ザビヌルのやりたかったこと
もう亡くなって9年にならんとしている。僕の大好きだったキーボード奏者、ジョー・ザビヌル(Joe Zawinul)。オーストリアのウィーン生まれのジャズ・フュージョン・ピアノ・シンセサイザー奏者。伝説の電子ジャズ・バンド、ウエザー・リポート(以降WRと略す)の双頭リーダーの一人。
彼の音楽的志向については、何となく感じていた。WRの4th作『Mysterious Traveller』からである。それまでは、忠実なエレ・マイルスのフォロワーだったWRが、突如、ワールド・ミュージックとの融合のアプローチを選択し始めた。あからさまではないが、このアルバムからザビヌルの音楽的志向が見え隠れする様になる。
つまりは「ザビヌルのやりたかったこと」。ワールド・ミュージックとの融合である。世界各国のワールド・ミュージックと融合しまくりたい。それが「ザビヌルのやりたかったこと」ではなかったか。でも、かたやバンドが売れに売れたい、というのもザビヌルの望み。ザビヌルのそれぞれの「望み」の、双方のバランスを取った、微妙な音表現の結果がWRの各アルバムである。
そんなWRを1986年に解散。自由の身になったザビヌルは、いきなり自分のやりたかったこと、に手を染める。その最初の音楽的成果がこのアルバムになる。Joe Zawinul『Diarects』(写真左)。1986年のリリース。WRを解散してその時にこのソロ・アルバムをリリースしている。
このアルバムの音世界は、明らかにワールド・ミュージックとジャズの融合である。その「融合」をザビヌルがシンセサイザーのぶ厚いユニゾン&ハーモニーで唄い上げていく。WRで培ったぶ厚いユニゾン&ハーモニー。万華鏡の如く、様々なニュアンスを見せる、バリエーション溢れるソロ。
サイドメンはいるにはいるが、ザビヌルの一人舞台である。多重録音の様なザビヌル単独の音表現。様々な地域のワールド・ミュージックの要素をごった煮に融合している。それでいて、しっかりと音が統制されているのは、ザビヌルのワールド・ミュージックの対する造詣とその特質を見抜いた、卓越したアレンジ力の賜だろう。
僕はこのザビヌルの「ワールド・ミュージックとジャズの融合」の音世界が大好きである。このアルバムを初めて聴いた時には喝采の声を上げた。ワールド・ミュージック系の音って大好きなんですよ。ザビヌルのキーボードの音も大好きで、このアルバムの様なアプローチって、僕にとっては「願ったり叶ったり」という訳で(笑)。
あまりにザビヌルのキーボード・ワークとワールド・ミュージック志向が突出しているので、これってジャズなん、ということで賛否両論なアルバムですが、この「ワールド・ミュージックとジャズの融合」も、これまたジャズだよな〜と感じています。僕にとっては「好盤」です。
震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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