ジョン・トロペイのファースト盤
最近、フュージョン・ジャズの好盤再発見、好盤発掘をせっせと進めている。大学時代から30歳代までの記憶を甦らせつつ、アルバムの選定を進めている。これが実に楽しい作業なのだ。そんな作業の中で、最近、ギタリスト、ジョン・トロペイに着目している。
John Tropea『Tropea』(写真左)。1975年のリリース。著名なフュージョン・ギタリストの一人、ジョン・トロペイのファースト盤になる。以前はクロスオーバー時代、デオダートのバンドのギタリストとして活躍していたから、40年以上、第一線で活躍していることになる。
ジャズ・ミュージシャンの個性を感じるには、そのミュージシャンの「ファースト盤を聴け」と言われる。ジャズの場合、ファースト盤を録音する前に、他のミュージシャンのバンドの一員として腕を磨いているので、自らのファースト盤をリリースする時期には、しっかりとした個性を確立しているのだ。
さて、そんなトロペイのファースト盤『Tropea』であるが、参加ミュージシャンが錚々たるメンバーで占められている。主だったところをピックアップすると、David Spinozza (g), Don Grolnick, Eumir Deodato (key), Will Lee (b), Steve Gadd, Rick Marotta (ds), David Sanborn George Young (as), Michael Brecker (ts), Randy Brecker (tp), などなど。フュージョン・ジャズの有名どころがズラリ、である。
個性的なカッティングや、シャープで硬質なアドリブ・フレーズなど、トロペイの個性全開であるが、このファースト盤はトロペイのギターの個性を前面に押し出すのでは無く、トロペイのギターを核に置きながら、それぞれの曲想に応じた共演者を上手く組み合わせて、バランスの取れた、アーバンで非常に品の良いフュージョン・ジャズに仕立て上げることをメインに据えてプロデュースされている。
Steve Gadd〜Rick Marottaという、当時の売れっ子ドラマー2人によるダブル・ドラムとWill Leeによる野太いエレベが織りなす、グルーヴィーなリズム&ビートが耳を惹く。パーカッションがそんな重厚なリズム&ビートに彩りを添える。フュージョン・ジャズがベースではあるが、リズム&ビートがしっかりと充実していることが、この盤の長所である。
さらにアレンジにも独特の特徴がある。ファースト盤をリリースするという場合、全面的に自らがアレンジを担当して独りよがりな音になったり、あるいはレコード会社のお膳立てしたアレンジに安直に乗ってしまって「没個性」となってしまう、といったケースが多い中で、このトロペイのファースト盤はアレンジに工夫を施している。
彼の親しい友人でもあるミュージシャン達によるアレンジの採用や共同アレンジによる楽曲が目立つのだ。収録されたどの楽曲もアレンジが秀逸で、とてもバランスの取れた、流麗な楽曲に仕上がっている。聴き耳を立てていると、このファースト盤、落ち着きと小粋な展開が詰まった、フュージョン・ジャズのベテランがアレンジした盤と錯覚するくらいだ。
大向こうを張った派手な内容では無い、落ち着いた、風合いの良いフュージョン・ジャズ盤である。これが良い。決して派手ではないタイプのギタリストであるトロペイではあるが、この内容充実、聴き応えのあるファースト盤には好感度アップである。
震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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