マッコイの「変わり種」な盤
マッコイ・タイナーの初期のリーダー作を聴き直しているんだが、マッコイ初期のリーダー作はどれもがマッコイのキャリア・個性にとって、重要なアルバムばかりである。後のマッコイの基本となる、ピアノの個性、アレンジの才のいずれもが、初リーダー作から5〜6枚程度で確立されていたことを再認識出来て興味深い。
このリーダー作も聴けば実に興味深い内容である。McCoy Tyner『Live At Newport』(写真左)。1963年7月5日、Newport Jazz Festival, Newport でのライブ録音である。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Clark Terry (tp), Charlie Mariano (as)。
まず、パーソネルが面白い。リーダーのマッコイ・タイナーは1938年生まれで、当時25歳。ベースのボブ・クランショウは1932年生まれで、当時31歳。ドラムのミッキー・ローカーは同じく1932生まれで、当時31歳。しかしながら、アルトのチャーリー・マリアーノは1923年生まれで、当時41歳。そして、トラペットのクラーク・テリーは1920年生まれなので当時43歳。
リーダーのマッコイが圧倒的に若い。リズム・セクションを一緒に担うベースのクランショウ、ドラムのローカーは30歳そこそこの中堅。フロントのアルトとトランペットは40歳代のベテラン。マッコイ以外は、ビ・バップからハードバップを生き抜いて来た強者ジャズメンばかりである。
ニューポート・ジャズ・フェスでの1回きりの共演である。そうなれば、やはり「年功序列」という意味合いで、マッコイが他の先輩メンバーに合わせて、ハードバップな演奏をやってしまいそうなものなんだが、そこはマッコイ、そうはならない(笑)。1963年という時代背景もあるだろう。ジャズ界はファンキー・ジャズなどのポップなジャズの流れと、モード奏法をベースとしたアートなジャズの流れが主流となっていた。
このライブでは基本が「モード・ジャズ」。マッコイからみれば大先輩のアルトのマリアーノとトランペットのテリーが必死になってモーダルなフレーズを吹きまくっている。で、これが不思議とかなり真っ当な「モード・ジャズ」になっていて、当時の一流ジャズメンの力量たるや、かなり高度なものがあったんやなあ、と心底感心する。
とにかく、マッコイは周りの先輩ジャズメンを差し置いて、徹頭徹尾「モード・ジャズ」で突っ走る。リズム・セクションを一緒に担っているベースのクランショウとドラムのローカーは、冒険すること無く、無難にモード・ジャズに追従しているので、リズム&ビート的には化学反応は起きていないが、フロントの大先輩二人のお陰で、なんとか、しっかりとした「モード・ジャズ」で完結している。
面白いライブ盤です。この面子でもしっかりとモード・ジャズになっているってことは、1963年当時、モード・ジャズはジャズの基本的な奏法のひとつとして定着していたことが窺い知れて、実に興味深いです。特に、クラーク・テリーがモードの適応するなんて、思ってもみなかった。当時の一流ジャズメンの力量をみくびっていました。ゴメンナサイ(笑)。
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