こんなアルバムあったんや・63 『The Seagulls of Kristiansund』
「人生、死ぬまで勉強」と言うが、ジャズを聴き初めて40年ほどになっても、まだまだ他のジャズ者の方々に教えられることがある。そんなアルバムあったんや〜、とか、そんなジャズメンいたんや〜、とか、まだまだ知らないことが沢山ある。
今回のこのアルバムもそうである。マル・ウォルドロンのピアノが好きなんだが、1980年代のマルも良いですよ、と教えて貰った。僕もその頃のマルについては『Spring In Prague(邦題:プラハの春)』(1990年)くらいは知ってはいるが、1980年代と言われると「ん〜?」と唸ってしまうのだ。
そのジャズ者の方がネットで教えてくれたアルバムがこれ。Mal Waldron Quintet『The Seagulls of Kristiansund』(写真左)。1986年9月16日、ニューヨークは「Village Vanguard」でのライブ録音になる。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Woody Shaw (tp), Charlie Rouse (ts, fl), Reggie Workman (b), Ed Blackwell (ds)。
この面子をみると、どんな音が出るのか、迷いに迷う。ハードバップばりばりな面子(Mal Waldron, Woody Shaw, Charlie Rouse)と、モーダルで限りなくフリーな面子(Reggie Workman, Ed Blackwell)とが混在している。年齢的にミルト、ハードバップばりばりな面子が優勢で、やっぱり、この面子だとハードバップかな、と考える。
しかも、時は1986年。純ジャズ復古の時代。メインストリーム・ジャズが復権し、ウィントン・マルサリスを筆頭に「ネオ・ハードバップ」がジャズのトレンドの時代。しかし、従来のハードバップだと、モーダルで限りなくフリーな面子(Reggie Workman, Ed Blackwell)が浮くなあ、と不安にある。
さて、その音はと言うと、素晴らしくモーダルで限りなくフリーな演奏がバッチリ詰まっています。しかも、表現力が素晴らしく、とにかく驚くのが、ハードバップばりばりな面子(Mal Waldron, Woody Shaw, Charlie Rouse)が、思いっきり、モーダルな演奏をぶちかましているところです。特に、チャーリー・ラウズが素晴らしい。びっくりポンです。
モーダルで限りなくフリーな面子(Reggie Workman, Ed Blackwell)は「水を得た魚」状態。両人ともテクニックを駆使しつつ、モーダルでフリーなバッキングをかましまくる。こんなにダイナミックでエモーショナルなバッキングをする両人だったけ、と聴いていて嬉しくなったりする。
主役のマル・ウォルドロンのピアノも申し分ないですね。マル・ウォルドロンのタッチは硬質で端正。、硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルの特徴。
そんなマルのピアノが心ゆくまで堪能できます。いや〜素晴らしいライブ盤です。ジャケットだけ見れば、そんな思いっきり尖った硬派でモーダルな内容だとは全く思いもしません。しかし、このカモメのジャケットが良い。このジャケットの情景が、3曲目のタイトル曲で延々26分に渡って繰り広げられます。いや〜、びっくりポンな好盤です。
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