70年代フュージョンのテイスト
最近、米国でも日本でも、フュージョン・ジャズのテイストがベースのアルバムに良く出くわす。フュージョン・ジャズといっても、1970年代後半から1980年代初頭の頃の「フュージョン・ジャズ全盛時代」の音のテイストがリバイバルしている様に感じる。
今年、メジャーデビューを飾ったこのサックス奏者のアルバムもそんな音のテイストである。寺地美穂『Beautiful Maic』(写真左)。宣伝文句を見ると「瑞々しく爽やかな美貌のサックス・プレイヤー、寺地美穂」とある。まだまだ元気な日本人女性ジャズ・サックス奏者の新人である。
冒頭の「Beyond The Rainbow」を聴くと、思わず「ああ、懐かしい音やなあ」としみじみする。明らかに1970年代後半のフュージョン・ジャズの音世界である。アルト・サックスもしっかり鳴っているので、最初、聴いていたら「あれ、これってナベサダさん?」と思う。が暫く聴いていて「ナベサダさんとはちゃうなあ」ということで落ち着く。
ナベサダさんのアルトと音色は良く似ていてるのだが、力強さとアルトのブリリアントな鳴りがちょっと弱い。アドリブラインの吹きっぷりが繊細で、ビ・バップ仕込みの豪快な展開とは異なる。それでも、テクニックは申し分無く、アドリブ・ラインの吹き回しも堂々としている。でも今まで聴いたことの無いアルト。「で、誰だこれ」となる。
1970年代後半のフュージョン・ジャズのテイストのハイライトが、5曲目の「Savanna Hot Line」。前奏から最初のメイン・フレーズを聴けば、1970年代後半のフュージョン・ジャズを聴きまくったジャズ者であれば直ぐに判る。日本フュージョン・ジャズを代表するバンド、ネイティブ・サンの名曲である。うわ〜懐かしい。しかし寺地美穂、ソプラノもいける。
音が素直で綺麗なアルトで最後まで楽しく聴かせてくれます。メジャー・レビューのスタジオ録音ですが、ここまで活き活きと元気にアルト・サックスを吹き上げることが出来れば及第点。1970年代後半のフュージョン・ジャズのテイストが上手くフィットしていて、なかなか聴いていて楽しいフュージョン盤に仕上がっています。
プロデュースは米米CLUBの金子隆博 (a.k.a Flash Kaneko)。なるほどな、と感心。この1970年代後半のフュージョン・ジャズのテイストをズバリ当て込んだプロデュースは、ちょっと変わった、個性的なプロデューサーなんだろうなあ、と想像したんですが、ビンゴ、でした(笑)。
これからが期待できる日本人女性サックス奏者の出現である。しかし、日本人女性ジャズ・ミュージシャン、まだまだ元気ですなあ。しかも、内容のある、まずまず聴き応えのあるアルバムが多くて、ちょっとウキウキしています。
震災から5年7ヶ月。決して忘れない。まだ5年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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