こんなアルバムあったんや・65
ジャズ畑のミュージシャンがボサノバをやっても、最終的には純粋なボサノバにならない、と言われる。確かにそうで、根本的にリズム&ビートの捉え方と叩き出し方が違う様なのだ。タッチのアクセントもちょっと違うし、ボサノバにはファンクネスは基本的に無縁だ。
それでは、ジャズ・ボサを作った男と言われる名ドラマーがいる。そんな彼がジャズ・ピアノ・トリオでボサノバをやったら、どうなるのだろう。その具体的な答えの一つが、このアルバム『Milton Banana Trio』(写真左)。ミルトン・バナナは、ボサノバのトップ・トラマー。そんなミルトン・バナナがリーダーとなって、ジャズ・ボッサをピアノ・トリオのフォーマットで演奏する。
冒頭の有名曲「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」を聴けば、その個性が良く判る。確かに、リズム&ビートの扱い方、アクセントの置き方が違う。加えて、ファンクネスは皆無。乾いていて切れ味が良い。そして、全く「甘い」ところが無い。軽音楽のボサノバは甘いところを前面に押し出しているが、本格的なボサノバは決して「甘く」は無い。
2曲目以降、「プリミチーヴォ」「サマー・サンバ」などなど、ボサノバの名曲がズラリと並ぶ。そして、それぞれのジャズ・ボッサの演奏は、実に硬派で聴き応え十分。実に切れ味良く、ほどよい趣味の良い苦みのある演奏で、聴き込み甲斐がある。そして、クールで硬派な演奏の背後に、ホットな音世界が見え隠れするところも聴き逃せない。
聴いていて面白いのは、米国東海岸、西海岸、はたまた欧州のジャズとは全く雰囲気が異なるジャズ・ボッサの音世界で、ブラジルの人が、南米のラテンな血がジャズをやるとこんな感じになるのか、と思わず感じ入ってしまう。特に、リーダーのミルトン・バナナのドラミングは秀逸で、ピアノ・トリオの演奏とはいえ、知らず知らずのうちに「ドラミングの妙」に聴き入ってしまう。
こういうピアノ・トリオがあるとは、ジャズ・ボッサの演奏があるとは、全く思わなかった、と、目から鱗では無い、耳から鱗な「このアルバム」の存在を知ったのは、今から10年ほど前。今では、CDやダウンロード音源で入手出来て、気軽に聴くことが出来る様になったのだから素晴らしい。ほんと、長生きはしてみるものである(笑)。
震災から5年5ヶ月。決して忘れない。まだ5年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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