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2016年6月14日 (火曜日)

取っ付き易い「エレ・バード」

先月末、5月31日のブログ(左をクリック)で、Donald Byrd『Black Byrd』をご紹介した訳だが、この時、このアルバムは巷で言われている「フュージョン・ジャズの先駆け」では無い。音の方向性としては、エレクトリック・マイルスと同様で、エレ・バードは柔らかでソウルフル、ポップを追求したファンク・ジャズ。対極にあるがアプローチの方向は同じ、とした。

自分でも、やっとこの60年代後半から70年代前半のDonald Byrdの諸作は、当時の「エレ・マイルス」と同じ方向性であることに合点がいって、聴き直しを始めた。そして、今日は、Donald Byrd『Electric Byrd』(写真)である。1970年5月の録音。ブルーノートの4349番。

この盤も巷では「フュージョン・ジャズの先駆け」とされる。しかも、1950年代から活躍してきた、純ジャズ派のハードバッパーが、エレクトリック・ジャズに手を染めた訳で、酷い評価としては「出来損ないのフュージョン・ジャズ」と揶揄されたこともある。我が国ではどうもこのエレジャズは分が悪い。エレ楽器=俗っぽいロック、という図式になるのかなあ。

で、ちゃんとこのアルバムに向き合って聴き込めば、そんな巷での評価は明らかに見当違いということが良く判る。このアルバムの音世界はやはり「エレ・マイルス」である。明らかに『Miles in the Sky』から『Bitches Brew』辺りの音世界を踏襲している。『Bitches Brew』が1970年4月のリリースだから、確かに「エレ・マイルス」初期の音世界であると言って良い。
 

Electric_byrd

 
エレ・マイルスが思いっきり硬派で尖ったエレ・ジャズだとすると、やはりこの『Electric Byrd』でのエレ・バードの音世界は、エレ・マイルスを聴き易くシンプルに判り易くしたものである。エレ・マイルスよりも明らかに判り易い。しかし、このアルバムに詰まっているのは、当時、コンテンポラリーでエレクトリックな純ジャズである。

ビートを重視したダンサフルなナンバーあり、エレ楽器の特徴を良く踏まえた、拡がりのあるネイチャーなナンバーあり、そして、特筆すべきは、ドナルド・バードのトランペットがとっても魅力的に、とっても良く鳴っていることだ。パーカションの使い方もエレ・マイルスとは一線を画す様に、コンガやボンゴを駆使した「南米志向」(エレ・マイルスは「アフリカ志向」)。ラテンのリズムを取り入れた「Xibaba」など、むっちゃ格好良い。

面白いアルバムです。ドナルド・バードの過渡期的作品とか、エレ・マイルスのパクリだとか、結構、厳しい評価が目に付くアルバムですが、僕はそうは思いません。エレ・マイルスの音世界を踏襲しつつ、ドナルド・バードは彼なりに、エレ・マイルスの音世界を自分の音楽性に照らし合わせて、ドナルド・バードなりのエレ・ジャズを現出しています。

エレ・マイルスよりも明らかに聴き易く判り易いので、意外と取っ付き易いエレ・ジャズです。エレ・ジャズ者の皆さん、自らの耳で確かめてみて下さい。意外と面白い好盤です。
 
 
 
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Never_giveup_4

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