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2016年4月12日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・79

ジャズ雑誌では評価はイマイチなのに、ジャズ喫茶でよくかかっていて、誰のアルバムだろう、とジャケットを見にいったら、ジャズ喫茶のマスターやメンバーにお勧めされる、という不思議な盤がある。じゃあジャズ雑誌の評価ってなんなんだ、と突っ込みたくもなるのだが、今回の話題には関係無いので割愛したい。

いわゆる「ジャズ喫茶が育んだ好盤」という類のアルバムである。ジャズ喫茶間の情報連携、もしくはジャズ喫茶のお客さんの口コミ、情報の横展開によって、そのジャズ盤の「真の評価」がジャズ者の世界の中に浸透していく。そして、ジャズ喫茶で愛聴され、ジャズ者の方々に愛聴される。そんな不思議な生い立ちのジャズ盤である。

そんなアルバムの一枚がこれ。Clifford Jordan『In The World』(写真左)。クリフォード・ジョーダンは、一言で言うと「シカゴ出身の地味ではあるが渋い味わいのあるテナー奏者」。ブルーノートなどにアルバムは残していて、無名では無いがメジャーとまではいかない。

1969年の録音。ちなみにパーソナルは、ちょっと複雑なんだが、Clifford Jordan (ts), Don Cherry (cor,tracks1&2), Kenny Dorham (tp, tracks3&4), Julian Priester (tb), Wynton Kelly (p), Richard Davis (cello, b), Wilbur Ware (b, tracks1&3)Ed Blackwell (ds, tracks3&4), Roy Haynes (ds, tracks3&4), Albert Heath (ds, tracks1&2) 。

パーソネルを見渡せば、これはこれは、ジャズメンの中でも「強者」ばかりである。しかも、すべての曲がリーダーのクリフォード・ジョーダンの自作。このパーソネルとジョーダンの自作曲という組合せから、このアルバムから出てくる音が想像出来る。限りなく自由度の高いハードバップ、若しくは、若干スピリチュアルな要素が入ったモーダルなジャズ。甘い音を排除した、ストイックでビター、硬派でアーティスティックなジャズ。
 

In_the_world1

 
で、このアルバムを聴いてみる。冒頭の「Vienna」を聴くと、この「想像した音」がビンゴである。17分10秒もある長い曲なんだが、これがまあ圧巻な演奏である。

ジョーダンのテナーは野太いアーシーなトーンで、しかも深みのあるブルージーな味わい。愁いを身に一杯に纏った晩年のケリー節。超弩級の重低音なベース音を轟かせるリチャード・デーヴィスとアル・ヒースのベース。狂気のごとくポケット・トランペットを吹きまくるドン・チェリー。

ジャズに調和、調音を求める向きには辛い、限りなく自由度の高いハードバップ、若しくは、若干スピリチュアルな要素が入ったモーダルなジャズ。ジャズにポップス性を求める向きには耐えられない、甘い音を排除した、ストイックでビター、硬派でアーティスティックなジャズ。

アルバムの印象は重くて暗いが、実はこの重さと暗さが良い。このアルバムに詰まった、切れ味の良い、ほどよく捩れた、メインストリーム・ジャズが実に心地良いのだ。

不思議な魅力を湛えた隠れ好盤です。かなりストイックで少しスピリチュアルな要素の入った自由度の高いジャズなので、ちょっと聴き手を選ぶ盤だとは思います。が、ジャズを聴き込んだ、中堅以上のレベルのジャズ者の方々にはこの盤は一聴の価値があると思います。意外とこの盤、はまります。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

私にとってジャズ喫茶の最大の収穫といいますと、なによりもジャズを大音量で聴かせてくれた、ということにつきます。

まだCDもなく、自宅でスピーカーを大音量で鳴らす環境も無い時代、自分が所有する同じレコードにこれだけの情報が詰まっていたのか!?という意味でも貴重な経験でした。

ジャズ喫茶の人気盤というのはある意味「集中聴き(大音量なので)」からくる魅力の側面も大きいのではないでしょうか。

私の狭い経験では、都内の有名なジャズライブハウスといえども「生の音はいいなあ」と思ったことはほぼ皆無です。(~_~;)

その点クラシックのホールで聞く生演奏は、アマチュアの演奏でもホールトーンのすばらしさもあり、家では決して味わえない音響的快感が得られます。

私の場合ジャズのライブは「単に生の雰囲気を求めて」であり、クラシックは「ホールトーンを楽しむ」という目的が多いです。

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