期待の女性マルチ・リード奏者
僕はこの盤を聴いて、この人のクラリネットのプレイに魅せられた。コーエン3兄弟(クラリネット・テナーサックス奏者の妹アナットとソプラノ・サックス奏者の弟ユヴァル)の長女。テナーも良い。こんな女性サックス&クラリネット奏者がいたんや、とびっくりポン。
そんな彼女の新作。Anat Cohen『Luminosa』(写真左)。邦題「プレイズ・ブラジル」。判り易くて良い。ズバリ、アナット・コーエンの最新作のテーマは「ブラジル」。加えて、マルチ・リード奏者としての才能全開。
オープニングの「Lilia」はウエイン・ショーターの『ネイティヴ・ダンサー』でも共演したミルトン・ナシメントの傑作。アナット・コーエンは、ミルトン・ナシメントのヴォイスに魅了され崇敬しているという。冒頭にこの「Lilia」を持ってくるなんて、なんて素晴らしい選曲なんだろう。
加えて、リオ・デ・ジャネイロ出身のベテラン・ギタリスト、ホメロ・ルバンボをフィーチャーしている。このルバンボのギターとアナットのクラリネットの絡みが絶妙で、聴いていてとても心地良い。「ああ、ブラジルやなあ」と感じます。良い雰囲気です。
しっかりとメインストリーム・ジャズの本質を押さえつつ、ワールド・ミュージックやコンテンポラリーな音楽との融合にもチャレンジする、アナット・コーエンのチャレンジ精神は、このアルバムでは良い方向に作用しています。
アナット・コーエンはイスラエル出身。テルアビブの音楽一家に育ち、1990年代に米国に移住したことをきっかけとして、優れたマルチ・リード奏者がまた一人、現れ出でた。イスラエルには、本当にたくさんの才能があるんやなあ、と改めて感心しました。
このアルバム・ジャケットを初めて見た時は、新人女性ジャズ・ミュージシャンのスムース・ジャズの類かと、ちょっと敬遠しました。このポップで淡いパステルチックなイラストやもんな〜。このジャケットは誤解され易いですね。でも、中に詰まっている音世界を上手く表現しています。
しっかりとこの盤に詰まっている音に耳を傾ければ、本場ニューヨークのジャズファンから「現代最高のクラシカル・ジャズ伝道者」と称賛されているのにも納得がいく。もっと彼女のアルバムを聴かなければ、そう思わせてくれる好盤です。
震災から5年3ヶ月。決して忘れない。まだ5年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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