完全復活一歩手前のマイルス
マイルス・デイヴィスが1981年、奇跡のカムバックを果たしてからのアルバムを聴き直している。今日は、1983年にリリースされた、Milesが演奏活動に復帰してから2枚目のスタジオ録音のアルバムを聴き直した。
そのアルバムとは、Miles Davis『Star People』(写真左)。1983年のリリースになる。ちなみにパーソネルは、John Scofield, Mike Stern (el-g), Bill Evans (ts, ss), Marcus Miller, Tom Barney (el-b), Al Foster (ds), Mino Cinelu (perc)。クレジットはされていないが、Gil Evans (arr)。
このアルバムにして、マイルスはカムバック前から追求していた「従来のジャズのトレンドやビートとは全く関わりの無い、全く新しいジャズのビートとスタイル」を確立した感がある。冒頭の「Come Get It」から、ラストの「Star on Cicely」まで、全く迷いや惑いの無い、スカッとしたエレ・ジャズが展開されている。
ビートは明らかに「エレ・マイルス」のビート。音は完璧なエレクトリック・ジャズ。しかも、従来のジャズのビートやスタイルの引用は全く無い。全く新しいエレ・マイルスのビート、エレ・マイルスのスタイル。加えて、隠遁前の、どこか暗い、どこか闇に蠢く様な怪しい雰囲気が一掃されている。このアルバムの音は「スカッとして爽快」。
このアルバムを聴いていると、マイルスは良い感じでカムバックしたんやなあ、と心から思う。アレンジに関して、盟友ギル・エバンスの協力を得て、全く迷いや惑いの無い、スカッとしたエレ・マイルスの音世界が展開されている。
冒頭の「Come Get It」が、エレ・マイルスの「踏み絵」の様な楽曲。いきなり、ディストーションの効いたエレギの強烈なフレーズが始まる。恐らく、リリース当時、硬派な旧来のジャズ者の方々は、この出だしのエレギのフレーズを聴いただけで、プレイヤーの針を上げてしまったのではないか。それほど、強烈な「ロックの様な響き」のエレギである。
ちなみに、このアルバムでは、サックス奏者のビル・エヴァンスの紹介によりジョン・スコフィールドがマイルスのグループに加入。このジョンの加入により、一部の楽曲はマイク・スターンとのツイン・ギター編成でレコーディングされている。
実はこの「ジョン・スコフィールド」のギターの参入がこのアルバムの「肝」である。この素敵に捻れて歪んだエレギがこのアルバムの聴きものである。恐らく、隠遁前からマイルスが追求してきた「エレギ」の音は、こんな音ではなかったのか。このジョンスコのエレギは、エレ・マイルスのビート&スタイルにピッタリである。
加えて、マーカス・ミラーのベースも良い味を出している。彼の指弾きが素晴らしい。ベースの音がしっかり聴き取れる、優れた再生装置で聴いて欲しい。彼の弾き出すベース・ラインは彼独特のもの。そして、ミノ・シネルのパーカッションとカウベルのグルーブがこのエレ・マイルス独特のビートを支えている。
アルバム・ジャケットには、マイルス自身が描いたイラストが使用されている。恐らく、このジャケットも、リリース当時、硬派な旧来のジャズ者の方々は拒否反応を示したのではないか。それほどまでに、従来のジャズらしからぬジャケットである。
しかし、このジャケットのイメージが、このアルバムに詰まっている「全く新しいエレ・マイルスのビート、エレ・マイルスのスタイル」のイメージにピッタリなのだから面白い。奇跡のカムバック以来、完全復活一歩手前のマイルスの雄姿がこのアルバムにある。
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