ジャズへのロック・ビートの導入
ヴァーブのプロデューサーであったクリード・テイラーが1967年に立ち上げた「CTIレーベル」を中心に発展した「クロスオーバー・ジャズ」。実は、クロスオーバー・ジャズにはもう一つの「顔」がある。
エレクトリック楽器をメインに据えた8ビートのジャズ。基本はジャズにおけるロック・ビートの導入なんだが、8ビートのプログレッシブで攻撃的なジャズ。リズム&ビートが命のファンクネス爆裂なジャズ。そう、あのマイルス・デイヴィスが先頭を切って展開した「エレクトリックなメインストリーム・ジャズ」である。
今の耳で振り返ると、ギタリストのジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルなどがその範疇の「クロスオーバー・ジャズ」に当たる。初期のウェザー・リポートの音もそうだ。そうそう、私のお気に入り、若き日のゲイリー・バートンもそう。
そんな「ジャズにおけるロック・ビートの導入」系のクロスオーバー・ジャズが無性に聴きたくなったので、今日はこのアルバムをチョイス。Larry Coryell『Barefoot Boy』(写真左)。1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell (g), Steve Marcus (ss, ts), Lawrence Killian (conga), Roy Haynes (ds), Harry Wilkinson (per), Mervin Bronson (b), Mike Mandel (p)。
初期のコリエルは良いアルバムばかり。典型的な「クロスオーバー・ジャズ」がてんこ盛りである。コリエルはギタリスト。ロック畑では当たり前となっていたフィードバック奏法や派手なチョーキングをジャズに持ち込んで、ジャズにおけるロック・ビートの導入を牽引した。後のフュージョン・ジャズのエレギの世界への端緒を開いた、伝説のギタリストである。
その割には、日本ではあまり評価されないコリエルではあるが、この『Barefoot Boy』の音世界は素晴らしい。これぞクロスオーバー・ジャズ、といった音、その疾走感溢れるアドリブ・フレーズ、その鋭角で攻撃的なリフ、ジャジーな8ビート、どの演奏も充実の内容だ。
特に3曲目の「Call to higher Conscioyness」でのギターソロは圧巻。20分に及ぶ大作で、聴き終えて思わず「ごめんなさい」とひれ伏してしまいそうな、圧倒的な弾きまくり。鋭角で硬派で硬質なゴリゴリなエレギは爽快です。
このアルバムで裏技的に面白いのが、ロイ・ヘインズのドラム。ヘインズのドラムは明らかに純ジャズなドラミングで、どうして、この典型的なクロスオーバー・ジャズのセッションに採用されたのか理解に苦しむのだが、実はこのヘインズのドラミングが味わい深いアクセントになっている。純ジャズなドラミングが8ビートを叩き出す。このアルバムの音世界をしっかりと「ジャズ」に繋ぎ止めている首謀者である。
ロイ・ヘインズのドラミングのお陰で、今の耳で聴くと、この『Barefoot Boy』は意外とメンストリーム・ジャズしているクロスーバー・ジャズな盤として、なかなか楽しく聴き込むことが出来ます。ちなみに録音はNYの「Electric Lady Studios」での収録。そこかしこにジミヘンの影が見え隠れするのは「それ」が原因でしょうか。
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なんとなんと!^^
このアルバムこそ、高校生だった私がはじめて買ったジャズLPでした。^^
当時ロック少年だった私はジャズの世界に興味をもちつつも、いきなり4ビートジャズは何を買えばいいかさえ見当がつかず、まだ小遣いも少なく
片田舎に1軒だけあったレコード屋さんに、清水の舞台からジャンプする?思いで注文しました。笑
コリエルもですが、スティーブマーカスも強烈でしたね。(最近みかけませんが)。
このアルバムの話題が出るなんてうれしい限りであります。(^^♪
投稿: おっちゃん | 2016年2月19日 (金曜日) 05時44分