ムラーツのベースは「正統派」
アコースティック・ベースの生存するレジェンドって、数少なくなった。ロン・カーターは相変わらず元気みたいだが、あとは〜、と考えると後が続かない。そうそう、ジョージ・ムラーツがいたぞ。それから、ゲイリー・ピーコックくらいか。
と思いつつ、ネットを徘徊していたら、このアルバムに遭遇した。George Mraz『Plucking & Bowing』(写真左)。今年の3月に突如リリースされた。ちなみにパーソネルは、George Mraz (b), Tom Garvin (p), Peter Donald (ds)。魅惑のピアノ・トリオ構成である。
このアルバムは、現代のジャズ・ベースのレジェンド、ジョージ・ムラーツが、1970年代末~80年代頃にプログレッシヴ・レーベルに吹き込んだピアノトリオ作品になる。確かに、冒頭の「Giant Steps」の前奏のムラーツのアコ・ベースの音が実に若々しい。硬質にビンビン鳴りまくる。
ジョージ・ムラーツはチェコ出身。ムラーツのベースは「正統派」。とりわけ優れたテクニック、クラシック音楽を学んだ成果であろう音感とピッチの良さ、そして、ジャズ・ベーシストには珍しい「アルコ弾き(弓弾き)」の達人である。いわゆる「絵に描いた様なジャズ・ベース」、いわゆる「ジャズ・ベースとはかくあるべし」という感じの「正統派」ベースである。
特にピッチがばっちり合ったベースでビンビン弾きまくるので、その響きがとても心地良い。耳当たりがとても良いのだ。やはり、楽器のピッチはしっかりと合わせるべきだ。そんな当たり前のことを、ムラーツのベースは再認識させてくれる。とにかく、惚れ惚れするようなベース音なのだ。
この『Plucking & Bowing』は、1970年代末~80年代頃の演奏なので、それぞれの出す音がとても若い。そして、演奏のスタイルもハードバップがメイン。モードやネオ・ハードバップの様な新しい響きはこのアルバムにはまだ早い。成熟した純正ハードバップな演奏が繰り広げられる。
「Giant Steps」「I Remember Clifford」「Alone Together」 などお馴染みのミュージシャンズ・チューンや有名スタンダード曲の演奏がやはり魅力的だ。どの曲でもムラーツのベースが大活躍。ムラーツは、それぞれの曲でさり気なく、彼自身が持つアコ・ベースのテクニックの全てを披露している。「ジャズ・ベースとはかくあるべし」、そんな雰囲気を強く感じる盤である。
ピッチの合っているアコベの音は素晴らしい。ムラーツのベースは一聴して直ぐにムラーツか、と思うくらい、ピッチが合っている。録音年月が確定出来ない、ちょっと怪しげな音源ですが、その演奏内容は一級品。ジャズ者ベテランの方々中心にお勧めの好盤です。
震災から5年5ヶ月。決して忘れない。まだ5年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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