明確に音が変化したカシオペア 『Eyes of The Mind』
カシオペアは、僕がジャズを聴き初めて程なくデビューしたので、今までずっと親近感を覚えてきたバンドである。特に、純日本というところが更に良い。デビューアルバムからずっと聴き続けて来たバンドである。
このアルバムは、僕にとってカシオペアが「永遠のお気に入り」のバンドに昇格した記念すべきアルバムである。そのアルバムとは、CASIOPEA『Eyes of The Mind』(写真左)。1981年4月のリリースになる。改めて、カシオペアのメンバーは、野呂一生 (el-g), 向谷実 (key), 櫻井哲夫 (b), 神保彰 (ds)。
このアルバムを初めて聴いた時、明らかに音が変わったと思った。ベースラインが太くなったというか、リズム&ビートが太くなったというか、とにかく演奏のベースが「太く逞しく」なった。そこにバカテクの野呂のギターと向谷のキーボードが躍動する。
しかし、バカテク優先の「かっ飛び」フレーズでは無い。太く逞しいビートに乗って、余裕あるスケールの大きいフレーズが展開されるのだ。しかも、録音が良いので直ぐに気がつくのだが、音が「乾いていてシンプル」。あれ〜なんでかな〜、なんて思いつつライナーノーツを読んで、ようやく合点がいった。
このアルバム、ロスの録音で、しかも、プロデュースがハーヴィー・メイソン。ハーヴィー・メイソンと言えば、フュージョン・ジャズのファースト・コール・ドラマー。このドラマーのプロデュースが、それまでのカシオペアの演奏を更なる高みに引き上げた。その最初の成果がこのアルバムである。
腰のしっかりと座った演奏が素晴らしい。上質のフュージョン・ジャズ、とりわけ、AOR系のフュージョン・ジャズと形容して良いであろう、太くて逞しいリズム&ビートに乗った、余裕あるバカテクな展開が素晴らしい。
聴いていて面白いのは、このカシオペアのフュージョン・ジャズって、その演奏レベルは、本場米国のフュージョン・ジャズの演奏レベルと比肩出来る、内容のあるテクニックに優れた内容なので、もしかしたら米国の有名なフュージョン・バンドの演奏か、と間違いそうなんだが、実は絶対に間違わない。どこか日本人的な雰囲気が漂う演奏なのだ。
とにかく、米国フュージョン・ジャズとは一線を画する個性的な演奏の数々。若さを前面に押し出した「イケイケ」のカシオペアも魅力的だが、この腰のしっかりと座った、太くて逞しいリズム&ビートに乗った、余裕あるAOR系のフュージョン・ジャズの展開がとっても素敵である。
そういう意味で、このアルバムは、カシオペア者(カシオペア・ファン)のなかで評価が分かれる作品であろうかと思う。しかし、どっちの顔もカシオペアだと思う。この余裕あるAOR系のフュージョン・ジャズの展開を自家薬籠中のものとしたことで、カシオペアのバンドとしてのスケールはグッと一段も二段も広がった。
カシオペア者(カシオペア・ファン)に大歓迎された、エフェクターやシンセの大量導入で彩りある音で埋め尽くされたアルバム『Make Up City』。そして、今回の『Eyes of The Mind』は『Make Up City』とは、全く対極にある音。この二極性がカシオペアの音作りの個性として定着していく。
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