« ジャズへのロック・ビートの導入 | トップページ | マーシャル・タッカー・バンド »

2016年2月19日 (金曜日)

ザビヌルのやりたかったこと

もう亡くなって9年にならんとしている。僕の大好きだったキーボード奏者、ジョー・ザビヌル(Joe Zawinul)。オーストリアのウィーン生まれのジャズ・フュージョン・ピアノ・シンセサイザー奏者。伝説の電子ジャズ・バンド、ウエザー・リポート(以降WRと略す)の双頭リーダーの一人。

彼の音楽的志向については、何となく感じていた。WRの4th作『Mysterious Traveller』からである。それまでは、忠実なエレ・マイルスのフォロワーだったWRが、突如、ワールド・ミュージックとの融合のアプローチを選択し始めた。あからさまではないが、このアルバムからザビヌルの音楽的志向が見え隠れする様になる。

つまりは「ザビヌルのやりたかったこと」。ワールド・ミュージックとの融合である。世界各国のワールド・ミュージックと融合しまくりたい。それが「ザビヌルのやりたかったこと」ではなかったか。でも、かたやバンドが売れに売れたい、というのもザビヌルの望み。ザビヌルのそれぞれの「望み」の、双方のバランスを取った、微妙な音表現の結果がWRの各アルバムである。

そんなWRを1986年に解散。自由の身になったザビヌルは、いきなり自分のやりたかったこと、に手を染める。その最初の音楽的成果がこのアルバムになる。Joe Zawinul『Diarects』(写真左)。1986年のリリース。WRを解散してその時にこのソロ・アルバムをリリースしている。
 

Joe_zawinul_diarects

 
このアルバムの音世界は、明らかにワールド・ミュージックとジャズの融合である。その「融合」をザビヌルがシンセサイザーのぶ厚いユニゾン&ハーモニーで唄い上げていく。WRで培ったぶ厚いユニゾン&ハーモニー。万華鏡の如く、様々なニュアンスを見せる、バリエーション溢れるソロ。

サイドメンはいるにはいるが、ザビヌルの一人舞台である。多重録音の様なザビヌル単独の音表現。様々な地域のワールド・ミュージックの要素をごった煮に融合している。それでいて、しっかりと音が統制されているのは、ザビヌルのワールド・ミュージックの対する造詣とその特質を見抜いた、卓越したアレンジ力の賜だろう。

僕はこのザビヌルの「ワールド・ミュージックとジャズの融合」の音世界が大好きである。このアルバムを初めて聴いた時には喝采の声を上げた。ワールド・ミュージック系の音って大好きなんですよ。ザビヌルのキーボードの音も大好きで、このアルバムの様なアプローチって、僕にとっては「願ったり叶ったり」という訳で(笑)。 

あまりにザビヌルのキーボード・ワークとワールド・ミュージック志向が突出しているので、これってジャズなん、ということで賛否両論なアルバムですが、この「ワールド・ミュージックとジャズの融合」も、これまたジャズだよな〜と感じています。僕にとっては「好盤」です。

 
 

震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« ジャズへのロック・ビートの導入 | トップページ | マーシャル・タッカー・バンド »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ザビヌルのやりたかったこと:

« ジャズへのロック・ビートの導入 | トップページ | マーシャル・タッカー・バンド »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー