« 2016年3月 | トップページ | 2016年5月 »

2016年4月の記事

2016年4月29日 (金曜日)

5月8日までブログはお休みです

皆さん、おはようございます。バーチャル音楽喫茶『松和』のマスターです。昨年に引き続き、今日から「リフレッシュ休暇」に入っています。

以前より毎年、GWを活用して「リフレッシュ休暇」を取ってきました。が、特に3年半前、落命の危機に遭遇、大手術にて危うく一命を取り留めて以来、長期間の休みを利用して「行きたいところに行こう」という気持ちが強くなりました。

ということで、今年も、命あるうち身体が動くうち、体調の安定しているうち、今年も「行きたいところに行こう」ということで、暫く当ブログをお休みします。暫くといっても、今日から5月8日(日)までの10日間のお休みです。

ちょっと遠いところに行って来ます。学生の頃、将来訪れることがあるなんて、100%思っていなかった国です。楽しみです。

それでは、皆様、5月9日(月)の夜に、再び、お会いしましょう

 

Portugal  

 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月28日 (木曜日)

爽快な「青空ジャケット」の好盤

このアルバムのジャケットが良い。この春の雰囲気にピッタリの青空。これが純ジャズのジャケットとは最初見た時は全く思いもしなかった。このジャケットを見たのは、遠く1980年の春だったかと記憶している。

このマニアックな盤が何故、あの例の「秘密の喫茶店」にあったのかは判らない。この盤を当時所有していた、ということは「かなりマニアックなジャズ喫茶」の証だと気がついたのは、それから15年も経ってからのことである。

さて、そのアルバムとは、Sonny Criss『Out of Nowhere』(写真左)。1975年10月の録音。1976年のリリース。カリフォルニアはロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Dolo Coker (p), Larry Gales (b), Jimmie Smith (ds)。1970年代半ばの米国西海岸の純ジャズシーンである。ソニー・クリス以外、知った名前は見えない。

亡くなる2年前のソニー・クリスの快作。ジャケット写真そのものの、カリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイが聴ける。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。

冒頭の「All The Things You Are」が実に良い。ポジティブに明るく爽快に吹く「All The Things You Are」は実に良い。抜ける様に明るくメロウなフレーズの傍らに、ソウルなテイストが見え隠れするところが実に良い。ソフトで流麗なアドリブ・フレーズも心地良く、こういう吹き方もあるんやなあ、と単純に感心する。
 

Out_of_nowhere1

 
このクリスのブロウは、従来のメインストリーム・ジャズなブロウというよりは、録音の時は1976年、来るフュージョン・ジャズでのソフト&メロウなブロウに先んじるものではなかったか、と思う。これだけ聴き易く、躍動感があってポジティブな気持ちになれるブロウは、フュージョン・ジャズそのもの。

そういう印象を持って2曲目以降を聴き進める。やはり、明るいのびのびとしたトーンのアルトサックスのブロウが実に良い。「The Dreamer」などのバラード演奏も好調。やはり、この1970年代後半のクリスは好調期に当たる。このアルバムでのクリスのブロウを聴いていると、思わず口元が緩むのが判る。ポジティブで明快な演奏。爽やかである。

春の雰囲気にピッタリなアルバムである。春たけなわの暖かく晴れた日の昼下がり。陽光うららな午後の日光の煌めきを見ながら、このアルバムを聴くと、心に爽快感が吹き抜け、なんだか元気が沸いてくる。そんなポジティブな印象を与えてくれる好盤です。

しかし、こんなにカリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイを披露しているクリスが、このアルバムの録音の2年度、自ら命を絶ってしまう。胃がんを発病後、病苦に耐えかねた結果と聞く。僕の耳には、このアルバム『Out of Nowhere』が、クリスの「白鳥の歌」の様に響く。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月27日 (水曜日)

ながら聴きのジャズも良い・4

SOIL &“PIMP”SESSIONS。「ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ」と読む。2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンが集まり、「ステージと観客の間の壁を壊す」という明確な目的のもと、結成された日本の6人組ジャズバンド。

そんなSOIL &“PIMP”SESSIONSの新盤が出た。SOIL &“PIMP”SESSIONS『BLACK TRACK』(写真左)。前作『Brothers & Sisters』から1年半振りとなるオリジナル・アルバム。SOIL&“PIMP”SESSIONSは「Death Jazz」と呼ばれるラウド・ジャズなバンドとされるが、このアルバムのテーマは「Black&Mellow」。

ジャズを基軸にしつつ、レアグルーブ、ジャズファンクからアシッドジャズまで、幅広く取り入れ、インスト曲を中心としながら、ボーカルやラップをフューチャーした楽曲も収録。全体的にお洒落な雰囲気が漂います。
 

Black_track

 
この盤全体を覆う「メロウ・グルーブ」が実に良い感じだ。音的にはガツンと芯の入った強力な音なんだが、フレーズが優しく印象的なものが多い。全体的に力強いが、ソフト&メロウでファンク・フュージョンな雰囲気が実に気持ち良い。ヒップホップな雰囲気が顔を出したり、ネオ・ハードバップな音世界がいきなり展開されたりで、とにかく聴いていて面白い。

ハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」のカバーが心地良く、「In2 My Soul feat. Xavier Boyer from TAHITI 80」では、AOR&ソウルな音世界が懐かしく、長岡亮介が唄う「Connected」ではソウルとジャズの完璧なハイブリッドな雰囲気が魅せる。

何かをしながらの「ながら聴き」にピッタリの現代のファンク・フュージョンです。ジャズが基調になっているのは、冒頭の「Introduction」を聴けば明快。こういう現代のジャズは聴いていて単純に楽しい。力強くメリハリも効いていて、聴いていて実に心地良く、かつ、耳に印象的な演奏はそうそう無い。好盤です。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月26日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・34

この明るい雰囲気ジャケットに惹かれた。なんだか、あっけらかんとした明るい雰囲気のジャケット。録音された時代は1967年。ヒッピー・ムーブメントのはしり。ジャケット・ロゴの雰囲気がそれを物語る。

演奏はジャケットの印象を決して裏切らない。ポップスのカバーを織り交ぜた、明るく爽やかな疾走感溢れる演奏。初夏の晴れた日、穏やかな昼下がり。爽やかな風に吹かれながら耳を傾ける。そんな情景にピッタリな僕の「お気に入り」。

Sonny Criss『Up,Up and Away』(写真左)。1967年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Cedar Walton (p), Tal Farlow (g), Bob Cranshaw (b), Lenny McBrowne (ds)。その音が期待できる、なかなかに渋いメンバーである。

クリスは1927年生まれ。録音当時は40歳。脂の乗り切った中堅ジャズメン。このアルバムには、ソニー・クリスの明るい面が、溢れんばかりに輝いている。このアルバムの録音時はクリスの体調が万全だったことが窺い知れる。クリスは精神面で不調の時期があった。1960年代前半、1970年代前半は不調の時代。このアルバムの録音時の1960年代後半は好調の時代。
 

Up_up_and_away

 
冒頭の「Up, Up and Away」を聴けば、クリスのアルトの明るさ、爽快さを十分に聴き取ることが出来る。邦題「ビートでジャンプ」。フィフス・ディメンションのヒット曲のカバーなんだが、これが実に楽しい。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。

ピアノを強打しまくるシダー・ウォルトン、タル・ファーロウのギター、ボブ・クランショウのベース、レニー・マクブラウンのドラムが乗り良く、爽やかに煽るようにがっちりとバッキング。このバッキングが思いのほか効いている。そんな安定感のあるバッキングを得て、クリスはアルトを吹きまくる。

他のスタンダード曲、バップ・チューンの演奏も良い。クリスって、基本は「バッパー」なんだなあ、と再認識する。5曲目の「Scrapple From The Apple」なんだどうだ。明らかに魅力的なバップな吹きっぷりの惚れ惚れする。2曲目のマイナー曲「Willow Weep for Me(柳よ泣いておくれ)」での泣きのアルトも魅力的だ。

このアルバムを録音した10年後。1977年に胃がんを発病して以来、ジャズから遠ざかる。そして、病苦に耐えかねた結果、同年ロサンゼルスで自殺して果てることになる。1970年代後半は好調な時代だっただけに残念な最期だった。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月25日 (月曜日)

最近ヘビロテな「スパイロ盤」

Spyro Gyra(スパイロ・ジャイラ)は、フュージョン・ジャズの伝説的バンド。メンバーの激しい変遷を経ながら、現在も活動中である。1978年、ファースト盤『Spyro Gyra』 を Amherst Records よりリリース、20万枚を超すヒットとなった。翌年1979年には、セカンド盤『Morning Dance』 をリリース、70万枚以上のセールスを上げ、ゴールド・ディスクも獲得した。

僕はこのセカンド盤『Morning Dance』でスパイロ・ジャイラにはまった。続くサード盤『Catching the Sun』で更にはまった。カリビアンな響き、ラテンな響きが良かった。スティールドラム、サックス、エレピ、ヴィヴラフォン、ベース、エレギ等々総動員して、爽快でメロディアスな「海辺のフュージョン」。これがとにかく良かった。

そんなスパイロ・ジャイラであるが、1980年代以降、スムース・ジャズが台頭する中、スパイロ・ジャイラの音楽性は、R&B、ファンク、ポップスの音楽的要素を織り込んでいて、現在に至るまで「フュージョン・ジャズ」の雰囲気を色濃く残している。1979年以降のオールド・ファンとしては、そこが良い。

最近、結構良いなあ、と思いながら繰り返し聴くスパイロ・ジャイラのアルバムが『Original Cinema』(写真左)。2003年のリリース。架空のサウンドトラック仕立てのコンセプト・アルバム。
 

Original_cinema1

 
サウンドトラックというのは彼らなりのジョークらしく、アルバム全体を聴き終えても、別にサウンドトラックとして特別なものを感じることはありません。10CCの『オリジナル・サウンドトラック』のジャズ版という意見もありますが、ちょっと「こじつけ」っぽいなあ(笑)。

僕がこのアルバムをスパイロ・ジャイラのお気に入り盤として繰り返し聴く理由は、このアルバムの持つ「ジャズっぽさ」。明らかにフュージョン・ジャズの演奏なのですが、音のそこかしこに「コンテンポラリーな純ジャズ」な雰囲気を感じる。これがこのアルバム『Original Cinema』の良さです。

軽快でジャジーなシャッフルのリズム&ビートに乗った冒頭の「Bump It Up」など、フュージョンな演奏の中に、しっかりと純ジャズな雰囲気を感じて、実に良い雰囲気です。お得意のカリビアンな響きの曲あり、ラテンな展開の曲ありで、バラエティーに富んだ内容ですが、一貫してジャジーなフュージョン・ジャズというところが、このスパイロ・ジャイラの優れたところ。

良いフュージョン盤です。酸いも甘いもかみ分けることの出来る「ベテランなフュージョン者」の方々に敢えてお勧めな盤です。とにかく、1970年代後半のフュージョン・ジャズの雰囲気をしっかりと残しつつ、加えて、コンテンポラリーな純ジャズな響きを宿している。聴いていて「も〜たまらん」好盤です。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月24日 (日曜日)

レジェンド中のレジェンドです

以前より僕はこの人のドラミングに注目していて、この人のドラミングを聴くと、ドラマーというのは、自分のドラミングに周りのメンバーを合わせさせるのでは無く、周りのメンバーの個性、力量に合わせて最適なリズム&ビートを提供することが使命なんだなあ、ということを改めて再認識する。

そのドラマーとは、Roy Haynes(ロイ・ヘインズ)。1925年生まれであるから今年91歳になる。大ベテランというか、レジェンド中のレジェンドである。ロイ・ヘインズの「周りのメンバーの個性、力量に合わせて最適なリズム&ビートを提供する」という職人芸を聴かせてくれるアルバムがある。

Roy Haynes『Roy-Alty』(写真左)。2011年のリリースになる。「The Fountain of Youth」とネーミングしたヘインズのレギュラー・バンドに、ロイ・ハーグローヴやチック・コリアがゲスト参加した魅力盤。スタンダードがベースの純ジャズからコンテンポラリーなジャズまで、ヘインズのドラミングが弾け、スイングする。

大半のトラックでロイ・ハーグローヴが参加しているんだが、このロイ・ハーグローヴの朗々としたプレイに寄り添うように鼓舞するように、余裕あるドラミングを展開するヘインズには思わず舌を巻く。幅広にスケール大きく包み込むようなドラミングは十分に聴く価値あり。

ロイ・ハーグローブもヘインズのドラミングをバックに、朗々としたスケールの大きいトランペットを聴かせてくれる。元ロイ・ヘインズ学校の門下生の「再会」セッション。師匠のヘインズの明朗でスケールの大きいドラミングは、ロイ・ハーグローヴの成長を喜んでいるようだ。
 

Royalty

 
そして、チック・コリアとは2曲で共演。しかもデュオ。チックとは、1969年に『Now he sings, Now he sobs』というピアノ・トリオの傑作をものにしている。このチックとのデュオ2曲についても「聴きもの」で、チックと丁々発止と様々な展開とバリエーションで、インプロビゼーションを展開している。

このチックとのデュオにおけるヘインズのドラミングの「切れ味」が凄い。チックのフレーズに呼応して「バシッ」と切れ込む。チックの悠然としたフレーズの展開に、大らかなドラミングと「間」で応える。決してマンネリに陥らない、バリエーション豊かで表現豊かなヘインズのドラミングが素晴らしい。

そして、ヘインズのレギュラー・バンド「The Fountain of Youth」のメンバーのバックに回ってのドラミングは、まさに「先生」。フロントの楽器の奏でる音に対して最適なリズム&ビートを提供する。そして、フロントの楽器に更なるイマジネーションを要求する様な、硬軟自在、縦横無尽な自由度の高いリズム&ビートで鼓舞する。

こういうドラミングがジャズでいう「優れたドラミング」なんやなぁ、と心から感服する。聴き直す度に新しい発見があるヘインズのドラミング。いやはや、凄い力量の持ち主の「レジェンド」である。

今年91歳。この『Roy-Alty』が2011年のリリース。以降、リーダー作が出ていない。年齢的に厳しいかもしれないが、もう少し、この「レジェンド中のレジェンド」の妙技を聴き続けていたい気持ちで一杯である。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月23日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・61

癖が無く端正なところがバロンのピアノの個性。平均的に素晴らしいプレイを聴かせるところが、いわゆるピアニストとしての総合力の高さが個性。ハードバップから当時、純ジャズ復古の時代まで、こういうピアニストはいなかった。何かしら強烈な個性を持ったピアニストは多く存在した。しかし、バロンの様な、総合力で勝負する、癖が無く端正な個性を持ったピアニストは珍しかった。

リリカルではあるが耽美的では無い。切れ味鋭いが鋭角な鋭さでは無い。奇をてらった革新的な響きは皆無。アブストラクトな展開にも無縁。とにかくバリバリに弾きまくる。ネオ・ハードバップにつながる正統派な展開。癖が無い。流麗かつ端正である。テクニックは優秀。ファンクネスは希薄。それでいてドライブ感は旺盛。グイグイ弾きまくる力強さはある。逆に繊細な表現も出来る。とにかく器用なピアニストである。

とまあ、あれこれ書いたが、ケニー・バロンのピアノは「癖が無く端正」が個性。これが良い。加えて、バロンはそういうピアニストなので「駄作」が無い。どのアルバムも平均点以上の出来で、これはこれで素晴らしいことだ。どのアルバムを聴いても、期待を裏切られることは無い。

このアルバムもそうだ。Kenny Barron『Landscape』(写真)。1984年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Barron (p), Cecil McBee (b), Al Foster (ds)。日本発のレーベル、Baystateからのリリース。

いわゆる日本発の企画盤である。加えて、収録曲に「Kojo No Tsuki(荒城の月)」と「Ringo Oiwake(りんご追分)」が入っている。「荒城の月」と言えば「春高楼の花の宴・・・」で始まる滝廉太郎作曲の名曲。「りんご追分」といえば「リンゴの花びらが〜風に散ったよな〜」で始まる、美空ひばりの歌唱で有名な名曲。この2曲がジャズになる。これって「際もの」やん(笑)。
 

Kenny_barron_landscape

 
ということで、このアルバムがリリースされた時は「敬遠」。思い切って購入に踏み切ったのがリリースされた10年後。「際もの」2曲には目を瞑って、他のスタンダード曲「Hush-A-Bye」や「Dear Old Stockholm」に惹かれて思い切って、というのが購入の動機。「癖が無く端正」な正統派ピアニストが弾くスタンダード曲は魅力だ。

で、この『Landscape』、日本発の企画盤の割に意外と内容が良い。まずスタンダード曲が良い。ベースのセシル・マクビー、ドラムのアル・フォスター、そしてピアノのバロン。この組合せ、相性が良いのだろう。実に良い雰囲気のピアノ・トリオの演奏を聴かせてくれる。端正で余裕のあるアドリブ。メロディアスで柔和な展開。

そして、「際もの」と思い込んでいた「荒城の月」と「りんご追分」についてはこれが意外と良い。恐らく、バロンを始め、マクビー、フォスター共に原曲の雰囲気に馴染みがないのであろう、それが良い方向に作用している。日本人だったら、この2曲の雰囲気は直ぐに思い出す。どちらもマイナー調。日本人だったら原曲の雰囲気をドップリ引き継いでジャズにするんで、恐らく「これはあかんわ〜」となると思われる。 

しかし、このトリオはそうはならない。原曲のマイナーな部分を上手く採り上げて、アドリブの展開に回している。アドリブの展開になった途端、原曲の雰囲気を全く引き摺らない。原曲のコード進行を上手く借用して、実に純ジャズなアドリブ展開に昇華している。アドリブ部だけ聴いたら、原曲が「荒城の月」もしくは「りんご追分」なんて全く思いもつかない。

意外と良いアルバムです。「荒城の月」と「りんご追分」については「際もの」と決めつけずに、柔軟な耳で聴けば、ほとんど気になりません。ちなみにジャケット・デザインは2種類あるんですが、僕の馴染みは「写真左」のイラスト・バージョン。こういうのって、最初に購入して初めて聴いた時の盤のジャケットが一番印象に残るようです。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月22日 (金曜日)

ケヴィン・ユーバンクスかぁ〜

ネットでいろいろと試聴していると、時折、おっこれは、と思う盤に出会ったりする。これって、昔々、レコード屋にしかアルバムを購入する伝手が無い時では考えられないことだ。レコード屋では、馴染みの客になるまではなかなかアルバムの試聴を言い出せなかった。あとはジャズ喫茶に頼るのみ、なんだが、人気のジャズメンの盤だと良いが、興味本位でアルバムを選ぶなんて勇気は無かったなあ。

そういう意味では、たった1〜2分でも、そのアルバムに収録された曲を試聴できる今のネット環境は実に「使える」。ジャズの場合、曲の一部、曲の切り口を耳で感じるだけで、そのアルバムの良し悪しを判断することが出来たりする。これが実に「使える」。

最近、そんなネットでの試聴でこの盤に出会った。ケヴィン・ユーバンクス(Kevin Eubanks)のアルバム。ケヴィン・ユーバンクスといえば、ジャズ・ギタリスト。日本ではマイナーな存在に甘んじているが、米国ではなかなかの人気者である。アメリカTV史上最古の長寿番組『ザ・トゥナイト・ショー』 の音楽監督を長年にわたり務めていたことがその理由なのだそうだ。

僕の場合、そのジャズメンの人気度合いは全く気にしない。自分の耳で聴いて「これは良い」と思ったらそれで良い。逆に、自分の耳で「これは良い」と思っても、それを他の人達に押し売りすることは無い。音楽の感じ方って人それぞれなんで、自分が良いと思ったところで、他人が良いと思ってくれるなんて保障は全く無い。それで良いのだ。

で、このケビン・ユーバンクスのアルバムとは、Kevin Eubanks『Zen Food』(写真左)。2010年のリリース。ちなみにパーソネルは、Rene Camacho (b), Marvin "Smitty" Smith (ds), Kevin Eubanks (g), Gerry Etkins (p,org), Bill Pierce (sax)。パーソネルを見渡すと、もうこのアルバムは絶対に内容は保障された様なものだ。本当になかなか通な人選だ。
 

Zen_food1

 
で、これがまあ、実に爽快な内容のコンテンポラリー・ジャズである。良い感じだ。超高速指弾きなユーバンクスのエレギなんだが、これが耳につかない、どころか耳にすんなりと馴染む。実に流麗かつ滑らかな速弾きフレーズ。これがまあ、惚れ惚れする位に美しい。独特の「アーティキュレーション」が病みつきになる。相変わらずよく指が動く。素晴らしいフレーズの連続。

マーヴィン・スミッティ・スミスのドラミングがこれまた良い。コンテンポラリーなドラミングとは、このマーヴィン・スミッティ・スミスのドラミングのことを言うんだろう。素晴らしく洒脱でコクがある。硬軟自在、変幻自在なドラミングは、ユーバンクスのギターをとことん鼓舞し続ける。

ビル・ピアースのサックスも良い。ユーバンクスやマーヴィン・スミッティ・スミスが時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズな雰囲気を宿しているのに比べて、ピアースのサックスは「トラディショナル」。昔、どこかで聴いた様なサックスの音が実に「和む」。コンテンポラリー・ジャズな雰囲気の中に、ふんわりとピアースのトラディショナルな響きのサックスが駆け抜ける。良い雰囲気だ。

ケビン・ユーバンクスは1957年11月生まれ。今年59歳。僕達と同世代である。もはやベテラン以上、レジェンドに近い年齢に差し掛かっているが、このアルバムを聴く限り、まだまだ中堅、まだまだ創造的なアプローチが可能な、現役バリバリの一流ジャズメンです。もっと尖ったアルバムを期待したいですね。

ネットでフラフラ渡り歩いて試聴していて、良いアルバムに出会いました。日本では人気イマイチのケビン・ユーバンクスですが、僕には「お気に入りギタリスト」。過去のアルバムを聴き直したい衝動にかられました。この週末は、早速、過去のアルバムの存在調査です。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月21日 (木曜日)

カッ飛ぶフレディー・ハバード

かつてジャズ専門誌『スイングジャーナル』の人気の連載コーナー、来日した有名ジャズ・ミュージシャンに、曲名やプレイヤーを知らせずにジャズ演奏を聴かせ(ブラインドフォールド・テスト)、その演奏やプレイヤーについて、あれこれ話を聞くという「I Love Jazz Test」。この「I Love Jazz Test」の記事を厳選してまとめた一冊『ジャズメン、ジャズを聴く』が2016年2月に発刊された。

これを読んでいると、ジャズメンの志向や他のジャズメンに対する評価など、かなり赤裸々な話を読むことが出来て、意外と想像と違う切り口でジャズやジャズメンをみているんやなあ、と大いに感心する。僕はこの「I Love Jazz Test」のコーナーが大好きだった。で、今回この『ジャズメン、ジャズを聴く』を読んでいて、思わずニンマリする記事に出くわした。フレディー・ハバードである。

ハードバップ以降、トランペットのテクニシャンと言えば、フレディー・ハバードとウィントン・マルサリスが双璧だと僕は感じている。二人とも、まあペラペラパラパラ、とにかく速いフレーズを吹きまくる吹きまくる。しかも、聴いていてどちらも「どうだ俺のテクニック凄いだろう」とこれ見よがしにテクニックをひけらかす(笑)。

良く似た二人なんだが、フレディー・ハバードがウィントンのアルバムを聴いて指摘する。ウィントンはテクニックは優秀だが、今のところそれだけだ。何を吹くか、何をどう吹こうとするかが問題だ、と。ウィントンはそれを良く考えて吹かなければならない、と指摘する。ん〜っ、あのハバードが言うか(笑)。あのマイルスに「フレディー、おまえは上手いだけだからダメなんだ」といじられていたハバードが、である。実に微笑ましいエピソードである。

そんなハバードのテクニックをこれでもか、と耳で感じることの出来るアルバムの一枚がこれ。Freddie Hubbard『Back to Birdland』(写真左)。1982年8月のライブ録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), George Cables (p), Richie Cole (as), Ashley Alexander (tb), Andy Simpkins (b), John Dentz (ds)。
 

Hubbard_back_to_birdland

 
当時、バリバリのテクニシャンで人気のアルト奏者、リッチー・コールを引き入れている。意外と商売人のハバードである。ピアノは、これまたバリバリのテクニシャンで音符の洪水フレーズが得意なジョージ・ケイブルスを採用。ここまで来ると、リーダーが「大々テクニシャン」のハバードであるからして、しかも加えて、ライブ録音ということで、もはや、この盤は「テクニック優先のこれ見よがしにテクニックをひけらかす」盤なんだろうなあ、と想像する。

というか、その線しかないでしょ(笑)。冒頭の「Shaw 'Nuff"」を聴けば納得する。いきなりカッ飛ぶハバード、コール、ケイブルス。とにかく吹きまくる弾きまくる。でも。ジックリと耳を傾けていると、「テクニック優先のこれ見よがしにテクニックをひけらかす」演奏なんだが、意外とシリアスに吹いているのに気が付く。よって、テクニックの高さが耳につくことはほとんど無い。

加えて、収録曲のほとんどが5〜6分でまとめていて散漫な所が無い。これが良い。1曲の演奏時間が長ければ長いほど、「テクニック優先のこれ見よがしにテクニックをひけらかす」演奏は耳につく傾向にある。このライブ盤は、収録時間を短めにまとめることで、そのリスクを上手く回避している。よって、ハバードのアルバムの中でもヘビロテの部類に位置している。

ハバードの「テクニック優先のこれ見よがしにテクニックをひけらかす」盤の中でも、ほどんどそのテクニックの高さが耳につかない好盤です。バンド全体の演奏レベルも高く、バンド全体がゴキゲンにカッ飛ぶ、爽快なライブ盤です。1980年代のハバードのリーダー作の中でも、かなり上位に位置するアルバムです。熱い演奏が詰まったジャズを求めるジャズ者万民にお勧め。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月20日 (水曜日)

「ブルーベック4」の真の実力

日本では、デイヴ・ブルーベックの評判は芳しく無い。今ではブルーベックを認める向きもあるが、僕がジャズを聴き始めた1970年代後半の頃は、デイヴ・ブルーベックと言えば「スイングしないピアニスト」として、ケチョンケチョンに揶揄されていた。

しかし、である。ブルーベックの『Time Out』を聴いて、思わずブルーベック者になってしまった僕は、当時、他のジャズ者の連中に「ブルーベックがお気に入り」なんてことを決して言うことは出来なかった。そんな恐ろしいこと(笑)。例の秘密の喫茶店でひっそりと聴かせて貰っていた位である。

そんなブルーベックの真の実力を感じとれるライブ盤がある。『Dave Brubeck Quartet at Carnegie Hall』(写真左)。1963年2月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Eugene Wright (b), Joe Morello (ds), Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as)。米国はニューヨーク、マンハッタンのミッドタウンにある有名なコンサート・ホールである「カーネギー・ホール」でのライブ録音。発売当時はLP2枚組。

まず、このライブ盤を聴いて感じるのは、当時のデイヴ・ブルーベック・カルテットの人気の凄さ。拍手の音の大きさ、指笛の数、掛け声の多さ、凄い人気です。当時、ニューヨークのジャズ者の方々は、デイヴ・ブルーベックをしっかりと認めていたということですね。これだけでも嬉しく思えるライブ盤です。

音楽の殿堂であるカーネギー・ホールでのライブなので、リーダーのブルーベックを始め、メンバー全員が相当に気合いの入った演奏を聴かせてくれます。例えば、リーダーのブルーベックって、通常のアルバムではバックに回って、あまりソロを取ることがないんですが、このライブ盤では実に魅力的なロング・ソロを披露しています。

スクエアにスイングするブルーベックのロング・ソロ。硬質で跳ねるようにスクエアにスイングするブルーベックのピアノは、セロニアス・モンクの飛び飛びの変則フレーズに匹敵すると思うのは僕だけだろうか。バロック趣味の対位法など、クラシカルな要素も織り込んで、ブルーベックは弾きまくる。
 

Dave_brubeck_4_at_carnegie_hall

 
いつもは流麗で丸い音が特徴のデスモンドのアルトが実にハードに響く。気合いが入っている。流麗で囁くようなアルトが、このカーネギー・ホールでは、流麗には違いないんだが、力強く芯の入ったガッツあるアルト・ソロはこのライブ盤だけに聴かれるもの。こんなに力強いデスモンドのアルトは他ではなかなか聴けない。

ドラムのモレロも気合い十分。ブルーベック・カルテットの十八番である「変則拍子ジャズ」では、ここぞとばかりに叩きまくる。目眩く変則拍子の嵐。ところどころで長いドラム・ソロを聴かせてくれる。これがまたアグレッシブでエモーショナル。こんなに熱いドラマーやったんや、とちょっとビックリ。

ドラムのモレロと同じくベースのライトも弾きまくる。ブルーベックのソロを、デスモンドのソロをバックでガッチリ支えるライトのウォーキング・ベースに思わず耳をそばだてる。長いベース・ソロもある。ソロが終わった時の観衆の割れんばかりの拍手。ブルーベック・カルテットにおけるライトのベースの価値を十分に理解する聴衆って素晴らしい。

このライブ盤の素晴らしさは、1曲目の「St. Louis Blues」に凝縮されている。このスクエアなスイング感と乗りはなんだ。この演奏を聴いても「ブルーベックはスイングしない」と評するのだろうか。圧倒的にスクエアにスイングするブルーベック・カルテットは熱い。スクエアにスイングするトリオをバックに、熱い芯の入ったアルト・ソロを聴かせるデスモンド。

このライブ盤は、デイヴ・ブルーベック・カルテットの真の実力を感じることの出来る好盤です。このライブ盤のデイヴ・ブルーベック・カルテットの演奏が、真のブルーベック者なのか否かを測る「踏み絵」の様な基準になる演奏ですね。この演奏が良い、と思えば「真のブルーベック者」に認定です(笑)。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月19日 (火曜日)

サンプルのセルフカバー盤

こういうアプローチもありなんやなあ、とつくづく改めて感心した。1970年代以降、フュージョン全盛期、クルセイダースのキーボード奏者&作曲者として一世を風靡し、その後もフュージョン・ジャズの第一人者の一人として活躍したジョー・サンプル。そのジョー・サンプルの佳曲をセルフカバーする。

Joe Sample『Sample This』(写真左)。1997年のリリース。基本はトリオ。ベースは、Jay Anderson (tracks: 1, 3, 4, 9, 13, 14), Marcus Miller (tracks: 2, 5 to 8, 10 to 12) の使い分け。ドラムも、Lenny Castro (tracks: 1, 3, 4, 9, 13, 14), Steve Gadd (tracks: 2, 5 to 8, 10 to 12) の使い分け。プロデュースはGeorge Duke。

まとめると、Joe Sample (ac-p,el-p), Jay Anderson (b), Lenny Castro (ds) と、Joe Sample (ac-p,el-p), Marcus Miller (b), Steve Gadd (ds) の2つのトリオで、サンプル自身の有名曲のセルフカバーをしている。

これがなんともはや「良い」、とても「良い」。そもそも、サンプルの曲自体が良い。だから、どんなアレンジにも耐えるというか「映える」。なるほど、タイトル通り「Sample This」。爽やかなピアノ・トリオの音。それぞれの曲が収録されているオリジナル盤の雰囲気をそこはかとなく漂わせながら、シンプルなピアノ・トリオでカバーされる。
 

Sample_this1  

 
このピアノ・トリオの音を「スムース・ジャズ」というなかれ。立派なメインストリーム・ジャズの音だ。それも現代の純ジャズ・ピアノ・トリオの音だ。マーカス・ミラーもスティーヴ・ガッドも正統なジャズメンである。メンストリーム・ジャズをやらせても一流である。

基本はピアノ・トリオなんですが、曲によって、ギターやフルート、ボーカルが客演していて、アルバムの中で良いアクセントとなっています。ダイアン・リーブス、そして、デニス・ローランドのボーカル、そして、ディーン・パークスの小粋で爽やかなギター、ヒューバート・ロウズの爽やかなフルート、いずれも本当に良い音を出してます。

このところ、このアルバムの存在を忘れていた。最近、思い出して聴き直したんだが、これが実に「良い」。こういうセルフカバーってありやな、と思った。このアルバムのリリースが1997年、サンプルが58歳の時の作品。その17年後、2014年9月、満75歳で逝去。彼がこの世にいなくなって、このセルフカバー盤の存在意義が更に高まった様な気がします。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
 

2016年4月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・81

この盤を聴きながら、恐らくこの盤も「ジャズ雑誌では評価はイマイチなのに、ジャズ喫茶でよくかかっていて、誰のアルバムだろう、とジャケットを見にいったら、ジャズ喫茶のマスターやメンバーにお勧めされる、という不思議な盤」の類なんだろうなあ、と思い当たる。

人気ピアニスト、ケニー・バロンの実兄で過小評価されてきたテナー・サックス奏者のビル・バロン(写真右)と、硬軟自在で縦横無尽、表現力豊かなトランペット奏者テッド・カーソンが組んだ、オリジナリティ&バリエーション豊かな作品である。この盤に出会ったのは、ジャズ者になって随分経ってから。とあるジャズ喫茶でかかっていたところに遭遇し「この盤」の存在を知りました。

「この盤」とは、Bill Barron & Ted Curson『Now, Hear This!』(写真左)。1963年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Ronnie Boykins (b), Dick Berk (ds), Kenny Barron (p), Bill Barron (ts), Ted Curson (tp)。クインテット構成になります。

もちろんピアノは実弟のケニー・バロンが担当している。そういう意味では、双頭リーダーのテナーのビル・バロンとトランペットのテッド・カーソン以外、ベースとドラムのジャズメンには馴染みがありません。1960年代に入ると、こういうパーソネルに出くわすことが多くなります。恐らく、ジャズがポップスの一翼を担った時代、そんな時代の要請の応じて、所謂「スタジオ・ミュージシャン」っぽいジャズメンが増えたのでしょうね。
 

Now_hear_this

 
よって、馴染みの無いジャズメンだからといって、演奏はおざなりなのか、といえばそうでは無いので、先入観に囚われず、しっかりと審美眼ではなく「審美耳」を発揮して、アルバムの内容をしっかりと聴き込む必要があります。この盤も、ケニー・バロン、ロニー・ボイキンス、ディック・バークというリズム・セクションが実に良いバッキングで、フロントのビル・バロンとテッド・カーソンが心おきなくアドリブを展開しています。

内容的には、1963年という録音年のトレンドを反映していて、ガッツリとハードバップな演奏もあれば、当時先端のトレンドであるモーダルな演奏もあれば、フリーな要素が見え隠れしたり、バリエーション豊かなジャズ表現が特徴です。といって、内容的にバラバラかと言えばそうでは無く、しっかりとした「統一感」があるところがこの盤の良さです。

この「統一感」をしっかり醸し出しているのが「巧妙にアレンジされたアンサンブル」にあると睨んでいます。この趣味の良い一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーは実に魅力的。聴いていて楽しく、仄かに香るファンクネスは絶品です。聴いていて、思わず「ジャズやねえ〜」と呟いてしまいそうな好盤です。

この盤、まずジャズ盤紹介本やジャズ雑誌でお目にかかることはありません。それでも、ジャズ喫茶が好きなジャズ者中堅からベテランの方々は意外とこの盤のことを知ってるんですよね。恐らく、この盤の持つ「ジャズやね〜」な雰囲気が印象に強く残るのでしょう。そんな隠れ好盤です。

 
 

震災から5年1ヶ月。決して忘れない。まだ5年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月17日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・3

何時の頃からか、最近「ながら聴き」に適したジャズが多くなった様な気がする。時代と環境のニーズからくるものなのかもしれないのだが、しっかりとステレオの前に陣取って、スピーカーに対峙して、そのスピーカーから出てくる音に集中する、そんな「集中聴き」なジャズ盤が減ったような気がする。

まあしかし、である。何かをしながらの「ながら聴き」のジャズも「オツなもの」である。良い録音で流麗な演奏。そんな中、ちょっと印象的でキャッチャーなアドリブ・フレーズが耳を駆け抜ける。それでも「ながら」の邪魔をすることは無い、そんな「ながら聴き」に適したジャズもこれはこれで良いものである。

「GoGo Penguin」というトリオがある。英マンチェスター出身の「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」という触れ込み。2009年に結成され、地元マンチェスターを拠点に活動をスタート。イギリスの音楽賞「マーキュリー・プライズ」にノミネートされて注目を高め、ドン・ウォズに見初められ、今回、名門Blue Noteよりメジャー・デビュー。

そのメジャー・デビュー盤が『Man Made Object』(写真左)。今年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Chris Illingworth (p), Nick Blacka (b), Rob Turner (ds)。シンセ等は使わずに、アコースティックな音で構成されたトリオである。

といって、通常のピアノ・トリオでは無い。ジャズをベースに、クラシック、テクノ、ドラムンベース、ハウスなど多種多彩な音楽を融合した「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」である。とまあ、小難しいことは書いていても仕方が無い。これは聴いて感じていただくのが手っ取り早い。
 

Man_made_object1

 
ハウス、テクノ、ドラムンベースの要素が強い音作りではあるのだが、アコースティック・ピアノが中心のトリオ演奏であるということ、つまり、シンセの音が無いこと、そして、人力ドラムンベース感、これらが合わさって、独特の新しいピアノ・トリオの響きを獲得している。ハウス、テクノのフレーズ満載なんだがベースがジャズなので、最終的に「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」なる喩えになるのだろう。

これがまあ「ながら聴き」に最適なのだ。実は、このゴーゴー・ペンギンの音の雰囲気を聴いていたら、1980年代後半、一世を風靡した「ウィンダム・ヒル」レーベルの音を思い出した。そうウィンダム・ヒルのヒット盤、George Winston『Autumn』の雰囲気を想起した。この盤のピアノの音に「ハウス、テクノ、ドラムンベースの要素」を強く押し混ぜた様な音。恐らく、その印象が、この「ながら聴き」に最適な盤、という感覚になったのかと思う。

但し「ながら聴き」に最適と言うが、決してイージーな内容では無い。内容は高度で濃い。テクノやエレクトロニカ、ヒップホップの影響を感じるリズム&ビートに乗って、クラシカルな響きのする正統なピアノの旋律が展開される。これが実に新しく耳に響く。リズム&ビートが人力の響きであること、ピアノのタッチが硬質で流麗であるので、響きの基本は従来のピアノ・トリオに近いが、そこにハウス、テクノの要素が入って、新しい響きに転化しているのだ。 

面白いピアノ・トリオが出てきたもんだ。これからが楽しみな「ゴーゴー・ペンギン」。コミカルなバンド名に惑わされてはなりません。「ゴーゴー・ペンギン」は、これから「要注目」なジャズ・バンドの一つです。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月16日 (土曜日)

ジャス喫茶で流したい・80

この「ジャズ喫茶で流したい」のコーナーでご紹介したクリフォード・ジョーダン。彼のリーダー作で、もう一枚、いわゆる「ジャズ喫茶が育んだ好盤」という類のアルバムがある。確かにこの盤もジャズ盤紹介本でまず見かけることは無く、ジャズ雑誌のテナーサックス特集にその名が挙がることが無い。

そのアルバムとは、Clifford Jordan『Glass Bead Games』(写真左)。1973年10月の録音。翌1974年のリリース。ちなみにパーソネルは、2つのカルテットに分かれる。一つは、Clifford Jordan (ts), Stanley Cowell (p), Bill Lee, Sam Jones (tr.12only) (b), Billy Higgins (ds)、もう一つは、Clifford Jordan (ts), Cedar Walton (p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。

パーソネルを見渡してみても、このアルバム、なかなか期待出来る雰囲気である。しかも、録音が1973年で、この頃のメインストリーム・ジャズって、それまでのジャズのスタイルのごった煮状態で煮詰まっている時代なので、このパーソネルをみると、かなりストイックで硬派なジャズが期待出来る。

しかし、である。このジャケット・デザインとリーダーがテナーのクリフォード・ジョーダンである。クリフォード・ジョーダンって、一言で言うと「シカゴ出身の地味ではあるが渋い味わいのあるテナー奏者」。ブルーノートなどにアルバムは残していて、無名では無いがメジャーとまではいかない。当然、この盤を前にすると「ううん〜」となる(笑)。

やはり、この盤は「ジャズ喫茶が育んだ好盤」なんだろうなあ。実はこの盤はジャズ喫茶で聴かせて貰った。まあ有り体に言うと、購入する勇気が無かった、ということである。で、ジャズ喫茶で聴かせて貰って、あらまあ、これは何、ということに相成った。
 

Glass_bead_games1

 
この盤が録音された頃のテナー・サックスと言えば、没後6年、まだまだコルトレーンの影響が大きかった。テナーの全てがコルトレーンの影響を大きく受けていた時代である。が、クリフォード・ジョーダンのテナーは様相が異なる。コルトレーンのプレイ、音色とはかなり違う。当時のテナー奏者からすると、コルトレーンからかなり遠いところにいるテナー奏者である。

これが良いんですね。当時、テナーのアルバムを売りたいなら、コルトレーンのスタイルを踏襲するのが手っ取り早いと思うんですが、このアルバムはそうじゃない。このアルバムは「Strata East」というレーベルからのリリースで、このレーベル、ブラック・アメリカンのミュージシャン達がブラック・アメリカンのための作ったレーベルで、他の数多レーベルとは根本的な成り立ちがちがう。

この『Glass Bead Games』は素直に実直に、メインストリーム・ジャズをガッツリとやるアルバムで、その当時のジャズのトレンドとか人気とか、そんなものを全く気にしていない。LP時代2枚組の大作なんだけど、聴いてみるとあっと言う間。それだけ、ジャズとして内容が濃く、充実しているのだ。

このアルバムは、とにかく、ジャズの好きな、ジャズ者中堅以上の方々に聴いて欲しいですね。コマーシャルな側面をバッサリとそぎ落とした、ストイックで硬派なジャズがこの盤にギッシリと詰まっている。クリフォード・ジョーダンの歌心溢れる骨太なブロウが思いっきり魅力的です。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月15日 (金曜日)

ながら聴きのジャズも良い・2

ジャズ・ギタリストとして日本のジャズ界、ギター界をリードしてきた渡辺香津美。その渡辺香津美のギター生活45周年メモリアルのアルバムがリリースされた。2年ぶりの新盤ということになる。

その新盤とは、渡辺香津美『Guitar Is Beautiful KW45』(写真左)。45周年メモリアルな企画盤。渡辺香津美と繋がりの深い、盟友の様なギタリスト、そして、これからのジャズ・ギターを担うであろう次世代の職人ギタリストから相棒を選択した、「デュオ」を基本としたアルバムである。

その盟友の様なギタリスト、次世代の職人ギタリストとは、リー・リトナー、マイク・スターン、Char、押尾コータロー、SUGIZO、伊藤ゴロー、生形真一(Nothing's Carved In Stone)、三浦拓也(DEPAPEPE)、沖仁、高田漣、井上銘。ほっほ〜。純ジャズに留まらない、フュージョンでコンテンポラリーな、はたまたロックなギタリストまで幅広に選択している。

デュオを基本に演奏される曲はどれもが「どこかで聴いた音」。45年間のジャズ・ギターの奏法のバリエーションのほぼ全てを網羅して、全編に渡って弾きまくっている。ジャズ・ギタリスト七変化である。この企画盤には、これまでのジャズ・ギターの要素がギッシリと詰まっている。
 

Guitar_is_beautiful_kw45_1

 
そういう意味では、このアルバムに対峙してグッと身を乗り出して聴き込むタイプの内容では無い。どこかで聴いた音のショーケースみたいな作りなので、何回か聴いたら容易に出てくる音が予測出来る様になって「飽きる」。「飽きる」んだが、その演奏の内容自体は非常にレベルが高く、充実しているので、聴き応えはある。

そう、このギター・デュオが基本のアルバムは、聴き込むよりは「聴き流す」のに適したアルバムだということが言える。確かに、このアルバム、BGMとして聴き流す感じでいると実に耳当たりが良く、聴き心地が良い。やはり、優れた演奏、優れた内容、優れた録音という3拍子が揃ったアルバムというのは、どんな内容の音でも「耳当たりが良い」のだ。

グッと身を乗り出して聴き込むと「飽きる」。だからBGM風に聴き流す。その「聴き流し」に適した盤だからこそ、聴き流す分には決して「飽きることは無い」。そういうジャズ盤ってあるよね。

ジャズ喫茶の朝に、昼下がりにピッタリの音世界だと思います。ギター・デュオが基本の企画盤ですが、ところどころパーカッションが入ります。これが実に趣味が良い。ミノ・シネルだそうで、この趣味の良いパーカッションも聴きものです。そして、このアルバムのキャッチコピーが「全てのギターに指先から愛を込めて」。お後がよろしいようで(笑)。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月14日 (木曜日)

和蘭が誇る欧州のビッグバンド

最近、ビッグバンドのジャズ盤から、ちょっと遠ざかっていた。それでも好きなものは好きなので、ネットであれこれ情報を集めていたら、このビッグバンドに出くわした。「良いよ、これ」という評判にグッと惹かれて探してみたら、これがなかなか良い。

Jazz Orchestra of the Concertgebouw & Jan Van Duikeren『Scribblin'』(写真左)。オランダが誇る欧州のビッグバンドのライブ盤である。人気トランペッター、ヤン・ヴァン・ダウケレンの曲、演奏をフィーチュアした、コンポーザー・シリーズ第4作目とのこと。

聴いてみると、あらまあ、素晴らしいビッグバンド演奏の数々。テクニックに優れ、一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー。ダイナミック・レンジの広いメリハリの付いた展開。音の強弱の差が大きく、抑揚がダイナミックで聴き応えがある。いやいや、こんなビッグバンドがあったなんて、「びっくりポン」である(笑)。

しかも、アレンジが素晴らしい。従来のビッグバンドとは全く似ても似つかぬ、ファンクなリズム&ビートに乗ったダンサフルな演奏もあれば、ロックの様な展開のバラードもある。従来の「ジャズ」のアレンジの傾向を踏襲しない、ロックやファンクなど、他の音楽ジャンルの音の雰囲気を取り込んだ、現代的なビッグバンドの演奏である。
 

Joc_scribblin_2

 
テクニックに優れ、恐らく、かなり練習を積んでいると思われる。とにかく疾走感が半端でない。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーが実に「高速」なのだ。よく合うよな〜、と単純に感心する。

従来のビッグバンドなアレンジも秀逸。スイング感が半端でない。実にスインギーにビッグバンド全体が揺れる。ヤン・ヴァン・ダウケレンのリリカルなフリューゲル・ホーンも魅力的だ。

オランダが誇る欧州のトップ・ビッグ・バンド、ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ (JOC)。「コンセルトヘボウ」という名を冠しているようにクラシックの殿堂として知られるコンサートホールが運営に携わる公的なビッグバンド。こんなに凄い演奏をするビッグバンドとは知らんかった。

この『Scribblin'』ってアルバム、ジャケット・デザインも秀逸。JOCの音のイメージにピッタリ。調べれば、この『Scribblin'』以外にも2〜3枚のアルバムが出ているみたいで、残りのアルバムも全て聴いてみたいなあ。いや〜、久し振りに魅力的なビッグバンドに出会いました。ほんと「びっくりポン」です(笑)。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月13日 (水曜日)

伸び伸びと唄うギターはなかなか

ジャズ・ギターって、奏法のバリエーションもそろそろ煮詰まってきて、いよいよその進化も頭打ちになる時期かなあ、なんて勝手な妄想をしていた矢先に、このアルバムである。Julian Lage『Gladwell』(写真左)。

2010年の8月から9月、そして12月に分けて録音されている。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (ac-g, el-g), Dan Blake (ts, melodica), Aristides Rivas (cello), Jorge Roeder (ac-b), Tupac Mantilla (ds, per)。

ギター・ソロ盤かと思う位、ギターがメインの展開。しかもアコギが圧倒的に目立っている。ドラムスは目立って登場しない。パーカッションがメイン。アコベが効果的。アコギの雰囲気は、パコ・デ・ルシアやジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルなど、1980年前後で活躍した「スーパー・ギター・トリオ」風の、フラメンコ・ギターの要素を交えた、スパニッシュ風な弾き回しに加えて、超絶技巧なアドリブ・フレーズ。

いや〜まだこういう伝説になったアコギの手法を、現代に引き継いでいるギタリストがいるなんて、なんと頼もしいことか。しかもテクニック的にもフレーズの歌心の展開のバリエーションとしても、1980年代の音より、しっかりと高度に進化している。この「進化」しているところが驚異的なのだ。ジャズ・ギターって、どこまで進化するんだろう。
 

Gladwell

 
Julian Lage(ジュリアン・レイジ)とは、数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリストである。僕は、このバートンのアルバム『GENERATIONS』や『NEXT GENERATION』に参加しているプレイを聴いて、このジュリアン・レイジの名を記憶した。1987年生まれなので今年で29歳になる。

このレイジのギターが実に個性的。過去にどこかで聴いたことのある音もあるのだが、暖かみのあるメジャーに展開するフレーズはレイジの個性。ブルージーにマイナーに展開することが多いジャズ・ギターだが、レイジのギターはその逆をいくところが、僕は気に入っている。

超有名スタンダードの「Autumn Leaves」や、エリザベス・コットンの古いアメリカン・フォーク・ソング「Freight Train」など、味のあるアレンジを施して、かつ、レイジの個性的なギターの響きが新しく、今までに無いユニークなイメージの演奏になっている。これが実に聴き応えがある。

フレーズを取り回すスケールが大きく、伸び伸びと唄うギターはなかなかのもの。唄う様に弾き進める新人のギターは久し振りではないか。ジュリアン・レイジ、これからの活躍が楽しみなギタリストである。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月12日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・79

ジャズ雑誌では評価はイマイチなのに、ジャズ喫茶でよくかかっていて、誰のアルバムだろう、とジャケットを見にいったら、ジャズ喫茶のマスターやメンバーにお勧めされる、という不思議な盤がある。じゃあジャズ雑誌の評価ってなんなんだ、と突っ込みたくもなるのだが、今回の話題には関係無いので割愛したい。

いわゆる「ジャズ喫茶が育んだ好盤」という類のアルバムである。ジャズ喫茶間の情報連携、もしくはジャズ喫茶のお客さんの口コミ、情報の横展開によって、そのジャズ盤の「真の評価」がジャズ者の世界の中に浸透していく。そして、ジャズ喫茶で愛聴され、ジャズ者の方々に愛聴される。そんな不思議な生い立ちのジャズ盤である。

そんなアルバムの一枚がこれ。Clifford Jordan『In The World』(写真左)。クリフォード・ジョーダンは、一言で言うと「シカゴ出身の地味ではあるが渋い味わいのあるテナー奏者」。ブルーノートなどにアルバムは残していて、無名では無いがメジャーとまではいかない。

1969年の録音。ちなみにパーソナルは、ちょっと複雑なんだが、Clifford Jordan (ts), Don Cherry (cor,tracks1&2), Kenny Dorham (tp, tracks3&4), Julian Priester (tb), Wynton Kelly (p), Richard Davis (cello, b), Wilbur Ware (b, tracks1&3)Ed Blackwell (ds, tracks3&4), Roy Haynes (ds, tracks3&4), Albert Heath (ds, tracks1&2) 。

パーソネルを見渡せば、これはこれは、ジャズメンの中でも「強者」ばかりである。しかも、すべての曲がリーダーのクリフォード・ジョーダンの自作。このパーソネルとジョーダンの自作曲という組合せから、このアルバムから出てくる音が想像出来る。限りなく自由度の高いハードバップ、若しくは、若干スピリチュアルな要素が入ったモーダルなジャズ。甘い音を排除した、ストイックでビター、硬派でアーティスティックなジャズ。
 

In_the_world1

 
で、このアルバムを聴いてみる。冒頭の「Vienna」を聴くと、この「想像した音」がビンゴである。17分10秒もある長い曲なんだが、これがまあ圧巻な演奏である。

ジョーダンのテナーは野太いアーシーなトーンで、しかも深みのあるブルージーな味わい。愁いを身に一杯に纏った晩年のケリー節。超弩級の重低音なベース音を轟かせるリチャード・デーヴィスとアル・ヒースのベース。狂気のごとくポケット・トランペットを吹きまくるドン・チェリー。

ジャズに調和、調音を求める向きには辛い、限りなく自由度の高いハードバップ、若しくは、若干スピリチュアルな要素が入ったモーダルなジャズ。ジャズにポップス性を求める向きには耐えられない、甘い音を排除した、ストイックでビター、硬派でアーティスティックなジャズ。

アルバムの印象は重くて暗いが、実はこの重さと暗さが良い。このアルバムに詰まった、切れ味の良い、ほどよく捩れた、メインストリーム・ジャズが実に心地良いのだ。

不思議な魅力を湛えた隠れ好盤です。かなりストイックで少しスピリチュアルな要素の入った自由度の高いジャズなので、ちょっと聴き手を選ぶ盤だとは思います。が、ジャズを聴き込んだ、中堅以上のレベルのジャズ者の方々にはこの盤は一聴の価値があると思います。意外とこの盤、はまります。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月11日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・1

しっかりとステレオの前に陣取って、スピーカーに対峙して、そのスピーカーから出てくる音に集中する、そんなジャズの聴き方もある。逆に、何かをしながらの「ながら聴き」でジャズを聴き流す、そんなジャズの聴き方もある。

何かをしながらの「ながら聴き」のジャズも「オツなもの」である。良い録音で流麗な演奏。そんな中、ちょっと印象的でキャッチャーなアドリブ・フレーズが耳を駆け抜ける。それでも「ながら」の邪魔をすることは無い。逆に「ながら」を支えるリズミカルで流れる様なジャズ。

今日、聴いたこのアルバムは、そんな「ながら聴き」に適したジャズ盤である。T.S.Monk『Monk on Monk』(写真左)。1997年2月の録音。大人数でのジャズ。ウェイン・ショーター、ロン・カーター、ハービー・ハンコック、グローヴァー・ワシントンJr.、ジミー・ヒース、デイブ・ホランドなど、有名アーティストも含む総勢26名のジャズメンが参加。

T.S.Monkとは、伝説のピアニスト、Thelonious Monk(セロニアス・モンク)の息子。ジャズ・ミュージシャンで担当楽器はドラム。1949年生まれだから今年67歳。このアルバムを録音した時は48歳。ジャズメンとしても脂ののったベテランの域に達しつつある年齢。このアルバムでも充実したドラミングとリーダーシップを披露している。
 

Monk_on_monk1

 
息子のモンクが親父さんのモンクの曲を演奏する、という企画盤だが、聴いて感心するのは、演奏自体が親父さんのセロニアス・モンクの奏法に似せていない、というところ。親父さんのモンクの楽曲の個性を抽出して、息子のモンクなりのコンテンポラリーなアレンジで、息子のモンクなりの奏法で聴かせてくれる。

これがまあ、良い雰囲気なんですね。まず録音が良い。録音エンジニアは、あの「Rudy Van Gelder」。当然、録音スタジオは「 Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey」。ヴァン・ゲルダーの録音の中でもかなり良い録音で、聴いていて惚れ惚れする。楽器の響きとエコーが絶妙に決まっていて耳に馴染む。聴き流していても音の分離が良く、楽器毎のニュアンスがしっかりと伝わる。

パーソネルを見れば、その演奏が悪かろう筈が無い。有名アーティストも相当数参加しているが、それぞれの個性を出しつつ、ネオ・ハードバップな雰囲気で統一されている。この統一感は、T.S.Monkのリーダーシップとプロデューサーはフィル・ラモーンの手腕の成せる技だろう。アルバムとしての完成度は高い。

何かをしながらの「ながら聴き」でジャズを聴き流す、そんなジャズの聴き方にぴったりのアルバム。「ながら」を支えるリズミカルで流れる様なT.S.Monkのアレンジとリーダーシップ。ネオ・ハードバップの好盤の一枚でもあります。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
 

2016年4月10日 (日曜日)

アヴィシャイの表現形式の原点

こういうアルバムがポロっと出てくるのだから、ジャズって隅に置けない。典型的なコンテンポラリーな純ジャズである。全くもってシンプルな、ピアノ・トリオな編成。この最小ユニットで奏でるジャズが、これまた豊かな内容を届けてくれるのだから、ジャズって面白い。

そのアルバムとは、Avishai Cohen『From Darkness』(写真左)。2014年5月〜6月の録音。リリースは2015年1月。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b), Nitai Hershkovits (p), Daniel Dor (ds)。現在のジャズ・シーンの中、イスラエル出身のベースのキーマンの一人、アヴィシャイ・コーエンの新盤である。

この『From Darkness』で、アヴィシャイは自身の音楽的表現形式と活動の原点に還ったという。アヴィシャイはこう語る。「新しく、また新鮮で、信じられないほどしっかりとした形をトリオで成し遂げられる感触があった」。そしてトリオ間でのケミストリーについて「こうして、3人が1つになった」と表現している。
 
つまりは、この最新のピアノ・トリオ盤は、アヴィシャイ・コーエンにとっての「表現形式の原点」を確認する盤であり、アヴィシャイが考える「ジャズにおける演奏活動の基本となるユニット」での演奏ということになる。
 

From_darkness

 
このアルバムを聴いて、なるほどなあ、と納得する。シンプルなトリオ編成で奏でるジャズ演奏に音楽的表現形式の原点がある、とは良い表現やなあ、と感心する。豊かで密なサウンド、そして新たなアイディアを織り交ぜ、とても充実したピアノ・トリオ演奏が展開される。

アヴィシャイのベースがその創造性をコントロールしていることは言うまでも無い。ベースのリーダーがアルバムの演奏全体の展開と雰囲気を整え、コントロールする。ベースがリーダーのアルバムの醍醐味のひとつである。

ユニゾン&ハーモニー、リズム&ビート、それぞれの明暗、伸張、緩急、難易を演奏展開のそれぞれの場面で、適切に判断し、適切に適応する。アヴィシャイのコマーシャルな面である「イスラエル感、中東感」が希薄なので、それを期待するジャズ者の方々には全く持って、不完全燃焼なアルバムかもしれませんね。

しかしながら、アヴィシャイの考える「典型的なコンテンポラリーな純ジャズ」がギッシリと詰まったアルバムだと解釈すると、十分に「近頃のアヴィシャイ」を感じ取れる好盤だと思います。 

 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 9日 (土曜日)

チャック・マンジョーネに再会

チャック・マンジョーネ(Chuck Mangione)と言われて、まず浮かぶのが、フュージョン界でのフリューゲルホーンの名手。そして、ヒット曲の「Feels So Good」。さて、その次は何が浮かびますが、と問われて・・・、これが浮かばないのですね。それほど「Feels So Good」の印象が強い、愛すべき「これ1曲」の一発屋です。

それほど、当時(1977〜78年)、この「フィール・ソー・グッド」は、日本でも売れに売れた。喫茶店の有線に乗って、1時間に1回は、この「Feels So Good」がリクエストされていたのではないか。

チャック・マンジョーネについては、確かにそのヒット曲と同名のアルバム『Feels So Good』の印象しか無い。というか確かにこのアルバムと『Live at the Hollywood Bowl』辺りしかアルバムの印象が無い。ただ、よくよく調べてみると、十数枚のリーダー作がある。当然、まだ存命で、1940年生まれなので今年で76歳になる。 

そんなチャック・マンジョーネであるが、最近、この大ヒット盤『Feels So Good』の雰囲気を彷彿とさせる、なかなかの内容のフュージョン盤に遭遇した。Chuck Mangione『The Feeling's Back』(写真左)である。1999年のリリース。
 

The_feelings_back1_2

 
アルバム全体の雰囲気は、全くもって、1970年代後半のフュージョン・ジャズの音世界そのままである。バックの演奏の音も、フュージョン・ジャズそのままである。良い雰囲気なんですよね〜。1970年代後半のあの頃の音を思い出しますね。

主役のチャック・マンジョーネのフリューゲルホーンも「あの頃のまま」です。柔らかい、ほのぼのとした音色は、今でもなかなかに「和みます」。1970年代後半より、中音域中心にゆったりとした哀愁感溢れるフレーズを吹きまくる。ここまでしっかり個性をキープしているなんて、マンジョーネもなかなかやりますね〜。

フュージョン・ジャズのジャンルの中で、特に尖って目立ったジャズメンではないんですが、このチャック・マンジョーネのフリューゲルホーンは記憶に残るんですよね。この『The Feeling's Back』を聴いた時、なんか過去を振り返るような、記憶を呼び起こすような、とっても懐かしい気持ちになりました。

しっかりした内容のフュージョン・ジャズの好盤だと思います。落ち着きのある大人のフュージョンとでも言いましょうか、年配のフュージョン者の方々にこっそりお教えしたい「秘密のしみじみ盤」です。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 8日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・78

ジャズ本になかなか挙がることの無い、もとよりジャズ入門盤になど絶対に選択されない、よってジャケットだって見たことが無い。それでも内容優秀なジャズのアルバムって実は沢山ある。そんな所謂「隠れ好盤」を見出すこと、これがジャズ盤コレクションの醍醐味のひとつである。

最近、そんな盤に出会った。『Young Men from Memphis - Down Home Reunion』(写真左)。誰がリーダーという訳では無い、ジャム・セッションを捉えたアルバムである。1959年4月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little, Louis Smith (tp), Frank Strozier (as), George Coleman (ts), Phineas Newborn Jr. (p), Calvin Newborn (g), George Joyner (b), Charles Crosby (ds)。

アメリカ合衆国のテネシー州西端、ミシシッピー川に面する都市メンフィス。この街はブルースの発祥地としても有名な土地です。んなメンフィス出身のアーティストをフィーチャーしたジャム・セッションなアルバムです。

まず、パーソネルを眺めると、この盤が「只者で無い」ことが判ります。早逝のトランペットの天才、ブッカー・リトル(写真右)。小粋なハードバップなトランペッター、ルイ・スミス。モーダルなテナーの先駆者、ジョージ・コールマン。疾走する天才ピアニスト、フィニアス・ニューボーンJr.。この辺の名前をみると、どんな演奏が展開されているのか、ワクワクします。
 

Down_home_reunion

 
冒頭の「Things Ain’t What They Used to Be」を聴くと、そのプレイの先進性が良く判ります。1959年なので、典型的な絵に描いた様な、優等生的なハードバップな演奏が繰り広げられているのではないか、と予想したのですが、前奏のテナーとトラペットのユニゾンの響きを聴いたら、これはまあ、只者ではないぞ、と身構えて(笑)。

ついつい座り直して、集中してその音に耳を傾けてしまいます。端正なハードバップなんてもんじゃない。これはもうフリー一歩手前の自由度の高いハードバップ。しかもそのフレーズはゴツゴツしていて骨太。そして、ところどころでモードな展開が今の耳にも新しい響きを持って展開される。

冒頭の1曲目のみならず、収録された全4曲とも「只者ではない」演奏で、当時としては突出して新しい、今の耳にも新鮮な響きがこのアルバムの中にギッシリと詰まっています。ジャム・セッションな演奏とは言え、息の合ったユニゾン&ハーモニーは聴いていて楽しく、アドリブのフレーズはどれもが新鮮な響きに溢れていて、全く時代を感じさせない。

良いアルバムです。出身地が同じというのも「好要素」になっているみたいで微笑ましいですね。ジャズ本やネットで採り上げられることが全く少ないアルバムなんですが、このアルバムは、ジャズを聴くことに慣れ、ジャズの好みがはっきりした中級以上のジャズ者の方々にお勧め。「目から鱗」の好盤です。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

2016年4月 7日 (木曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・10

なかなか、一気に温かくならない。しかも、スカッと晴れない。今日などは晴れないどころか、朝から雨。午後は台風の様な強い南風が吹き荒れて、どうにも天候に恵まれない今年の春の千葉県北西部地方。

しかし、そんな南風の強い、春雨の降る午後の昼下がり、風の音を聴きながら、静かな部屋の中で寛いでジャズを聴く。そんなシチュエーションにピッタリなジャズ盤を選ぶ。

小曽根真 & Gary Burton『Time Thread』(写真左)。2013年3月の録音。ピアノの小曽根、ヴァイブのバートン。師弟関係の二人の「究極のデュオ」である。この盤で、小曽根真 & Gary Burtonのデュオ盤は3枚目になる。

聴いて思う。やっぱりゲイリー・バートンのヴァイブは良いなあ。昔は、ジャズ・ヴァイブと言えば、ミルト・ジャクソン。というか、ミルト・ジャクソンしかいなかった。1960年年代の終わり、ゲイリー・バートンが登場。しかし、彼が演奏するジャズは「ジャズ・ロック」。日本では「際ものヴァイブ奏者」と看做された。

1970年代は、ECMレーベル中心にコンテンポラリーな純ジャズに落ち着き、チック・コリアと出会う。そして、このチック・コリアとのデュオが大当たり。現在まで、計7作のデュオ盤をリリースしている。
 

Time_thread1

 
小曽根真のピアノのアイドルの一人がチック・コリア。このバートンとの『Time Thread』を聴いて、なるほどなあ、と思ってしまう。小曽根のピアノのフレーズって、どことなくチック・コリアの雰囲気が漂うのだ。といって、そっくりでは無い。チックのタッチよりはエッジが柔らかく丸い。チックの様な現代音楽チックな鋭角に切り立ったフレーズは無い。逆に親しみ易い滑らかなフレーズが実に優しい。

それでも、バートンのヴァイブとのデュオとなると、やっぱり「チック・コリア&ゲイリー・バートン」を彷彿とさせる。まあ、これは仕方ないか。似通ってはいるものの、しっかりと「小曽根真&ゲイリー・バートン」としての個性的な響きもあるので、これはこれで楽しめる。

解説を紐解けば「『Time Thread』の曲は、全て小曽根の手によるもので、師であるゲイリー・バートンとの思い出の中から、幾つかのシーンを切り取った、いわば「標題音楽」となっている」とのこと。ふ〜ん、そうなんだ。聴いていても、そういう難しいことを感じることは無い。作曲時のモチーフになった、ということだろう。

デュオ演奏について、バートンはこう語っているそうだ。「グループで演奏するということは、いわば座談会のパネラーになるようなもの。それがデュオの場合、まさにふたりだけの対談になる。音楽に置き換えると、ギミックなしの真剣勝負であり、私には最もエキサイトするセッティングであり続けている」。なるほど。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
 

2016年4月 6日 (水曜日)

全くもって贅沢なブルーノート

1979年、UA社のレコード部門をEMIが買収したのを好機と捉え、音源発掘男マイケル・カスクーナはキャピトルと談判、ブルーノートの未発表音源を発掘した。BNLTシリーズである。このBNLTシリーズは、もともとはブルーノート・レーベルの下、総帥のアルフレッド・ライオンが録音したにはしたが、何らかの理由でLPとしての発売を見送った(お蔵入りの)音源のアルバム化である。

そして、このブルーノートのLTシリーズのアルバムを聴く度に、毎度毎度、このつぶやきである。「なんで、このアルバムが当時、お蔵入りになんたんやろう」(笑)。それほど、今の耳で聴くと、そのアルバムの良さが十分に感じることが出来るアルバムが満載のシリーズである。

さて、今回の選盤は、Donald Byrd『Chant』(写真左)。1961年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Pepper Adams (bs), Herbie Hancock (p), Doug Watkins (b), Teddy Robinson (ds)。若き日のハービー・ハンコックのブルーノートでの初録音作でもある。

この盤は久し振りの聴き直しだったが、聴き終えた後、やっぱり呟いてしまう。「なんで、このアルバムが当時、お蔵入りになんたんやろう」(笑)。ドラムのエディー・ロビンソンは無名に近いが、残りのメンバーは、ハードバップの強者ばかり。ピアノは若かりし頃のハービー・ハンコック。メンバーだけ見れば、絶対に悪かろう筈が無い。
 
 

Donald_byrd_chant
 
 
まず、リーダーのドナルド・バードのトランペットが好調。中音域&ミッドテンポが得意のドナルド・バードが、この盤では結構速いフレーズを吹きまくっている。好調ではあるが、なんだかいつものドナルド・バードじゃないみたい。次に好調なのが、バリトン・サックスのペッパー・アダムス。ペッパー・アダムスは、この重低音のバリサクを速いフレーズで吹きまくる吹きまくる。リーダーのドナルド・バードのトランペットを凌ぐ勢いである。

このフロントの二人が、何時になく結構速いフレーズを吹きまくるという、普段の二人からするとちょっと「違和感」のある、しかしながら「優れた」ブロウが、意外と言えば意外である。この辺りが、お蔵入りになった理由かもしれないなあ。ベースのダグ・ワトキンスについては、太くて鋼の様にしなやかなウォーキング・ベースはなかなか好調なんだが、ピアノの若かりしハービー・ハンコックのピアノについては印象が薄い。普通のハードバップなピアノで、ちょっと聴いていても誰だか判らないほど「没個性」である。

ドラムのエディー・ロビンソンも同様。無難にリズム&ビートを叩きだしてはいるが個性に乏しい。どうも、このリズム・セクションの「没個性」度合いも、この盤がお蔵入りになった理由かもしれないなあ。とかなんとか言うが、盤全体の内容としてはかなり良い感じなのだから、この頃のブルーノート・レーベルの録音はレベルが高い。

リズム・セクションの弱さはあるが、フロント二人の好調さを鑑みると、やっぱり聴き終えた後、「なんで、このアルバムが当時、お蔵入りになんたんやろう」と呟いてしまう。全くもって贅沢なブルーノートであり、アルフレッド・ライオンである。
 
 
 
震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 5日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・52

マッコイ・タイナーの初期のリーダー盤の聴き直し。あと2枚、感想文を書かせていただきたい。あと2枚で、Impulse!レーベル時代のマッコイのリーダー盤の聴き直しが完結する。実は2枚目と6枚目のリーダー盤をまだストックしているのだ。

このリーダー作は初期のマッコイの代表盤と言い切って良いだろう。初リーダー盤『Inception』の次のセカンド盤になる。このセカンド盤も初リーダー盤に次いでトリオでのチャレンジになる。素直に自らのピアノの個性を開花させた、サラリとした爽快感溢れる、若かりしマッコイの傑作である。

そのセカンド盤とは、McCoy Tyner『Reaching Fourth』(写真左)。1962年11月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Henry Grimes (b), Roy Haynes (ds)。ベースのヘンリー・グライムスの名前に「えっ」と思う。後のジャズ盤に名を連ねることが希少なベーシストである。逆に、ドラムのロイ・ヘインズの名前には「おっ」と思う。名盤請負人なドラマーの一人である。

さて、このセカンド盤には、マッコイのピアノの個性が満開である。リーダー盤に聴かれた緊張感もほぐれて、リラックスしながら、ケレン味無く弾きまくるマッコイのピアノは凄い。しかし、マッコイのピアノは、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドをピアノに置き換えたものでは無いことがこのアルバムで良く判る。
 

Reaching_fourth

 
どちらかと言えば、現代ジャズの基本スタイルである「ビ・バップ」の高速アドリブ・フレーズをモードに置き換えた様な感じかな。マッコイのピアノの基本は明らかに「モード」であり、伝統に根ざした「ハードバップ」である。ただ、高速に弾きまくるのでは無い。柔らかいフレーズの展開と、切れ味の良さと相対する「甘さ」を仄かに感じさせるところがニクイ。

バックを勤める二人、ドラムのロイ・ヘインズ、ベースのヘンリー・グライムス。この二人の貢献も特筆に値する。あまり録音の多く無い、どちらかと言えば無名に近い、ベースのグライムスが良い。多弁なマッコイの右手に絡む、グライムスのメロディアスにうねるようなベースライン。このベースラインがマッコイのピアノに推進力を与えている。

ヘインズのドラミングも特筆に値する。多彩なスティック捌きで、ポリリズムとはちょっと異なる響きを供給する。これが、トリオ全体のビートをガッチリと支え、落ち着きを与えている。良きテンションを与えてくれるドラミング。バップ出身のドラマーなのに、この柔軟性と適応力はどうだ。

理屈っぽく弾き回したり、コルトレーンの影を追い回したりしない、モーダルなピアノを爽やかに弾きまくるマッコイは良い。このリーダー作2枚目で、マッコイのピアノの個性は確立されていた、と思って良いだろう。マッコイのピアノを知るにはマスト・アイテム。ピアノ・トリオの代表的名盤としてもお勧め出来る好盤である。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 4日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・60

この10年ほど、ベーシストのリーダー作に興味があって、機会があれば、都度アルバムをピックアップして聴き進めてきた。

ベースという楽器は、ジャズ演奏のリズム・セクションを担う「縁の下の力持ち」的楽器なので、前面に出てフロントを張るにはちょっと荷が重い。ベーシストのリーダー作としては、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースと、ベーシストとしてその超絶技巧なテクニックを全面的に押し出すケースの2つに分かれる。

つまりはベーシストのリーダー作については「企画盤」としての取り組みが必要ということ。そういう意味では、このアルバムは、そんな「企画盤」としての取り組みの最たる例でだろう。Ray Brown『Super Bass』(写真左)。なんとベース3本だけのアンサンブル・アルバムである。

ちなみにパーソネルは、Ray Brown, John Clayton, Christian McBride (b), Gregory Hutchinson (b), Benny Green (p)。1996年10月17〜18日、ボストンのScullersJazzClub でのライブ録音。さすがに全編、ベース3本だけでやり通すには、やはりちょっとマンネリになる様で、演奏のアクセントとして、ピアノとドラムが一部、ゲスト参加している。

しかし、ベース3本だけのアンサンブルなので、3人のベーシストの力量が重要になる。しかも、リーダーがベースの達人レイ・ブラウンである。残りのベーシストの力量のほどが難しい。しかし、パーソネルを見れば安心する。一人のベーシストが、レイ・ブラウンの弟子であるJohn Clayton、もう一人のベーシストが、現代のトップ・ベーシストChristian McBride。
 

Superbass

 
全く問題の無い3人のベーシストというか、この3人しかいないと思われるほどの、抜群の力量を備えた歴代のジャズ・ベーシスト3人が集結してのベース・アンサンブルである。

このライブ盤を聴けば、3人のウッドベースのピッチがばっちり合っていることが良く判る。ジャズ・ベースはこうでなければ。ピッチの合っていないウッドベースは最後まで聴いておれない。ピッチがばっちり合っているからこそ、3人のウッド・ベースのユニゾン&ハーモニーが心地良く耳に響くのだ。

これだけ基本がしっかりしていれば、あとは3人のウッドベースの妙技を楽しむだけである。ビートだけでなく、メロ、ハモり、ストリングス、リズムパーカッションの役割まで果たしてしまう3人のベーシストの至芸。ベースってこれだけの表現力がある楽器なんだ、ということ再認識して、ちょっとビックリします。

いやはや、びっくりポンな「企画盤」です。これを考案し、メンバーを厳選し、メンバーを集めて、この「企画盤」を成立させた関係者の慧眼には感服するばかりです。しかしながら、このライブ盤を聴くときの注意点をひとつだけ。性能の良いステレオ装置で聴くこと。これは必須です。ウッドベースの音はオーディオ的にも難しいので、この注意点は必ず意識して欲しいですね。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 3日 (日曜日)

マッコイの「変わり種」な盤

マッコイ・タイナーの初期のリーダー作を聴き直しているんだが、マッコイ初期のリーダー作はどれもがマッコイのキャリア・個性にとって、重要なアルバムばかりである。後のマッコイの基本となる、ピアノの個性、アレンジの才のいずれもが、初リーダー作から5〜6枚程度で確立されていたことを再認識出来て興味深い。

このリーダー作も聴けば実に興味深い内容である。McCoy Tyner『Live At Newport』(写真左)。1963年7月5日、Newport Jazz Festival, Newport でのライブ録音である。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Clark Terry (tp), Charlie Mariano (as)。

まず、パーソネルが面白い。リーダーのマッコイ・タイナーは1938年生まれで、当時25歳。ベースのボブ・クランショウは1932年生まれで、当時31歳。ドラムのミッキー・ローカーは同じく1932生まれで、当時31歳。しかしながら、アルトのチャーリー・マリアーノは1923年生まれで、当時41歳。そして、トラペットのクラーク・テリーは1920年生まれなので当時43歳。

リーダーのマッコイが圧倒的に若い。リズム・セクションを一緒に担うベースのクランショウ、ドラムのローカーは30歳そこそこの中堅。フロントのアルトとトランペットは40歳代のベテラン。マッコイ以外は、ビ・バップからハードバップを生き抜いて来た強者ジャズメンばかりである。
 

Live_at_nerport

 
ニューポート・ジャズ・フェスでの1回きりの共演である。そうなれば、やはり「年功序列」という意味合いで、マッコイが他の先輩メンバーに合わせて、ハードバップな演奏をやってしまいそうなものなんだが、そこはマッコイ、そうはならない(笑)。1963年という時代背景もあるだろう。ジャズ界はファンキー・ジャズなどのポップなジャズの流れと、モード奏法をベースとしたアートなジャズの流れが主流となっていた。

このライブでは基本が「モード・ジャズ」。マッコイからみれば大先輩のアルトのマリアーノとトランペットのテリーが必死になってモーダルなフレーズを吹きまくっている。で、これが不思議とかなり真っ当な「モード・ジャズ」になっていて、当時の一流ジャズメンの力量たるや、かなり高度なものがあったんやなあ、と心底感心する。

とにかく、マッコイは周りの先輩ジャズメンを差し置いて、徹頭徹尾「モード・ジャズ」で突っ走る。リズム・セクションを一緒に担っているベースのクランショウとドラムのローカーは、冒険すること無く、無難にモード・ジャズに追従しているので、リズム&ビート的には化学反応は起きていないが、フロントの大先輩二人のお陰で、なんとか、しっかりとした「モード・ジャズ」で完結している。

面白いライブ盤です。この面子でもしっかりとモード・ジャズになっているってことは、1963年当時、モード・ジャズはジャズの基本的な奏法のひとつとして定着していたことが窺い知れて、実に興味深いです。特に、クラーク・テリーがモードの適応するなんて、思ってもみなかった。当時の一流ジャズメンの力量をみくびっていました。ゴメンナサイ(笑)。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 2日 (土曜日)

マッコイの作曲&アレンジの才能

マッコイ・タイナーは、ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットのレギュラー・ピアニストとして有名。しかし、マッコイは単なるピアニストでは無い。その作曲能力、そしてアレンジの能力は素晴らしいものがある。

そのマッコイの優れた作曲能力、アレンジ能力は、マッコイのキャリアのどの辺りから発揮されていたのか。それはこの彼のリーダー作を聴けば判る。このアルバムは、マッコイのリーダー作の第2弾。つまりは、マッコイは彼のキャリアの初期の頃から、その作曲能力、そしてアレンジの能力は既に発揮されていたことになる。

そのアルバムとは、McCoy Tyner『Today and Tomorrow』(写真左)。1963年6月と1964年2月の録音のカップリング。ちなみにパーソネルは、1963年6月録音時はトリオ編成で、McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b),Albert Heath (ds)。1964年2月録音時はセクステット編成で、McCoy Tyner (p), Butch Warren (b), Elvin Jones (ds), John Gilmore (ts), Thad Jones (tp), Frank Strozier (as)。

このアルバムに収録された曲は全てマッコイの作曲になっている。聴けば良く判るのだが、確かにマッコイ独特の曲想、節回し。既にこの時点で、マッコイの作曲の個性は確立されていたことになる。特にモーダルな曲に偏っている様な気もするが、これもマッコイ独特の個性として捉えるべきだろう。
 

Today_and_tommorow

 
そして、1曲目から3曲目は、テナー、アルト、トランペットの3管がフロントに立ったセクステット編成の演奏なのだが、このセクステットの演奏のアレンジがこれまた良い。しかも、マッコイ独特の響き、音符の重ね方を聴きとることが出来て、なるほど、既にこの時点で、マッコイのアレンジの個性は確立されていたことになる。

1964年と言えば、マッコイは26歳。この盤での作曲能力、アレンジ能力を聴けば、いかにマッコイが早熟だったかが判る。曲想や節回し、音の響き、音符の重ね方等々、後は如何にこなれていくか、だけの状態で、マッコイの個性の基本はもうこのアルバムで確立されている。

モーダルなジャズがメインの、その時代のトレンドを捉えたマッコイの初期の好盤だと思います。マッコイのファンである「マッコイ者」にはマスト・アイテム、そして、モード・ジャズとは如何なるものか、の問いに答える、モード・ジャズ初期のサンプルとしても有効な盤だと思います。

明らかに、それまでのビ・バップな、ハードバップなピアニストとは一線を画する、明らかに異なる奏法と響き、そしてフレーズ。もちろん、マッコイのピアノは実に良く鳴っています。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2016年4月 1日 (金曜日)

マッコイの初リーダー作である

いつの頃からか、マッコイ・タイナーのピアノが意外と好みである。テクニック良く多弁でモーダルな右手、ハンマー打法と呼んでピッタリの「ガーン、ゴーン」と打ち付ける様に弾く左手。とにかく明確で良い。

マッコイ・タイナーは、ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットのレギュラー・ピアニスト。しかしながら、僕はコルトレーンのカルテットでバックに回ったマッコイよりも、独立してリーダーとして、ならではの個性的なピアノを弾きまくるマッコイの方が好みである。ということで、マッコイ・タイナーのリーダー作の聴き直しを進めることにした。

まずは初リーダー作である。McCoy Tyner『Inception』(写真左)。1962年1月の録音。1960年にジョン・コルトレーンのカルテットに参入しているので、コルトレーンと共演していた時期に、初リーダー作をリリースしたことになる。

第一印象は、バリバリ硬派のピアノ・トリオである。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Elvin Jones (ds), Art Davis (b)。3人ともコルトレーン門下生の優秀どころ。演奏全体の雰囲気は明らかに「コルトレーン・ミュージック」である。しかも、フリーに傾いていない、モーダルな雰囲気。
 

Inception

 
ベースにアート・デイビス、ドラムにエルビン・ジョーンズという超弩級のトリオで、迫力のあるピアノ・トリオが聴ける。特に、エルビンのドラミングは迫力十分、超絶技巧の極み。アート・デイビスのベースは重量感溢れ、迫力十分。タイナーのピアノは、初リーダー作とはいえ、バリバリに弾きこなしていて立派。

奏法としては、既に「シーツ・オブ・サウンド」のピアノ版的な、音符を敷き詰めた様な、テクニックとスピード溢れる奏法は、コルトレーンをピアノに置き換えた様な雰囲気。それでも、冒頭の「インセプション」などは、初リーダー作ゆえ、前がかり気味な早弾きになりがちで、タイナーの緊張と意気込みが伝わってくるようで微笑ましい。

まだまだこなれていないところもあって、マッコイの個性の確立というところまではいかないが、マッコイのピアノの個性については、この初リーダー盤で十分に聴いて取れる。明らかに、それまでのビ・バップな、ハードバップなピアニストとは一線を画する、明らかに異なる奏法と響き、そしてフレーズ。

当時、このアルバムがリリースされた時、当時のジャズ者の皆さんは、結構驚愕したか戸惑ったか、したんでは無いでしょうか。それほど、この初リーダー作には、新しいジャズ・ピアノの響きが充満しています。ジャズ・ピアノ好きにはマスト・アイテムでしょうか。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« 2016年3月 | トップページ | 2016年5月 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2021年4月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー