スタンダーズのパーマネント化
僕はこのアルバムで、キースの「スタンダーズ・トリオ」の価値を見出した。このアルバムの内容は傾聴に値すると思った。相変わらずキースは唸っていて、当時の僕の耳にはちょっと辛いアルバムだったが、このアルバムに収録されている「スタンダード曲」は一聴に値する。
Keith Jarrett『Standards, Vol. 2』(写真左)。1985年のリリースになる。 録音は1983年1月になる。パーソネルは当然、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。この『Standards Vol.2』ろ『Standards Vol.1』そして『Changes』は同一時期に録音された「三つ子」の様なアルバム。
『Standards Vol.1』の選曲もなかなか興味深いものだったが、この『Standards, Vol. 2』の選曲はもっと興味深い。スタンダード曲がメインではあるが、キースはありきたりのスタンダード曲を選んではいない。聴いたことがほとんどない曲が数曲あって、これがまた実に美しい旋律を持ったものばかりなのだ。
なるほど、これがスタンダーズ・トリオが「活きる道」なんだな、と合点がいった。自作曲については、やはり一人の人間であればバリエーションには限りがある。いわゆる「マンネリ」に陥るリスクが高い。曲の旋律がマンネリに陥れば、当然、それに続くアドリブ展開だって「マンネリ」に陥る。これがオリジナル曲だけで固められた「即興要素」の強い、インプロビゼーションが中心のアルバムの弱点である。
しかし、スタンダード曲をメインに据えれば、その「マンネリ」リスクはかなり軽減できる。そして、スタンダード曲はかなりの数がある。一枚のアルバムに5〜6曲の収録と限定すれば、ゆうに数十枚のアルバムが量産できる。しかも「マンネリ」リスクが軽減でき、「即興要素」の強い、インプロビゼーションが中心の内容の、三者三様の「唯我独尊のインタープレイ」を展開するにも問題は全く無い。
その上、先の1983年にリリースされた『Standards Vol.1』の評判も上々だ。そういうことで、キース・ジャレットとECMの総帥マンフレート・アイヒャーは、スタンダーズ・トリオのパーマネント化を決定していたのではないか、と思っている。スタンダーズ・トリオの個性は、このアルバムで確立された、と考えるのが自然。
リリカルなバラードナンバーが多いこの『Standards, Vol. 2』はかなり聴き易い内容になっていて、キースのインプロビゼーションの展開の素晴らしさとピアノの音の麗しさがダイレクトに伝わってくる。スタンダーズ・トリオの向かうべく方法が実に明確に良く判る。
基本は、まず、ソロ演奏と変わらないキースのインプロビゼーションに、他の楽器の自由度を最大限に認めた「インタープレイ」という観点で、ベースのピーコックがモーダルでフリーなベースで絡み、ドラムのデジョネットが手数の多い、ポリリズミックで多彩な音色のドラミングで絡む。
そして、インプロビゼーションがマンネリに陥らないように、スタンダード曲の力を借りる。加えて、皆があまり知らない、魅力的なスタンダード曲を発掘して、聴き手の期待に応える。これが大当たり。スタンダーズ・トリオはジャズ界の寵児となる。ジャズの歴史に残るピアノ・トリオとして大活躍することになる。
震災から5年2ヶ月。決して忘れない。まだ5年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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