の夜長」、久し振りにジャズ・ピアノのソロ盤にじっくりと耳を傾ける。秋の夜長は室温もほど良く、世の中の喧噪も落ち着いて静かである。そんな空気の中、ピアノ・ソロのパフォーマンスは耳に沁みる。
ピアノ・ソロ盤というと「キース・ジャレット」となるが、それではあまりに「工夫が無い」。あまりに当たり前のチョイスは、どうにもいけない。何かちょっと捻りが効いたピアノ・ソロ盤は無いか、と探していてチョイスした盤がこれである。
そのタイトルはずばり『Mal Waldron』(写真左)。2003年2月のリリース。マルと最後の7年をすごした「3361*BLACKレーベル」の伊藤秀治氏が、自ら所有する音源で構成した未発表ソロ。1995〜99年の間に録音されたソロ・パフォーマンスからの選曲。2002年12月に逝去したマル追悼として、この盤はリリースされた。
選曲を見渡せば、マルの「おはこ」が、ズラリ揃えられている。マルのピアノの個性といえば、かなり特徴的なピアノで、一聴すれば直ぐに判るほどである。
ガンゴンと硬質なタッチに、不協和音中心のおどろおどろしい旋律が前衛っぽく響く。硬質なテンション高い速弾きのフラグメンツ。突然響く、セロニアス・モンクを彷彿とさせる不協和音のブレイク。幾何学模様のような、スクエアに展開する硬派なアドリブ。現代音楽を想起させる、ちょっと取っ付き難い、硬い頑固なピアノだが、底に流れるブルージーな雰囲気が、明らかに「ジャズ」を感じさせる。
しかし、そんな硬質で尖った、ちょっと取っ付き難い、硬い頑固なタッチが、ちょっと優しく穏やかなイメージに変わっている。基本的には硬い頑固なタッチではあるけれど、ちょっと柔らかで暖かな雰囲気が漂っていて、聴いていてとても心地良い。
晩年の録音であること、そして、録音したスタジオが山中湖湖畔のペンションのスタジオであることから、恐らく、適度にリラックスして、穏やかな精神状態の中でのパフォーマンスに至ったのではないか、と睨んでいる。マルのピアノ・ソロのベスト・パフォーマンスのひとつとして良いかと思う。
良いピアノ・ソロ盤です。録音状態も良好で、オーディオ的にもお勧めの一枚。優しく穏やかなマル・ウォルドロンのピアノを体感できる好盤です。
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