緑のコニッツと海岸のコニッツ
リー・コニッツの聴き直しをしている。コニッツの出身は「クール・ジャズ」。レニー・トリスターノに師事し、意識的に抑制し、抑制のコード、フレーズを駆使して創造する「クール・ジャズ」。理知的でアーティスティックではあるが、大衆向けで無いことは何となく感じる。
トリスターノ門下生だったコニッツ。何時の頃からか、ホットなアドリブ・フレーズを吹くようになる。ほどよく抑制された「クール・ジャズ」の良いところを残しつつ、その正反対のホットなブロウを織り交ぜて、聴き応えのあるフレーズを展開する。あれれ、クール・ジャズの旗手なコニッツはどこへいったのか。
そんなコニッツの転換点を捉えた好盤が2枚。緑一色のジャケットが印象的な『In Harvard Square』と青一色のジャケットが印象的な『Konitz』。僕は『In Harvard Square』については、ズバリ「緑のコニッツ」と呼んでいる。『Konitz』はよく見ると海岸の写真。こちらはジャズ者の方々が以前から「海岸のコニッツ」と呼んでいる。
まずは「緑のコニッツ」。Lee Konitz『In Harvard Square』(写真左)。2つの録音のカップリング。 リーダーのLee Konitz (as )と Jeff Morton (p) は共通。1954年4月の録音ベースとドラムは、Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)。1955年2月録音のベースとドラムは、 Percy Heath (b), Al Levitt (ds)。ボストンで録音されているので、基本的には米国東海岸ジャズの範疇になる。
一方「海岸のコニッツ」。Lee Konitz『Konitz』(写真右)。パーソネルは、Lee Konitz (as), Ronnie Ball (p), Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)。1954年4月の録音。「緑のコニッツ」と比べると、ピアノがロニー・ベルに代わっているが、基本的な演奏の雰囲気は同じ傾向。
この頃のコニッツは「ハードバップな」ホットでテクニック溢れるアドリブ・フレーズと、もともとトリスターノ門下生だった頃の「クール・ジャズな」抑制されたアドリブ・フレーズを上手くミックスして、簡潔な表現美を聴かせてくれる。演奏の基本はホットでポップなところにあって、クール・ジャズはアクセント付けに上手くあしらっている感じ。
このホットとクールのバランスが実に良いのだ。トリスターノの難解なクール・ジャズが、ホットなハードバップな演奏の対比で、良い感じのカウンター・アクセントになっているのだ。これって、コニッツ、してやったりな気分、ではなかったか。それほどに、この「緑のコニッツ」と「海岸のコニッツ」は聴き味が良い。
ハードバップな、鑑賞音楽として十分に耐えるコニッツの「ホット&クール」。寛ぎのフレーズ、ウォームなフレーズ満載の中に、アクセント良く「クール・ジャズ」なフレーズが忍び込む。この2枚のアルバムを聴いていると「ああジャズってええなあ」と心から思える、そんなリラックスしてジャズを心から楽しめる好盤の2枚です。
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