ファナリッチの個性の大転換
ドミニク・ファリナッチ(Dominick Farinacci)。1983年、オハイオ州クリーヴランド生まれの今年33歳。トランペッター。ジャズメンとしてはまだまだ若手の有望株。作曲家、そしてビッグバンド・リーダーでもある。かのウィントン・マルサリスの目にとまり、頭角を現す。ストレート・アヘッドな正統派トランペットが個性。
私、松和のマスターにとっては、2003年、弱冠19歳で初リーダー作「マンハッタン・ドリームズ」で幸運なデビューを果たして以来、ずっと注目しているトランペッターである。とにかく、メインストリームど真ん中なトランペットが清々しくて良い。バラード・プレイにも秀でていて聴き応えがある。
そんなファリナッチが、その音楽的個性を大転換したアルバムをリリースした。Dominick Farinacci『Short Stories』(写真左)。今年6月のリリース。ファリナッチのMack Avenue移籍第一弾である。パーソネルからプロデュースを眺めていると「あれっ」と思う。なんと、あのフュージョンの仕掛け人、フュージョンのプロデューサーのレジェンド、トミー・リピューマがプロデュースを担当しているではないか。
ということは、と、このアルバムを聴いてみると、まずは「唖然」。メインストリームど真ん中なトランペットが、フュージョン・ジャズなトランペットに変身している。これは「個性」の大転換である。様々な音楽的要素を組み合わせたフュージョン・ジャズ的な作品に仕上がっている。
アルバム全体の選曲が振るっていて、冒頭の1曲目にジプシー・キングスの大ヒット曲である「Bamboleo」。おおっ、と思いきや、2曲目はファンキー・ジャズの古典的名曲「Senor Blues」が来る。続いて、トム・ウェイツの「Soldier’s Things」、そして、5曲目は、クリームの名曲「Sunshine of Your Love」。うへ〜っ、と言う感じです(笑)。
さすがに、プロデュースがトミー・リピューマだけあって、完璧な「ポップ・フュージョン」な音世界に統一されています。曲によってはゴージャスなストリングスやボーカルが入ったりして、明らかに「フュージョン・ジャズ」な仕上がり。これ、かのウィントン・マルサリスが聴いたら、どう思うんでしょう。ちょっと心配です。
でも、フュージョン・ジャズ者の私としては、これはこれで「あり」かな、と思います。全体の雰囲気はフュージョン・ジャズですが、ファリナッチのトランペットは良く鳴っていますし、アドリブ・ラインも流麗でイマージネーション豊か。その辺は、ストレート・アヘッドなトランペットを吹きまくっている時と変わらない。
先に「個性の大転換」と書きましたが、意外と今回に限って「目先を変えた」異色作の位置付けに落ち着くかもしれませんね。次作がどう出るか、楽しみになりました。フュージョン・ジャズなファリナッチも、意外と魅力的なんやなあ、と評価しています。
震災から5年7ヶ月。決して忘れない。まだ5年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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