爽快な「青空ジャケット」の好盤
このアルバムのジャケットが良い。この春の雰囲気にピッタリの青空。これが純ジャズのジャケットとは最初見た時は全く思いもしなかった。このジャケットを見たのは、遠く1980年の春だったかと記憶している。
このマニアックな盤が何故、あの例の「秘密の喫茶店」にあったのかは判らない。この盤を当時所有していた、ということは「かなりマニアックなジャズ喫茶」の証だと気がついたのは、それから15年も経ってからのことである。
さて、そのアルバムとは、Sonny Criss『Out of Nowhere』(写真左)。1975年10月の録音。1976年のリリース。カリフォルニアはロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Dolo Coker (p), Larry Gales (b), Jimmie Smith (ds)。1970年代半ばの米国西海岸の純ジャズシーンである。ソニー・クリス以外、知った名前は見えない。
亡くなる2年前のソニー・クリスの快作。ジャケット写真そのものの、カリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイが聴ける。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。
冒頭の「All The Things You Are」が実に良い。ポジティブに明るく爽快に吹く「All The Things You Are」は実に良い。抜ける様に明るくメロウなフレーズの傍らに、ソウルなテイストが見え隠れするところが実に良い。ソフトで流麗なアドリブ・フレーズも心地良く、こういう吹き方もあるんやなあ、と単純に感心する。
このクリスのブロウは、従来のメインストリーム・ジャズなブロウというよりは、録音の時は1976年、来るフュージョン・ジャズでのソフト&メロウなブロウに先んじるものではなかったか、と思う。これだけ聴き易く、躍動感があってポジティブな気持ちになれるブロウは、フュージョン・ジャズそのもの。
そういう印象を持って2曲目以降を聴き進める。やはり、明るいのびのびとしたトーンのアルトサックスのブロウが実に良い。「The Dreamer」などのバラード演奏も好調。やはり、この1970年代後半のクリスは好調期に当たる。このアルバムでのクリスのブロウを聴いていると、思わず口元が緩むのが判る。ポジティブで明快な演奏。爽やかである。
春の雰囲気にピッタリなアルバムである。春たけなわの暖かく晴れた日の昼下がり。陽光うららな午後の日光の煌めきを見ながら、このアルバムを聴くと、心に爽快感が吹き抜け、なんだか元気が沸いてくる。そんなポジティブな印象を与えてくれる好盤です。
しかし、こんなにカリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイを披露しているクリスが、このアルバムの録音の2年度、自ら命を絶ってしまう。胃がんを発病後、病苦に耐えかねた結果と聞く。僕の耳には、このアルバム『Out of Nowhere』が、クリスの「白鳥の歌」の様に響く。
震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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