音楽喫茶『松和』の昼下がり・33
1950年代のハードバップの時代は、ジャズの最も充実した、最も創造的な時代だった。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌などに毎度毎度紹介される定盤意外にも、無名の盤や何の変哲も無いジャケットな盤にも、これは、といった充実した内容のものがゴロゴロしている。
例えば、この、Kenny Dorham And Jackie McLean『Inta Somethin'』(写真左)。ジャケットも平凡と言えば平凡。それでも、ケニー・ドーハムとジャキー・マクリーンの名前が並列で並んでいるところを見れば、この盤はなんだか、もしかしたら、という気分にさせられる。
実際、この盤は、1961年11月、San Francisco の The Jazz Workshopでのライブ音源で、ケニー・ドーハムとジャキー・マクリーンが結成した双頭クインテットが西海岸へ遠征したものを捉えたライブ盤になります。彼らにとっては初めての米国西海岸でのツアーだったらしく、何時になく、演奏に気合いが入っている様子が伝わってくるような、溌剌とした演奏がこのライブ盤に詰まっています。
ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Walter Bishop Jr. (p), Leroy Vinnegar (b), Art Taylor (ds)。ベースに、西海岸のベーシスト、リロイ・ビネガーが入っているので、西海岸に来ての即席クインテットだと思うが、メンバーそれぞれがかなりの実力の持ち主なので、グループ・サウンドとして実に充実した内容になっています。
ケニー・ドーハムのトランペットが良く鳴っています。ドーハムは意外と好不調の波があると睨んでいるのですが、このライブ盤でのドーハムは好調の部類。バックのピアノ・トリオとの相性が良いのでしょうか。好調時のドーハムは、中音域中心に端正で良く鳴るトランペットで、聴いていて心地が良いものです。
マクリーンはアドリブ・フレーズに少しずつ工夫を凝らしている様に聴こえます。マクリーンは常にジャズのトレンドに気を配り、その時代その時代にあったジャズのスタイルにチャレンジしていった「進化のジャズメン」でした。ここでも、従来のアドリブ・フレーズに工夫を凝らして、マンネリに陥らないよう努力している風です。モーダルなフレーズが見え隠れするところが実にマクリーンらしい。
バックのリズム・セクションも堅調なバッキングを繰り広げていて好感が持てる。安心してフロントのドーハムとマクリーンが吹き上げているのが伝わってくる。特に、録音機会があまり多く無い、ピアノのウォルター・ビショップ・ジュニアのバッキングの様子は興味深く聴くことが出来る。
何の変哲も無いハードバップのライブ盤なんですが、演奏が結構充実していて、良く聴けばマスターテープに問題があるらしく、音がよれる箇所があるんですが、そんなことも気にならない、聴いて楽しいライブ盤です。
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