ジャズ喫茶で流したい・86
今年の夏は暑い。とにかく蒸し暑い。とはいえ、関東地方は意外と酷暑の日が続いたのは短くて、意外と涼しいのが救いである。酷暑の季節は、どうしてもハードな純ジャズは避けたくなる。熱い演奏というのが辛い。しかし、切れ味の良い、爽快な純ジャズは季節を選ばない。酷暑の季節には、聴いていて精神的に「スカッと」する。
Sam Jones『Visitation』(写真左)。そんな切れ味の良い、爽快な純ジャズの一枚がこのアルバム。1978年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Ronnie Mathews (p), Sam Jones (b), Terumasa Hino (cor), Al Foster (ds), Bob Berg (ts)。今の目で見れば錚々たるメンバーである。特に目を惹くのは、日本トランペットのレジェンド、日野皓正の参加。
この盤はサム・ジョーンズがリーダー。いわゆる「ベーシストのリーダー作」である。ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出するやり方だ。サム・ジョーンズのレベルの高いリーダーシップが聴いて取れる。実に良い内容の、バランスの取れたクインテットの演奏である。
1970年代の純ジャズとしては秀逸な出来である。収録されたどの楽曲を取っても、その演奏内容は個性的で素晴らしい。それもその筈、この錚々たるメンバーである。悪かろう筈が無い。
1970年代に、とりわけ日本で人気ピアニストだったスイング感抜群のロニー・マシューズ。モーダルで印象的なフレーズが新しいテナーのボブ・バーグ。ジャズの要となるリズム&ビートをガッチリとキープ、安定感溢れるドラミングを供給するアル・フォスター。そして、日本を代表する、エモーショナルで切れ味の良いトランペッター日野皓正。
そして、リーダーは、タイトで骨太でモダンなベーシスト、サム・ジョーンズ。サム・ジョーンズは、1981年、57歳で他界しているので、亡くなる3年前の録音になる。しかし、そんなことは微塵も感じさせない、粘りのあるソリッドで重い骨太な低音がグルーヴ感を盛り立てる。重心の低い、ブンブンとしなりながら、うねり歩く重低音なベース。
一言で言うと「切れ味の良い真摯な純ジャズ」。クインテットの5人が真摯に誠実にメインストリームなジャズを創造する。お互いの音をしっかりと聴きながら、独りよがりにならず、聴く者の立場にも立って、魅力的でモダンなジャズを展開する。その内容は当時の純ジャズの先端をいくもの。1970年代純ジャズの素晴らしい成果の一枚と言って良い。
この盤は、SteepleChaseレーベルからのリリース。ジャケットも渋くて、タイポグラフィーも趣味が良い。さすがはSteepleChase。良いアルバムを作るなあ。
震災から5年5ヶ月。決して忘れない。まだ5年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 夏はボサノバ・ジャズ・その26 | トップページ | 新主流派のジャズ・ヴァイブ »
コメント