こんなアルバムあったんや・58
ジャズ盤の紹介本やジャズ雑誌の特集などには、まず載ることは無いのだが、聴いてて心地良く、知らず知らずのうちに繰り返し聴く様になってしまうアルバムというものがある。
そう言えば、このアルバムもそうである。このアルバムは録音時のエピソードが面白くて、そのエピソードの印象から購入に至ったものである。得てしてこういうアルバムが、「聴いてて心地良く、知らず知らずのうちに繰り返し聴く様になってしまう」アルバムになっていったりするのだ。
Gene Ammons『Hi Fidelity Jam Session』(写真左)。1956年4月23日の録音。パーソネルは、Jackie McLean (as), Addison Farmer (b), Arthur Taylor (ds), Duke Jordan (p), Gene Ammons (ts), Art Farmer (tp)。パーソネルを見渡すと、これはなかなかのメンバーではないか。期待が高まる。
しかし、このアルバムの録音時のエピソードが面白い。録音当日、予定していたピアニストが、他のメンバーを待ちくたびれて帰ってしまい、困ったボブ・ワインストックが無理やりデューク・ジョーダンをスタジオに連れて行きやっとこさ収録したそうで、やっつけ本番が基本の、いかにもプレスティッジらしいエピソードである。
そんなバッタバッタな状態でのジャム・セッションなんだが、これがまあ、心地良い内容なのだ。プレスティッジ・レーベルの録音である。ほとんどリハーサルは無かったはずなんだが、よくまあ、これだけ充実した内容のセッションになるもんだ。ジャズの面白いところである。
まず、アルトのマクリーンが好調。ちょっと目立ち過ぎる位である。良い感じでアドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。そして、ペットのファーマーも好調。柔らかめの中音域を個性に、滑らかに流麗に吹き上げる様は実に見事だ。加えて、ピンチヒッター・ピアニストのジョーダンが良い。そこはかとないファンクネスを振り撒きながら、ブルージーに堅実にフロントのバッキングを勤める。
そして、ジャム・セッションのリーダー格のテナー、ジーン・アモンズが貫禄のブロウを展開する。音数を選びつつ、余裕綽々のブロウを繰り広げる様は、聴いていて実に心地良い。ホンワカしつつもブロウに芯があって、心地良く聴き流しつつも、アドリブ・フレーズの肝の部分をガッツリと感じる。そんなアモンズが実に良い。
ほんと、ジャズメンって、よくまあこういうぶっつけ本番なジャムセッションで、これだけ白熱した、息の合った演奏を繰り広げられるものだ、とほとほと感心する。知らず知らずのうちに繰り返し聴く様になってしまうアルバムの最たる例である。好盤です。
震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« ダイレクト・カッティングの好盤 | トップページ | ナイロン弦のリー・リトナー »
コメント