ながら聴きのジャズも良い・9
1970年代の英国は、ロックとクロスオーバー・ジャズの境界が実に曖昧である。ロックの中で、ジャズの要素が展開されたり、どっから聴いても、クロスオーバー・ジャズの音世界であったり、ロックのジャンルのミュージシャンがクロスオーバー・ジャズに手を染めるケースがとても多い。
逆に英国ではジャズ・ミュージシャンがクロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズに転身するということはほとんど無い。英国ではジャズとは「ビ・バップ」もしくは「ハードバップ」であり、ロックとジャズの融合なって、邪道中の邪道という風潮が強かったと聞く。
例えば、このアルバムなんぞは、そんな1970年代の英国のクロスオーバー・ジャズの成り立ちをしっかりと聴かせてくれる様な内容で、実は40年前、学生時代からちょくちょく聴き返している。しかも、ながら聴きに結構あった演奏内容で、本を読みながら、小論文を書きながら、学生時代、例の「秘密の喫茶店」で聴かせて貰ったなあ。
Traffic『On the Road』(写真)。1973年のリリース。トラフィックが1973年にリリースした7thアルバム。ちなみにパーソネルは、Steve Winwood (g, vo, p), Chris Wood (fl, sax), Jim Capaldi (per, vo,ds), Rebop Kwaku Baah (per), Barry Beckett (org, p), David Hood (b), Roger Hawkins (ds)。
このライブ盤の肝は「リズム・セクション」。新たに、米国発のベースのデヴィッド・フッドとドラムのロジャー・ホーキンスに変わった事で、もともとのトラフィックの英国R&Bサウンドに米国のリズム隊が融合して、新たな化学反応が起きたのでしょうか。実にグルービーなリズム&ビートに乗った、ファンクネス希薄な英国R&Bサウンドを聴くことが出来ます。
「演奏がだれている」とか「レイドバックな演奏で物足りない」という評価もありますが、僕はそうは思いません。スッキリとしたグルービーなリズム&ビートが実に良い効果を醸し出していて、なかなか適度なテンションを張った演奏が繰り広げられています。
確かに、他の英国のプログレバンドの様に、バカテクな面や大掛かりでダイナミックな展開が無いので、なんだか物足りないなあと思われるのかもしれませんが、プログレというより、クロスオーバー・ジャズとして聴けば、このゆったりとしたシンプルな雰囲気はなかなか味のあるものだと思います。
米国や日本には無い、ロックな雰囲気満載のクロスオーバー・ジャズ。英国ならではの音世界で、なかなか聴き応えがあります。このゆったりとしたシンプルな雰囲気は「ながら聴き」にピッタリで、学生時代から今に至るまで、このアルバムは、僕の「ながら聴き」にちょくちょく登場する好盤です。
震災から5年3ヶ月。決して忘れない。まだ5年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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