80年代のロリンズを表した好盤
ソニー・ロリンズの聴き直しを再開している。1980年代半ば、ジャズ界は、ウィントン・マルサリスを中心とする「新伝承派」が、純ジャズ復古の大号令をかけて、ネオ・ハードバップ、ネオ・モーダルな演奏を繰り広げつつあった時代。
しかし、我らがロリンズは、そんなジャズ界のトレンドなど「何処吹く風」。今から振り返ると、この1980年代半ば、という時代は、ロリンズにとっては、揺るぎの無いロリンズだけの「永遠のスタイル」を確固たるものにした時代ではなかったか、と思っている。
1987年のロリンズと言えば、Sonny Rollins『Dancing in the Dark』(写真左)。1987年9月の録音になる。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Clifton Anderson (tb), Mark Soskin (p), Jerome Harris (el-b, g), Marvin "Smitty" Smith (ds)。ドラムに、マーヴィン・スミッティ・スミスが座る。
冒頭の「Just Once」のロリンズのテナーを聴くだけで「ああ、ロリンズってええなあ」と心から思ってしまう。フュージョンっぽい、聴き心地の良いポップなバックを従えて、ロリンズは鼻歌を歌うように、大らかにテナーを吹き上げる。しみじみと聴き入ってしまう。
続いて、転がる様に元気で明るいロリンズのオリジナル「O.T.Y.O.G.」。ここでもロリンズは吹きまくる吹きまくる。なんて体力なんだ。3曲目のバラード「Promise」での、ジェローム・ハリスのエレベのソロを聴くと、エレベでのジャズもありやなあ、と思い返す。純ジャズにエレベは合わないのでは無い。エレベにはエレベなりの弾き方があるんやなあ、と感じ入る。
そして、やって来ました十八番のカリプソ。4曲目「Duke Of Iron」はご機嫌で陽気なカリプソ・ジャズ大会。やはり、ロリンズのカリプソは良い。陽気で大らかでダイナミックなカリプソ・ジャズ。ロリンズの面目躍如である。
グループ・サウンドとしては、やはりマーヴィン・スミッティ・スミスのドラミングに新しい雰囲気を感じる。ロリンズの傍らでフロントをとるクリフトン・アンダーソンのトロンボーンが効いている。決して、音的にロリンズのテナーの邪魔をしない、ロリンズのテナーに寄り添う様なユニゾン&ハーモニーは絶品。
マーク・ソスキンのピアノは控えめだが、趣味の良いフレーズでロリンズのテナーにアクセントを付ける。ロリンズのテナーを惹き立てせるピアノ。ピアノ嫌いのロリンズが敢えて採用したソスキンのピアノ。このアルバムのソスキンのピアノを聴けば、その理由が良く判る。
アルバムを通して、大らかで明るくて元気なロリンズのテナーが印象的な好盤です。ジャズ盤の紹介本でも、ロリンズ盤の紹介本でも、あまりクローズアップされないアルバムなんですが、どうしてどうして、グループ・サウンドとしても充実していて、1980年代のロリンズを良く表した好盤だと思います。
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