時代が生んだ「俗っぽい」盤
レイ・ブライアントは、僕のお気に入りの上位のピアニストである。力強いタッチと粘るゴスペル・フィーリング、力感溢れる左手、ファンキーに良く回る右手。逆に、繊細なバラード展開や歌伴もいける。とにかくファンキーでゴスペルチックなピアノは、聴いていて思わず身体が揺れ、独特の和音の手癖に惚れ惚れする。
とまあ、ここまでお気に入りのピアニストになると、どんなリーダー作でも聴き込んでしまうし、全く飽きることもない。つまりは、よっぽどの駄作で無い限り、全てが愛聴盤であり、全てが好盤である(笑)。マニアという者は「冷静さを欠く」訳で、でも、それはそれで良いではないか、とも思う今日この頃。
今日久し振りに聴いたブライアントのアルバムがこれ。Ray Bryant『Lonesome Traveler』(写真左)。1966年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Clark Terry (flh), Snooky Young (flh), Ray Bryant (p), Jimmy Rowser (b), Richard Davis (b), Freddie Waits (ds)。
トランペット2本にフロントにいて、バックにブライアントのピアノ・トリオが控える。不思議な編成なんだが、これがこれで、なかなかいけてる。とにかく思いっきりファンキーであり、思いっきりポップである。
録音年は1966年。ジャズが大衆化して、軽音楽風に扱われることも多くなった時代。そんな環境下で、ブライアントは、黒人独特のゴスペル風のファンキーで格好良いメロディ・ラインを、思いっきりキャッチャーに聴かせてくれる。俗っぽいと言われてもしかたの無いくらい、あっけらかんと判り易くノリ易いアドリブ・ラインをこれでもかというくらいに繰り出していく。
ジャズにアーティスティックな側面を求める向きには「眉をひそめたくなるような」俗っぽいキャッチャーさなんだが、これが聴いていて心地良い。聴いていて思わず身体が揺れ、ついつい足でリズムを取ったりする。ゴスペルチックな独特の和音の手癖も、米国ルーツ音楽好きの僕には堪らない訳で、このアルバム、意外とお気に入りの一枚。
しかし、冷静になって考えてみると、このブライアントのアルバムの音って「俗っぽい」。アーティスティックなジャズとは対極の俗っぽいジャズ。硬派なジャズ者の方々からすると、思わず眉をひそめたくなるような「俗っぽさ」。でも、これが良い。この俗っぽさが良い。
思えば、ジャケットもちょっと変。夕陽の橙色に染まった列車に、不思議なオリエンタルな顔立ちの美女が一人。ん〜、これってジャズのジャケットではないよな〜。時は1966年。ジャズは大きな曲がり角に差し掛かっていた。そんな時代だからこそ、このゴスペルチックで俗っぽくてポップなジャズ盤が出来たんやな〜、なんて改めて感心する今日この頃。
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