全くもって贅沢なブルーノート
1979年、UA社のレコード部門をEMIが買収したのを好機と捉え、音源発掘男マイケル・カスクーナはキャピトルと談判、ブルーノートの未発表音源を発掘した。BNLTシリーズである。このBNLTシリーズは、もともとはブルーノート・レーベルの下、総帥のアルフレッド・ライオンが録音したにはしたが、何らかの理由でLPとしての発売を見送った(お蔵入りの)音源のアルバム化である。
そして、このブルーノートのLTシリーズのアルバムを聴く度に、毎度毎度、このつぶやきである。「なんで、このアルバムが当時、お蔵入りになんたんやろう」(笑)。それほど、今の耳で聴くと、そのアルバムの良さが十分に感じることが出来るアルバムが満載のシリーズである。
さて、今回の選盤は、Donald Byrd『Chant』(写真左)。1961年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Pepper Adams (bs), Herbie Hancock (p), Doug Watkins (b), Teddy Robinson (ds)。若き日のハービー・ハンコックのブルーノートでの初録音作でもある。
この盤は久し振りの聴き直しだったが、聴き終えた後、やっぱり呟いてしまう。「なんで、このアルバムが当時、お蔵入りになんたんやろう」(笑)。ドラムのエディー・ロビンソンは無名に近いが、残りのメンバーは、ハードバップの強者ばかり。ピアノは若かりし頃のハービー・ハンコック。メンバーだけ見れば、絶対に悪かろう筈が無い。
まず、リーダーのドナルド・バードのトランペットが好調。中音域&ミッドテンポが得意のドナルド・バードが、この盤では結構速いフレーズを吹きまくっている。好調ではあるが、なんだかいつものドナルド・バードじゃないみたい。次に好調なのが、バリトン・サックスのペッパー・アダムス。ペッパー・アダムスは、この重低音のバリサクを速いフレーズで吹きまくる吹きまくる。リーダーのドナルド・バードのトランペットを凌ぐ勢いである。
このフロントの二人が、何時になく結構速いフレーズを吹きまくるという、普段の二人からするとちょっと「違和感」のある、しかしながら「優れた」ブロウが、意外と言えば意外である。この辺りが、お蔵入りになった理由かもしれないなあ。ベースのダグ・ワトキンスについては、太くて鋼の様にしなやかなウォーキング・ベースはなかなか好調なんだが、ピアノの若かりしハービー・ハンコックのピアノについては印象が薄い。普通のハードバップなピアノで、ちょっと聴いていても誰だか判らないほど「没個性」である。
ドラムのエディー・ロビンソンも同様。無難にリズム&ビートを叩きだしてはいるが個性に乏しい。どうも、このリズム・セクションの「没個性」度合いも、この盤がお蔵入りになった理由かもしれないなあ。とかなんとか言うが、盤全体の内容としてはかなり良い感じなのだから、この頃のブルーノート・レーベルの録音はレベルが高い。
リズム・セクションの弱さはあるが、フロント二人の好調さを鑑みると、やっぱり聴き終えた後、「なんで、このアルバムが当時、お蔵入りになんたんやろう」と呟いてしまう。全くもって贅沢なブルーノートであり、アルフレッド・ライオンである。
震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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マスター、レスありがとうございます。^^
リーチングフォースもマトリックスも、ドラムはロイへインズということも驚きですね。ロイへインズこそ、バップ時代から、パットメセニーとの競演まで、驚くべきスタイルの柔軟性?を見せてくれて、まさにいわれるところの「ドラムの無冠の帝王」という呼称を実感させられますね。
ブルーノートの未発表盤のレベルの高さもおっしゃるとうりですね。
いかにハイレベルなレーベルだったかの証左だと思います。
バリトンのペッパーアダムスはアダ名が「切り裂きジャック」?だそーですが(~_~;)、まさにキレのよいバリバリフレーズは大きな魅力ですね。
最初に生でみたのはサドメルオケの日本公演でしたが、その郵便貯金でのライブ盤(日本コロムビア)も大好きです。^^
投稿: おっちゃん | 2016年4月 7日 (木曜日) 07時54分