夏はボサノバ・ジャズ・その25 『Saudade』
European Jazz Trio『Saudade』(写真左)。邦題『黄昏のサウダージ』。2007年のリリース。収録曲を眺めると、A.C.ジョビン、ルイス・ボンファ、ジョルジュ・ベン、イヴァン・リンスの心癒される楽曲を中心に、マイケル・フランクス、カーペンターズ、ポール・マッカートニーのカヴァー曲が並ぶ。
「ボサノバ」をコンセプトの中心に持ってきたアルバムと解釈するのが相当な内容である。基本的にミッドテンポからスローテンポな演奏で締められ、かつアレンジは聴き易く判り易いもの。硬派なジャズ者の方々からは「イージーリスニング」のレッテルを貼られそうなムーディーな内容。
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ(EJT)は、オランダのジャズ・ミュージシャン3人で結成されたジャズ・ピアノ・トリオ。哀愁漂うリリカルでムーディーなサウンドと欧州の気品、クラシックの影響を感じさせるシンプルで判り易いアレンジが特徴。クラシック、ミュージカル、歌謡曲、童謡、ポップス、ロックの有名な楽曲のカバーが特徴。この辺から「イージーリスニング」と揶揄されるEJTの個性が良く判る。
しかし、演奏については、確かに「イージーリスニング」な感じなのだが、ギリギリのところで、ジャジーなリズム&ビートとアドリブの展開が存在しており、演奏を聴けば判るのだが、基本的には、しっかりとしたピアノ・トリオなジャズであることが良く判る。そういう意味で、このEJTの音は「イージーリスニング・ジャズ」として評価して良いと思う。
聴けば確かに聴きやすいピアノ・トリオなジャズが延々と続く訳で、内容の薄い演奏であれば、途中で飽きてしまうんですが、意外とこのアルバムの演奏は飽きない。そういう意味でも、この盤の内容は単なる「イージーリスニング」では無い。このEJTの音は「イージーリスニング・ジャズ」として評価して良いでしょう。
ちなみにパーソネルは、Marc van Roon (p), Frans van der Hoeven (b), Roy Dackus (ds)。いずれもテクニックは確か、演奏内容もしっかりしたもの。決して、イメージ先行のピアノ・トリオでは無いし、レコード会社が作り出した、企画型のピアノ・トリオでも無い。「イージーリスニング・ジャズ」をやる、というだけで敬遠するには勿体ないピアノ・トリオである。
さて、この 『Saudade』というアルバム、やはり、ボサノバ&サンバ曲のカバーの出来が良い。レオン・ラッセルやマイケル・フランクスのポップ・ヒット、さらにはポール・マッカートニーのシングル曲までを取りあげているが、その出来は「まあまあ」。ジャズ化についてはちょっと無理のある楽曲もあり、やはり、このアルバムは徹頭徹尾「ボサノバ&サンバ・ジャズ集」で統一したほうが良かったと思う。
こういう「イージーリスニング・ジャズ」もたまには良い。猛暑の夏、聴き易く耳に優しいジャズが良い。聴きやすい「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で暑気払いである。早く涼しくならないかなあ。
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