ニューオリンズ・ジャズが楽しい
Dee Dee Bridgewater(ディー・ディー・ブリッジウォーター、愛称ディーディー)のボーカル盤にはプログレッシブな内容のものが多々ある。ジャズのトレンドというものに対してのセンスが抜群に良いのだろう。単なる女性ボーカルのポップなアルバムに留まらない、何か常にしっかりしたテーマを持ってアルバム作りをしている。
僕はそんなディーディーが僕はお気に入りで、デビュー盤から時有る毎に彼女のリーダー作を聴き続けている。彼女のアルバムはしっかりとしたコンセプトが存在するので、聴いていて飽きることが無い。しかも頭でっかちに凝り固まること無く、聴き手のことも考えながら、アレンジなどにも気を配っている様子が良く判る。
そんなディーディーの最新作がこれ。Dee Dee Bridgewater『Dee Dee's Feathers』(写真左)。昨年4月のリリース。ディーディーがこの盤では「ニューオリンズ・ジャズを歌う」のだ。いや〜これがまあ、良い出来でねえ。実にプログレッシブな内容に、もう聴いていてワクワクする。
ニューオリンズ・ジャズを代表するトランペッターアーヴィン・メイフィールドとのコラボレーション。これが「なるほどなあ」と納得するアプローチ。ジャズの起源とされるニューオリンズ・ジャズ。
例えば、純ジャズ復古のリーダー、ウィントン・マルサリスなどは躍起になって、このニューオリンズ・ジャズやっていた時期がある。ニューオリンズ・ジャズこそがジャズである、と。しかし、そのウィントンのニューオリンズ・ジャズへのアプローチには、なんだか頭でっかち、頭で考えたままの凝り固まった雰囲気が漂っていて、どうにもその内容に感心することは無かった。
しかし、このディーディーのアルバムは違う。現代のニューオリンズ・ジャズの担い手そのものを連れてきた。その演奏を聴くと、さすが担い手なだけはある。思いっきりニューオリンズ・ジャズの雰囲気が漂うのだ。
「What A Wonderful World」や「Big Chief」「One Fine Thing」「Congo Square」といったトラディショナルな名曲が、ニューオリンズの雰囲気たっぷりなアレンジで歌い上げられていく。これは実に良い。快感ですらある。ディーディーのボーカルは上手いうえに、伸びやかで自由な大らかさが個性。力感がありながら繊細な一面も覗かせる。実に巧みなボーカルである。
「Dee Dee's Feathers」「C'est Ici Que Je T'aime」といった新曲も魅力的。中堅の年齢に差し掛かった、ニューオリンズ・ジャズ畑のトランペッターであるアーヴィン・メイフィールドとニューオリンズ・ジャズ・オーケストラのバッキングも見事。本作のコンセプトは「Modern Vision of New Orleans」とのことだが、アレンジ含めて、このスタジオ盤での演奏は、そのコンセプトに十分応えている。
まあ、ジャズの起源であるニューオリンズ・ジャズが如何なるものであるか、を理解していないと、このアルバムは聴いてみても魅力は半減。そう意味では、ジャズ者ベテランからディーディー者の方々に是非にお勧め。ジャズ者初心者の方々はスルーしても良いでしょう。しかし、演奏の内容とレベルは上質。好盤の類ではあります。
震災から5年2ヶ月。決して忘れない。まだ5年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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