アヴィシャイの表現形式の原点
こういうアルバムがポロっと出てくるのだから、ジャズって隅に置けない。典型的なコンテンポラリーな純ジャズである。全くもってシンプルな、ピアノ・トリオな編成。この最小ユニットで奏でるジャズが、これまた豊かな内容を届けてくれるのだから、ジャズって面白い。
そのアルバムとは、Avishai Cohen『From Darkness』(写真左)。2014年5月〜6月の録音。リリースは2015年1月。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b), Nitai Hershkovits (p), Daniel Dor (ds)。現在のジャズ・シーンの中、イスラエル出身のベースのキーマンの一人、アヴィシャイ・コーエンの新盤である。
この『From Darkness』で、アヴィシャイは自身の音楽的表現形式と活動の原点に還ったという。アヴィシャイはこう語る。「新しく、また新鮮で、信じられないほどしっかりとした形をトリオで成し遂げられる感触があった」。そしてトリオ間でのケミストリーについて「こうして、3人が1つになった」と表現している。
つまりは、この最新のピアノ・トリオ盤は、アヴィシャイ・コーエンにとっての「表現形式の原点」を確認する盤であり、アヴィシャイが考える「ジャズにおける演奏活動の基本となるユニット」での演奏ということになる。
このアルバムを聴いて、なるほどなあ、と納得する。シンプルなトリオ編成で奏でるジャズ演奏に音楽的表現形式の原点がある、とは良い表現やなあ、と感心する。豊かで密なサウンド、そして新たなアイディアを織り交ぜ、とても充実したピアノ・トリオ演奏が展開される。
アヴィシャイのベースがその創造性をコントロールしていることは言うまでも無い。ベースのリーダーがアルバムの演奏全体の展開と雰囲気を整え、コントロールする。ベースがリーダーのアルバムの醍醐味のひとつである。
ユニゾン&ハーモニー、リズム&ビート、それぞれの明暗、伸張、緩急、難易を演奏展開のそれぞれの場面で、適切に判断し、適切に適応する。アヴィシャイのコマーシャルな面である「イスラエル感、中東感」が希薄なので、それを期待するジャズ者の方々には全く持って、不完全燃焼なアルバムかもしれませんね。
しかしながら、アヴィシャイの考える「典型的なコンテンポラリーな純ジャズ」がギッシリと詰まったアルバムだと解釈すると、十分に「近頃のアヴィシャイ」を感じ取れる好盤だと思います。
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