サンボーンはライブ盤が一番
デビッド・サンボーンほど、誤解され易いジャズメンはいないだろう。彼のアルバムの音作りは、1975年のデビューなのでフュージョン・ジャズなんだが、フュージョンというよりは、後の「スムース・ジャズ」の先駆け的な音と言った方が合点がいく。
その耳当たりの良い、ちょっとセクシーな音が当時の若者に大受けとなり、1970年代後半から1980年を越えた辺り、サンボーンは大受けにうけた。しかし、彼の音楽の聴かれ方は「ファッション」としての聴かれ方であったり、何かを「しながら」のながら聴きといった聴かれ方であったり、彼の音楽の本質を理解し、その本質を見極めて聴かれる、本来のあるべき「聴かれ方」からはほど遠いものだった。
フュージョン・ジャズとして売れに売れたことから、いきなり「コマーシャルなジャズメン」の烙印を押されたり、フュージョン・ジャズの人気者であるが故、純ジャズ者の方々からは「取るに足らないチープなジャズ」と誤解され、サンボーンの名を聴くだけで、あからさまに嫌な顔をするジャズ者の方々も多かった。
でも、ですね、サンボーンって、テクニック優秀、硬派で素性の確かなアルト・サックス奏者なんですよね。サンボーンのアルトは実によく「鳴る」。ブラスの響きをブルブル言わせて、時に「キュイーン」と絞り上げるような金属音のような吹き上げが見事。ギル・エバンスのマンディ・ナイト・オーケストラにも参加していたり、純ジャズやらせても一流なアルト・サックス奏者なんです。
そんな、テクニック優秀、硬派で素性の確かなアルト・サックス奏者としてのサンボーンを感じさせてくれるライブ盤がある。David Sanborn『Straight to the Heart』(写真左)である。1984年のリリース。主だったパーソネルは以下の通り。David Sanborn (as), Marcus Miller (b), Hiram Bullock (g), Don Grolnick (key), Michael Brecker (ts), Randy Brecker (tp), John Faddis (tp), Buddy Williams (ds), Ralph MacDonald (per)。
バックはフュージョンの優秀どころがズラリ、そして演奏は「絶好調」。そんなバックを従えて、サンボーンはアルトは実に気持ちよさそうに吹き上げる。真のインプロバイザーとしてのサンボーンが実に輝かしい。とにかく、彼のアルトはよく「鳴る」。そして、指がよく「回る」。エモーショナルなアドリブ・フレーズもあれば、語りかける様なアドリブ・フレーズもある。引き出しの多い、バリエーション豊かなフレーズ。
フュージョンというよりは「スムース・ジャズ」の先駆けとして、今の耳で振り返って聴く方が、このアルバムのサンボーンの凄みを感じることが出来る。純ジャズに置き換えても、十分に通用するアルト・サックスのテクニックと歌心は、このライブ盤から思いっきり伝わってくる。
サンボーンのアルバムの中でも白眉の出来。サンボーンのアルバム・コレクションから、このアルバムは外せません。サンボーンのアルトの特徴が良く出ていて、一気に聴き通してしまいます。良いライブ盤です。
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私はジャズメンにはいわゆる「長編作家」と「短編作家」が存在する、と独断ですが思っています。(~_~;)
サンボーンは短編作家で、たとえばフィルウッズが長編作家とか。。
したがってフィルのアルバムはあくまでもワンホーンものが好きですぅ。(~o~)
サンボーンは短いソロにこそキラリとひかりますが、アルバム1枚を聴きとおすことがこれまでなかったので、このアルバムをジックリと聴きなおしてみますです。^^
投稿: おっちゃん | 2016年3月26日 (土曜日) 06時05分