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2016年2月の記事

2016年2月29日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・31

決して、ジャズの入門盤やジャズの歴史的名盤に名を連ねることは無い。それでも、聴けばとってもジャズを感じて、ついつい聴き耳を立てながら、身体でオフビートのリズムをこっそりと取ってみたりする。そんなジャズを感じさせてくれる、聴いて楽しいアルバムは沢山ある。

例えば、このKenny Burrellの『All Day Long』(写真左)と『All Night Long』(写真右)。このアルバム2枚は、ジャズの名盤の類でも無ければ、ジャズ者初心者向けの入門盤でも無い。どちらかと言えば、このアルバムに詰まっている「ジャズ」を楽しむことが出来る様になったジャズ者中級から上級者向け。

まずは、Kenny Burrell『All Day Long』。1957年1月4日の録音。プレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション形式の一発録りである。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Tommy Flanagan (p), Donald Byrd (tp), Frank Foster (ts), Arthur Taylor (ds), Doug Watkins (b)。フロントがギター、トランペット、テナーの六重奏団編成。

お次の、Kenny Burrell『All Night Long』。1956年12月28日の録音。こちらもプレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション形式の一発録り。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Donald Byrd (tp), Hank Mobley (ts), Jerome Richardson (ts, fl), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。こちらはフロントがギター、トランペット、テナー、フルートの七重奏団編成。

『All Day Long』と『All Night Long』とはたった1週間しか違わない録音。内容としてはどちらも同じ雰囲気で、この2枚は兄弟盤と言っても良い。典型的なハードバップな演奏。ジャム・セッション形式の一発録りなのでアレンジも展開もシンプル。アーティスティックな面でちょっと割を食うが、演奏の内容は一流。面白いのは、どちらもドラムとベースとトランペットは変わらないこと。
 

All_day_long_all_night_long

 
『All Day Long』は、ほのぼのとした雰囲気が漂う、ちょっとダルなハードバップが良い。フラガナンのピアノが典雅で、演奏全体にほんのりと気品が漂う。バードのトランペットがやけに元気。フランク・フォスターのテナーがほのぼのしていて、アルバム全体の雰囲気決めに貢献している。

逆に『All Night Long』は、切れ味の良い活発な雰囲気が気持ち良いハードバップ。バードのトランペットはここでも元気。ハンク・モブレーの元気一杯のテナーは珍しい。ジェローム・リチャードソンのフルートが効いている。こちらはマル・ウォルドロンのピアノが切れ味良く、アルバム全体の雰囲気決めに貢献している。

『All Day Long』も『All Night Long』も、ジャズの楽しさを体感できる好盤です。聴いていてとにかく心地良い。リズム隊もノリノリで、ちょっとラフなオフビートはスイング感抜群。一発勝負のジャム・セッションの割にテクニックも優秀で、ミスや破綻がほとんど無いのもこの2枚の良さ。

ジャズ喫茶の昼下がり、食後の珈琲を飲みながら耳を傾けるのにピッタリな好盤の2枚です。そして、アドリブを聴きながら、身体でオフビートのリズムをこっそりと取りつつ、昼ご飯で満たされた満腹感も手伝って、ついつい「微睡み」の中へ。そんな「微睡み」を誘う心地良いリズム&ビートが魅力です。

そんなちょっとダルで適度な緩みが心地良い、意外と内容のあるジャム・セッションの記録。ジャズの入門盤やジャズの歴史的名盤に名を連ねることは無い。それでも、聴けばとってもジャズを感じて、ついつい聴き耳を立てながら、身体でオフビートのリズムをこっそりと取ってみたりする。そんなジャズを感じさせてくれる、聴いて楽しいアルバムである。

 
 

震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2016年2月28日 (日曜日)

70年代イエスの音「ABWH」

日曜日のブログは「ジャズの合間の耳休め」。今日はプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)の話題を。ロックというジャンルにとらわれることなく、他ジャンルの影響をも反映した、前衛的あるいは先進的(プログレッシブ)かつ実験的なロックの総称。1970年代に一世を風靡し、現代においてもスタイルの拡散・細分化が進んでいる。

ジャズ者になる前、高校生時代の前半は完璧な「プログレ小僧」だった私こと松和のマスター。ジャズ者になってからも、インスト中心のプログレは「ジャズの合間の耳休め」に最適。21世紀になってからは、プログレ好盤の大人買いを進め、まずまずのコレクションになった。

今回、気になっているブツがあって、どうしようかな、と悩んでいたのだが、遂に入手するに至り、このブツの入手が切っ掛けとなって、伝説のプログレバンド「イエス」のアルバムを聴き直すことになってしまっている。まあ、意外と「イエス」がお気に入りなので、懐かしみながら楽しみながらの聴き直しである。

そんな聴き直しの中、かなり久し振りに聴いて感心したアルバムがある。『Anderson Bruford Wakeman Howe』(写真)。4人の主要メンバーのセカンド・ネームを羅列しただけのバンド名をそのままアルバム名にした、やっつけ感満載のプログレ盤である。1989年のリリース。邦題は『閃光』。邦題の真に意味するところは未だに不明である(笑)。

この羅列された4人の主要メンバーのセカンド・ネームを見れば「ああ、これはイエスのメンバーが集まって作ったアルバムなんや」と直ぐに判る。Wikipediaによると以下の様な結成経緯を経たバンドだということが判る。

「1980年代、イエス再結成後の活動に於いて、新メンバー、トレヴァー・ラビン(g, vo, key)のイニシアティヴによってコマーシャル化していったことに幻滅したジョン・アンダーソン(vo)が、1988年にイエスを脱退し、『こわれもの』や『危機』を発表した頃のような、1970年代にあった創造性を蘇らせようと当時のメンツを呼び寄せて結成したバンドである。略称はABWH。」
 

Anderson_bruford_wakeman_howe

 
確かにその通りで、この『Anderson Bruford Wakeman Howe』に詰まっている音世界は、1970年代のイエスの音世界を踏襲している。が、1989年の録音である。録音環境はデジタルに移行しているので、アルバムに収録されている音は明らかにデジタルっぽい。音の雰囲気は明らかに「70年代イエス」なので、録音の音の雰囲気にも凝って欲しかったなあ、というのが本音。

主要メンバー4人、「70年代イエス」は5人。あれ、誰がいないのか、と見渡して見ると、ベースのクリス・スクワイアがいません。ということで、この『Anderson Bruford Wakeman Howe』を聴いて、これが「70年代イエス」の音だよ、と言われて、何かが足らないなあ、と思う貴方は完璧な「イエス者」です。確かに、あの太いブンブン・エレベの音が無いので、これが実に物足りない(笑)。

加えて、7曲目の「Teakbois」だけは、ちょっとなあ、という雰囲気な楽曲で惜しい。「ワールド・ミュージック」へのアプローチと捉えれば聞こえが良いのですが、この楽曲の冒頭のカリブ音楽のリズムやサウンド、さらに3分前後からのどことなく、60年代モータウン風のコーラス、5分前後のラテン音楽風のコーラスなど、「70年代イエス」の音世界とは全く無縁というか、このアルバムで唯一の「大いなる違和感」を感じるトラックです。

7曲目の「Teakbois」を除けば、「70年代イエス」の再現と言っても良いとは思いますが、この楽曲だけはどうにも、いつ聴いても「ひき」ます(笑)。それでも、この『Anderson Bruford Wakeman Howe』は、「70年代イエス」の音世界の再現としては、まずまずの出来でしょう。往年の「イエス者」の方々も概ね良好な評価に落ちついています。

アルバム・ジャケットもロジャー・ディーンのイラストが復活していて、往年のイエス者からすれば嬉しい限りのアルバムです。でも、この「Anderson Bruford Wakeman Howe」というバンドもこの一枚で終わり。本当に、お家騒動の好きなイエスのメンバー達ではあります。

 
 

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2016年2月26日 (金曜日)

単純に「ジャズってええなあ」

こういうジャズを聴くと、単純に「ジャズってええなあ」と思う。雰囲気が良い。ほのぼのとした4ビート。ほどよく趣味良くアレンジされたユニゾン&ハーモニー。米国西海岸ジャズは聴き心地が良い。

Stan Getz『West Coast Jazz』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。米国西海岸ジャズのメイン・ジャズメンがズラリと名を連ねる。

リーダーはスタン・ゲッツ。テナーマンである。ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ。流れる様な典雅で爽やかなフレーズ。1950年代のゲッツのテナーは聴き心地が良い。1960年代にはボサノバ・ブームに乗って、大人気テナーマンとなって引っ張りだこ。

1970年代は改めて純ジャズに回帰するが、ゲッツの従来のスタイルが再評価されるのは、1980年代の純ジャズ復古の時代になってから。純ジャズ復古の波に乗って、スタン・ゲッツ再評価と相成ったが、ゲッツのブロウは意外と力強く、テクニック溢れるものになっていく。1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」に戻ることは無かった。そして、そうこうしているうちに、肝臓癌にて1991年、鬼籍に入ってしまう。
 

West_coast_jazz

 
1980年代から1991年、鬼籍に入るまでの、ストレート・アヘッドなゲッツのテナーも良いが、僕は、1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」なゲッツが大好きだ。当然、ボサノバにも染まっていない。純粋に、1950年代米国西海岸ジャズの雰囲気が凄く良い。

さて、このStan Getz『West Coast Jazz』を聴けば、ゲッツのテナーの全てが判る。フレーズ、アドリブ、どれをとっても天才的で、ゲッツは希有の「天才的インプロヴァイザー」ということがとても良く判る。収録曲もスタンダード曲が中心で、このスタンダード曲をベースに、様々なニュアンスのアドリブ・ラインが繰り出てくるところなんざあ、ほんと天才的です。

力まずにサラリと速く、魅力的なフレーズを吹くゲッツ。コンテ・カンドリのクールなトランペットは、ゲッツのテナーとの相性が抜群。ルー・レヴィの明るく歯切れの良い、雰囲気のあるピアノ。リロイ・ヴィネガーの太くて軽妙なベース。そして、リラックスしたクールなドラミングが見事なシェリー・マン。これぞ「米国西海岸ジャズ」な演奏です。

思わず聴き惚れてしまう。朝一番に聴くジャズにも良し。昼下がりのジャズ喫茶でほのぼのと聴くも良し。ほんと、良い雰囲気の「メインストリームなジャズ」。米国西海岸ジャズの個性である「アレンジの威力」はそこそこに、ゲッツのアドリブの実力と魅力が再認識できる盤。好盤です。

 
 

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2016年2月25日 (木曜日)

緑のコニッツと海岸のコニッツ

リー・コニッツの聴き直しをしている。コニッツの出身は「クール・ジャズ」。レニー・トリスターノに師事し、意識的に抑制し、抑制のコード、フレーズを駆使して創造する「クール・ジャズ」。理知的でアーティスティックではあるが、大衆向けで無いことは何となく感じる。

トリスターノ門下生だったコニッツ。何時の頃からか、ホットなアドリブ・フレーズを吹くようになる。ほどよく抑制された「クール・ジャズ」の良いところを残しつつ、その正反対のホットなブロウを織り交ぜて、聴き応えのあるフレーズを展開する。あれれ、クール・ジャズの旗手なコニッツはどこへいったのか。

そんなコニッツの転換点を捉えた好盤が2枚。緑一色のジャケットが印象的な『In Harvard Square』と青一色のジャケットが印象的な『Konitz』。僕は『In Harvard Square』については、ズバリ「緑のコニッツ」と呼んでいる。『Konitz』はよく見ると海岸の写真。こちらはジャズ者の方々が以前から「海岸のコニッツ」と呼んでいる。

まずは「緑のコニッツ」。Lee Konitz『In Harvard Square』(写真左)。2つの録音のカップリング。 リーダーのLee Konitz (as )と Jeff Morton (p) は共通。1954年4月の録音ベースとドラムは、Peter Ind (b),  Jeff Morton (ds)。1955年2月録音のベースとドラムは、 Percy Heath (b),  Al Levitt (ds)。ボストンで録音されているので、基本的には米国東海岸ジャズの範疇になる。
 

In_harvard_square_konitz

 
一方「海岸のコニッツ」。Lee Konitz『Konitz』(写真右)。パーソネルは、Lee Konitz (as), Ronnie Ball (p), Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)。1954年4月の録音。「緑のコニッツ」と比べると、ピアノがロニー・ベルに代わっているが、基本的な演奏の雰囲気は同じ傾向。

この頃のコニッツは「ハードバップな」ホットでテクニック溢れるアドリブ・フレーズと、もともとトリスターノ門下生だった頃の「クール・ジャズな」抑制されたアドリブ・フレーズを上手くミックスして、簡潔な表現美を聴かせてくれる。演奏の基本はホットでポップなところにあって、クール・ジャズはアクセント付けに上手くあしらっている感じ。

このホットとクールのバランスが実に良いのだ。トリスターノの難解なクール・ジャズが、ホットなハードバップな演奏の対比で、良い感じのカウンター・アクセントになっているのだ。これって、コニッツ、してやったりな気分、ではなかったか。それほどに、この「緑のコニッツ」と「海岸のコニッツ」は聴き味が良い。

ハードバップな、鑑賞音楽として十分に耐えるコニッツの「ホット&クール」。寛ぎのフレーズ、ウォームなフレーズ満載の中に、アクセント良く「クール・ジャズ」なフレーズが忍び込む。この2枚のアルバムを聴いていると「ああジャズってええなあ」と心から思える、そんなリラックスしてジャズを心から楽しめる好盤の2枚です。

 
 

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2016年2月24日 (水曜日)

コンテンポラリーな純ジャズ

ヴァイブのマイク・マイニエリが「思いついた」グループ「ステップス(Steps)」。フュージョン・ジャズ全盛期、新鮮に響いた4ビート・ジャズ。

縦に揺れるスクエアな均等レベルの4ビートが印象的で、1980年初頭にして「コンテンポラリーな純ジャズ」。それでも困ったことに、メンバーの面子から、なぜか世間からは「アコースティックなフュージョン・ジャズ」の範疇として語られる。

1982年に「ステップス(Steps)」という名称がノース・カロライナ州のあるバンドによって商標登録されていることがわかり、それゆえバンドの名前を「ステップス・アヘッド(Steps Ahead)」に変えた。その新しい名前を冠したアルバムを1983年にリリースする。

『Steps Ahead』(写真左)。「ステップス(Steps)」から「ステップス・アヘッド(Steps Ahead)にバンド名を変えて、メンバーも少し変わった。Michael Brecker (ts), Mike Mainieri (vib), Eliane Elias (p), Eddie Gómez (b), Peter Erskine (ds)。ジャケットは男性4人が眠れる美女を抱えて運んでいる絵。新しいパーソネルをイメージする。
 

Steps_ahead

 
ピアノとドラムが代わった。簡単に言うと、縦に揺れるスクエアな均等レベルの4ビートが、アーシーでクロスオーバーでコンテンポラリーなドラミングに代わった。ピアノが、さらにリリカルに耽美的になり、しなやかさ躍動感が加わった。旧来の粘りのあるファンクネス溢れるオフビートでは無い、デジタルチックな水平で端正なオフビートが新しい。

久し振りに聴いてみて、やはり、マイケル・ブレッカーのテナーが素晴らしい。マイニエリも何時になく、熱くヴァイブを弾きまくる。マイニエリのヴァイブを 感じるにも良い盤である。二人のフロントの奏でるアドリブ・ラインは新しい響きに満ちている。そして、イリアーヌのピアノの音もこれまた新鮮。

アコースティックな楽器の響きが良い。それでいて、1950年代から1960年代の旧来のジャズの響きは全く無い。クールでアーバンな響きが新しい。クロスオーバー・ジャズの範疇か、と思われる向きもあるが、そうでは無い。明らかに、この『Steps Ahead』に詰まった音は「コンテンポラリーな純ジャズ」。良いアルバムです。

 
 

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2016年2月23日 (火曜日)

狭間美帆『Time River』が良い

最近、日本人ジャズの新作で優秀なアルバムが多い。従来より、もともと日本人ジャズってレベルが高い。しかし、ジャズは米国の音楽だから、米国人のジャズが1番だ、などという的外れな評価がまかり通ったことも事実。内容は優秀でも、セールス的に苦戦したのが、日本人ジャズのアルバムの歴史である。

しかし、最近、その様相も変わってきたように思う。確信は持てないのだが、日本ではジャズが市民権を得てきた様に思えるのだ。鑑賞用のポップ・ミュージックとして、意外とセールスが上がってきているのではないだろうか。いろいろなお店でもBGMでジャズがかかっている場面が増えている。

さて、昨年の9月のリリースでまだまだ新作の部類だろう、優秀なアルバムがリリースされている。狭間美帆『Time River』(写真左)である。レコード会社の触れ込みは、「出光音楽賞を受賞のジャズ作曲家・挾間美帆、13人編成の"m_unit"による待望のセカンド・アルバム」。

狭間美帆とは。1986年生まれ。2009年、国立音楽大学作曲専攻卒業。2010年、ジャズ・コンポジションを学ぶためニューヨークに留学。2011年、ASCAP ヤングジャズコンポーザーアワード受賞。2012年、マンハッタン音楽院大学院を卒業、2012年11月には「ジャズ作曲家」としてデビュー・アルバム『Journey To Journey』をリリース。
 

Miho_hazama_time_rever

 
さて、この狭間美帆の新作『Time River』である。内容充実、聴き応え満点。いや〜聴き始めて、思わず一気に聴き通してしまいました。音的には13人編成ではあるが、ジャズ・オーケストラのアレンジと音世界。音の重ね方が斬新で、インプロビゼーションの展開は、ソロイストに自由度を与えた、硬軟自在な展開。思わず、ギル・エバンスを想起する。

じっくりと聴き耳を立てていると、木管、金管、弦、ヴィブラフォンが極上のユニゾン&ハーモニーを奏で、躍動的でタイトなリズム・セクションがフロントの管楽器を鼓舞する。フロントとリズム・セクションが有機的に複雑に絡み合いながら、魅惑的な切れ味の良いアンサンブルを醸し出す。

音の響きは明らかに米国人ジャズのそれとは一線を画する。打楽器の音は、どこかしら中近東風の音色を感じ、緩やかな曲では、水墨画の濃淡の様に霞を持った拡がりを感じる。間を活かした展開もあり、東洋人独特の、日本人独特の音の響きと感性であろう。しかし、その日本人独特の音の響きと感性が「浮く」ことなく、しっかりと純ジャズしているのだから痛快だ。

日本人女性によるジャズ・オーケストラの主宰、指揮は、穐吉敏子さん以来だろう。狭間美帆の場合、このセカンド盤で既に個性が確立されているので、これからの展開が実に楽しみだ。しかしまあ、近い将来が十分に期待出来る、注目の新人女性ジャズ演奏家が現れ出でたもんだ。まだまだジャズは捨てたもんでは無い。

 
 

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2016年2月22日 (月曜日)

縦ノリの新しい4ビート感覚

最近はこのバンドの名前を聞かなくなったなあ。このバンドのアルバムを初めて聴いた時、新しい4ビート・ジャズに出会った感じがした。横乗りのスイングでは無い「縦ノリ」の4ビート。新しい感覚のテナー。お洒落なヴァイブ。タイトで鋼の様なベース。フュージョン感覚のライトで流暢なピアノ。

そのバンドとは「ステップス(Steps)」。リーダー格、ヴァイブのマイク・マイニエリが「思いついた」グループとのこと。Wikiにその経緯が粋な言葉で綴られている。「7番街の南、ニュー・ヨーク市のナイトクラブで、1979年にアルバイトたちによる冒険的な企てとして、ステップスは始まった」。

僕が感じた「新しい4ビート・ジャズ」は、スタジオ音源のセカンド盤とライブ音源のサード盤とで、今でもしっかりと追体験することが出来る。1979年12月リリースの『Step by Step』(写真左)と、1983年リリースの『Paradox』(写真右)。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Steve Gadd (ds), Eddie Gómez (b), Don Grolnick (p), Mike Mainieri (vib)。

パーソネルのいずれも、今ではレジェンドと呼ばれるジャズメンばかりである。テナーのマイケル・ブレッカーは2007年1月に、ピアノのドン・グロルニックは1996年6月に、それぞれ鬼籍に入っている。振り返ってみると、そうか、5人中2人が逝去しているのか。

時代的にはフュージョン・ジャズ全盛期なんだが、そんな中にこのステップスの4ビート・ジャズは新鮮に響いた。とにかく新しい。何が新しいかというと、ガッドとゴメスの叩き出すビート。横に揺れる3連ノリの旧来のスイング感溢れる4ビートではない、縦に揺れるスクエアな均等レベルの4ビートが、今の耳にも新しい感覚を醸し出す。
 

Step_by_step_paradox

 
そして、新しい感覚の2つ目が、テナーのマイケル・ブレッカーの存在。マイケルのテナーの音は当時、実に斬新に響いた。コルトレーンのええとこ取りはしているが、決して、コルトレーンのフォロワーでは無い。テクニカルには吹き上げているが、そのフレーズのそこはかとない大らかさは、どちらかと言えば、ソニー・ロリンズの想起させる。

テクニック優秀、音も大きくストレートに流麗に流れ、歌心溢ればかりに耳に馴染む。そのフレーズのトーンは決して、昔のハードバップのトーンをなぞってはいない。そのトーンは新しい。それまでに聴いたことの無い、ストレートで切れ味の良いメロディアスなトーン。

このマイケル・ブレッカーのテナーが、当時の日本のジャズ雑誌では酷評されていたのだから驚きだ。当時、それだけ新しいトーンのテナーである。従来のそれまでのジャズ・テナーの正反対の音とでも表現したらよいだろうか。今の耳にも確かに新しいトーンに響く。意外と現代の現役ジャズ・テナーにフォロワーが見当たらないのに愕然とする。

今一度、この2枚のアルバムを聴いて欲しい。今のジャズに無い「新しい感覚の4ビート」、新しいトーン、新しいリズム&ビートが聴いて取れる。ネオ・ハードバップの範疇なのだろうが、1950年代から1960年代のハードバップ、モード・ジャズのトーンを踏襲していないところが、このステップスの唯一無二、個性的なところ。

1980年初頭にして、コンテンポラリーな純ジャズ。この後、純ジャズ復古の大号令がかかって、ウィントン・マルサリスを中心とする新伝承派のネオ・ハードバップの波が押し寄せる訳だが、その新伝承派のトーンよりも斬新で色褪せないところが、このステップスの音の凄いところである。思わず「再評価」である。

 
 

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2016年2月21日 (日曜日)

ポール・ブレイのソロ・ピアノ

今年は早々から、様々なジャンルでの有名人、著名人が鬼籍に入っている。ジャズ界でもその動きに呼応する様に、ジャズの歴史に名を残したレジェンド・レベルのジャズメンの逝去が相次いでいる。

今年早々、1月3日に逝去したのが、Paul Bley(ポール・ブレイ)。ビバップ・スタイルからスタートし、フリー・ジャズ、アヴァンギャルドへ音楽性を変遷させながら、独自の耽美的な演奏スタイルを築き、独自の地位を確立したジャズ・ピアニストのレジェンドの一人。享年83歳。

その耽美的なピアノは、僕はジャズを聴き始めた、ジャズ者初心者早々の時期から知っていた。1972年録音のPaul Bley『Open, to Love』(2014年12月5日のブログ参照・左をクリック)は、ジャズ者初心者の頃の愛聴盤である。

おおよそジャズとは異なる、どちらかといえば現代音楽の雰囲気が強い「凛とした」静謐感溢れるソロ・ピアノ盤。ジャズ・ピアノに思わず足でリズムを取ってしまう様なスィング感とか、耳に聴き易い、滑らかで綺麗なコード進行とかキャッチャーなメロディーとかを期待する人は裏切られてしまう確立大です。

しかし、私が初めてこの盤を聴いた時には、この盤のソロ・ピアノには新しいジャズのスタイル、新しいジャズ・ピアノの形を強く感じました。それからというもの、現在まで、パーソネルにポール・ブレイの名前が入ったアルバムは見当たる度に聴いてきました。
 

Alone_again

 
ポール・ブレイのジャズ・ピアノの個性を愛でるには、『Open, to Love』の様なソロ・ピアノが1番相応しい演奏スタイルの様に思えるが、そのポール・ブレイのソロ・ピアノの中で、マスト・アイテム的な内容を誇るアルバムが、Paul Bley『Alone Again』(写真左)。1974年8月、ノルウェーはオスロでの録音。

先にご紹介した『Open, to Love』よりもジャジー、左手のリズム&ビートが明瞭で、この『Alone Again』の方がジャズのソロ・ピアノ盤として聴き易い、親しみ易い内容になっている。奏でられるフレーズも耳に聴き易い、滑らかな響きを持つもので、ブレイのピアノの持つ個性、官能的、かつ耽美的、硬質でクリスタルなタッチが、この『Alone Again』の方が楽しめる。

内容のアカデミック加減は『Open, to Love』、ソロ・ピアノ盤として聴き易い、親しみ易い内容は『Alone Again』。ポール・ブレイのソロ・ピアノの個性を愛でるには、この2枚は必須アイテムでしょう。ジャケットの抽象画もポール・ブレイのソロ・ピアノのイメージと良く合っていて良好です。

しかし、これでまた一人、強烈な個性を持ったジャズ・ピアノのレジェンドを失ったことになります。どんどん寂しくなるなあ。ご冥福をお祈りします。

 
 

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2016年2月20日 (土曜日)

マーシャル・タッカー・バンド

今日は週末にて「ジャズの合間の耳休め」。1970年代ロックのジャンルの一つ、サザン・ロックの話題を。

さて、今を去ること40年前の高校時代、僕はサザン・ロックの洗礼を浴びている。以来、サザン・ロックについては、長年、密かに聴き続けている。サザン・ロックは米国ルーツ・ロックの中でも、米国南部で広まった、ブルース、カントリー、ジャズなどをサウンド基盤としながら、泥臭いワイルドな雰囲気を前面に押し出した音楽性が個性。

一番、有名で僕が1番に愛するバンドが、Allman Brothers Band(略して「オールマンズ」)。そして、僕が2番目に愛し続けているバンドが、The Marshall Tucker Band(略して「MTB」)。彼らはアメリカ南部のサウスカロライナで1971年にバンドを結成、彼らが練習に使っていた「部屋のオーナーの名前」をとって、マーシャル・タッカー・バンドと名付けた、とのこと。

このバンドの音が良い。1973年にオールマンズと同じキャプリコーン・レーベルと契約したMTBは、当然オールマンズの後釜として売り出され、ファースト・アルバムはたちまちゴールド・ディスクとなった(全米29位)。このファースト・アルバムが『The Marshall Tucker Band』(写真左)。南部の雄大な風景を描いたジャケが美しい。

邦題は『キャロライナの朝焼け』。「Can't You See」や「Take The Highway」のヒット曲が楽しい好盤である。音世界は明らかにサザン・ロック。オールマンズよりカントリー色が強くてポップな雰囲気が親しみ易い。ワイルドなギター・サウンドとボーカルを前面に押し出したサウンドはまさにサザン・ロックである。
 

Marshall_tucker_band_1

 
そして、このMTBのバンド・サウンドの魅力を余すことなく伝えてくれたのが、1975年リリースのサード盤の『Where We All Belong』(写真右)。邦題は『アメリカン・ロックの鼓動』。軽快でほのぼのとしたスタジオ録音と大迫力ライブ音源の2枚組。このダブル・アルバムで、MTBの音の個性、バンドの全貌が十分に理解出来ます。

このダブル・アルバムを聴くと、ワイルドなギター・サウンドとボーカルをメインにホーンとフィドルをフューチャー、そして、このバンドの個性のひとつであるジェリー・ユーバンクスによるフルートが加わる、というMTBの音の個性が確立されていることを感じます。

オールマンズにもひけをとらないワイルドなギター・サウンドとボーカル、そして、オールマンズよりも、のんびり、ほのぼのとしたカントリー色が強く、フルートが入っているところが独特の個性。インスト・ナンバーもテクニック優秀、疾走感やワイルド感も素晴らしい。特に「24 Hours at a Time」は14分弱の熱演。フュージョン・ジャズにもひけをとらないアレンジと展開が素敵です。 

オールマンズも良い。レイナード・スキナードも良い。でも、このマーシャル・タッカー・バンドも実に良い。サザン・ロックのマニアには必須のアイテム。なんせ、1970年代当時、日本では全く評価されない存在でしたからね〜。米国ルーツ・ロック好きには是非聴いてもらいたいバンドの一つです。

 
 

震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2016年2月19日 (金曜日)

ザビヌルのやりたかったこと

もう亡くなって9年にならんとしている。僕の大好きだったキーボード奏者、ジョー・ザビヌル(Joe Zawinul)。オーストリアのウィーン生まれのジャズ・フュージョン・ピアノ・シンセサイザー奏者。伝説の電子ジャズ・バンド、ウエザー・リポート(以降WRと略す)の双頭リーダーの一人。

彼の音楽的志向については、何となく感じていた。WRの4th作『Mysterious Traveller』からである。それまでは、忠実なエレ・マイルスのフォロワーだったWRが、突如、ワールド・ミュージックとの融合のアプローチを選択し始めた。あからさまではないが、このアルバムからザビヌルの音楽的志向が見え隠れする様になる。

つまりは「ザビヌルのやりたかったこと」。ワールド・ミュージックとの融合である。世界各国のワールド・ミュージックと融合しまくりたい。それが「ザビヌルのやりたかったこと」ではなかったか。でも、かたやバンドが売れに売れたい、というのもザビヌルの望み。ザビヌルのそれぞれの「望み」の、双方のバランスを取った、微妙な音表現の結果がWRの各アルバムである。

そんなWRを1986年に解散。自由の身になったザビヌルは、いきなり自分のやりたかったこと、に手を染める。その最初の音楽的成果がこのアルバムになる。Joe Zawinul『Diarects』(写真左)。1986年のリリース。WRを解散してその時にこのソロ・アルバムをリリースしている。
 

Joe_zawinul_diarects

 
このアルバムの音世界は、明らかにワールド・ミュージックとジャズの融合である。その「融合」をザビヌルがシンセサイザーのぶ厚いユニゾン&ハーモニーで唄い上げていく。WRで培ったぶ厚いユニゾン&ハーモニー。万華鏡の如く、様々なニュアンスを見せる、バリエーション溢れるソロ。

サイドメンはいるにはいるが、ザビヌルの一人舞台である。多重録音の様なザビヌル単独の音表現。様々な地域のワールド・ミュージックの要素をごった煮に融合している。それでいて、しっかりと音が統制されているのは、ザビヌルのワールド・ミュージックの対する造詣とその特質を見抜いた、卓越したアレンジ力の賜だろう。

僕はこのザビヌルの「ワールド・ミュージックとジャズの融合」の音世界が大好きである。このアルバムを初めて聴いた時には喝采の声を上げた。ワールド・ミュージック系の音って大好きなんですよ。ザビヌルのキーボードの音も大好きで、このアルバムの様なアプローチって、僕にとっては「願ったり叶ったり」という訳で(笑)。 

あまりにザビヌルのキーボード・ワークとワールド・ミュージック志向が突出しているので、これってジャズなん、ということで賛否両論なアルバムですが、この「ワールド・ミュージックとジャズの融合」も、これまたジャズだよな〜と感じています。僕にとっては「好盤」です。

 
 

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2016年2月18日 (木曜日)

ジャズへのロック・ビートの導入

ヴァーブのプロデューサーであったクリード・テイラーが1967年に立ち上げた「CTIレーベル」を中心に発展した「クロスオーバー・ジャズ」。実は、クロスオーバー・ジャズにはもう一つの「顔」がある。

エレクトリック楽器をメインに据えた8ビートのジャズ。基本はジャズにおけるロック・ビートの導入なんだが、8ビートのプログレッシブで攻撃的なジャズ。リズム&ビートが命のファンクネス爆裂なジャズ。そう、あのマイルス・デイヴィスが先頭を切って展開した「エレクトリックなメインストリーム・ジャズ」である。

今の耳で振り返ると、ギタリストのジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルなどがその範疇の「クロスオーバー・ジャズ」に当たる。初期のウェザー・リポートの音もそうだ。そうそう、私のお気に入り、若き日のゲイリー・バートンもそう。

そんな「ジャズにおけるロック・ビートの導入」系のクロスオーバー・ジャズが無性に聴きたくなったので、今日はこのアルバムをチョイス。Larry Coryell『Barefoot Boy』(写真左)。1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell (g), Steve Marcus (ss, ts), Lawrence Killian (conga), Roy Haynes (ds), Harry Wilkinson (per), Mervin Bronson (b), Mike Mandel (p)。

初期のコリエルは良いアルバムばかり。典型的な「クロスオーバー・ジャズ」がてんこ盛りである。コリエルはギタリスト。ロック畑では当たり前となっていたフィードバック奏法や派手なチョーキングをジャズに持ち込んで、ジャズにおけるロック・ビートの導入を牽引した。後のフュージョン・ジャズのエレギの世界への端緒を開いた、伝説のギタリストである。
 

Barefoot_boy

 
その割には、日本ではあまり評価されないコリエルではあるが、この『Barefoot Boy』の音世界は素晴らしい。これぞクロスオーバー・ジャズ、といった音、その疾走感溢れるアドリブ・フレーズ、その鋭角で攻撃的なリフ、ジャジーな8ビート、どの演奏も充実の内容だ。

特に3曲目の「Call to higher Conscioyness」でのギターソロは圧巻。20分に及ぶ大作で、聴き終えて思わず「ごめんなさい」とひれ伏してしまいそうな、圧倒的な弾きまくり。鋭角で硬派で硬質なゴリゴリなエレギは爽快です。 

このアルバムで裏技的に面白いのが、ロイ・ヘインズのドラム。ヘインズのドラムは明らかに純ジャズなドラミングで、どうして、この典型的なクロスオーバー・ジャズのセッションに採用されたのか理解に苦しむのだが、実はこのヘインズのドラミングが味わい深いアクセントになっている。純ジャズなドラミングが8ビートを叩き出す。このアルバムの音世界をしっかりと「ジャズ」に繋ぎ止めている首謀者である。

ロイ・ヘインズのドラミングのお陰で、今の耳で聴くと、この『Barefoot Boy』は意外とメンストリーム・ジャズしているクロスーバー・ジャズな盤として、なかなか楽しく聴き込むことが出来ます。ちなみに録音はNYの「Electric Lady Studios」での収録。そこかしこにジミヘンの影が見え隠れするのは「それ」が原因でしょうか。

 
 

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2016年2月17日 (水曜日)

ベテラン達のクロスオーバー化

1970年代に入ると、商業ロックやポップスの波が大衆の耳を捉え、ジャズはポップスのジャンルの片隅へ片隅へと押しやられていった。時に、1970年当時の純ジャズのトレンドは「フリー・ジャズ」。これでは大衆の耳を取り戻すことは出来ない。

しかし、それではジャズメンは皆、お飯の食い上げである。なんとか食いつないでいく為に、ジャズとロックやポップスの融合を図って、大衆の耳をジャズに繋ぎ止めようとした。そのトレンドが「クロスオーバー・ジャズ」である。

「クロスオーバー・ジャズ」は、ヴァーブのプロデューサーであったクリード・テイラーが1967年に立ち上げた「CTIレーベル」を中心に発展する。ちなみにCTIは「Creed Taylor Issue」の略である。

このCTIレーベルに、当時の有名ベテラン・ジャズメンがこぞって移籍した。電気楽器を交えたジャズとロックの融合ジャズ、クロスオーバー・ジャズに手を染めた訳である。しかし、今の耳で振り返ると、このCTIレーベルの音は意外とジャズに留まっている。

ソフト&メロウなフュージョン・ジャズまではポップに洗練されてはいない、まだまだオフビート濃厚、ファンクネス漂うジャズの感覚がしっかりと残っている。つまり、今の耳で聴き直すと、意外とCTIレーベルのアルバム達は「ジャズ」しているのだ。

例えば、このアルバムなどはその好例だろう。Paul Desmond『Skylark』(写真左)。1973年の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Bob James (p, el-p), Gabor Szabo, Gene Bertoncini (g), George Ricci (cello), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Ralph MacDonald (per), Don Sebesky (arr)。
 

Paul_desmond_skylark

 
パーソネルを見渡せば良く判る。ほとんどが当時の純ジャズのベテラン達ではないか。まず、リーダーがポール・デスモンド。あのデイブ・ブルーベックとの双頭バンドを長年運用してきたベテラン・アルト奏者である。その他、ベースのロン・カーター、ドラムのジャック・デジョネット、パーカッションのラルフ・マクドナルドなど、ベテラン純ジャズメンである。

しかし、演奏される音世界は、クロスオーバーの人、キーボードのボブ・ジェームス、ギターのガボール・ザボ、アレンジのドン・セベスキーを中心に展開されている。明らかに「クロスオーバー・ジャズ」な音世界。このアルバムの音の雰囲気、アレンジの仕掛け、選曲の妙、それぞれが「クロスオーバー・ジャズ」のそれである。

電気楽器がメインに展開される。ビートは8ビート。2曲目の「Romance de Amor」は、映画音楽で有名な「禁じられた遊び」。あの素人でも弾きこなせるギターの大衆曲を生真面目にクロスオーバー・ジャズ化している。この生真面目さが可愛い。ジャズ化には絶対に合わない「禁じられた遊び」だが、本当に生真面目に演奏している。大衆の耳をジャズに繋ぎ止めようとした努力が滲み出ている。

それでも、冒頭の「Take Ten」や「Skylark」などは、現代ジャズから見れば、十分に「メインストリーム・ジャズ」化していて、意外と聴き応えがあって「おっ」と思う。最近、強く思うのだが、CTIレーベルのアルバムって、どれもが意外と聴き応えがあって隅に置けない。最近は結構な頻度でCDプレイヤーのトレイに載っていたりするのだ。

 
 

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2016年2月16日 (火曜日)

ジョンスコ・孤高の変態ジャズ

John Scofield(ジョン・スコフィールド)。愛称、略して「ジョンスコ」。現代ジャズ・ギターのスタイリストの一人と目しているギタリスト。エレギがメインで、その捻れた音色&フレーズは一度聴いたら忘れられないほど個性的なもの。どこかで流れていても、これはジョンスコや、と直ぐに判るほどの個性である。

エレギをメインに捻れに捻れたフレーズを連発する訳だが、意外とその底にファンクネスが漂っているから堪らない。音色は「くすんでいる」。ほどよく「くすんだ」明快な音色は如何なる楽曲でもポジティブに響く。ジョンスコのギターはポジティブ。とても前向きである。

捻れたフレーズを個性に、思いっきりぶっ飛んだコンテンポラリーなジャズから、捻れを適度に押さえて、伝統のオクターブ奏法を織り込みながらのメインストリームなジャズまで、尖った現代的なジャズから伝統的な純ジャズまで、適用力の広さもジョンスコの個性である。

僕は思いっきりぶっ飛んだコンテンポラリーなジャズのジョンスコがお気に入りである。尖って硬派にぶっ飛んで捻れに捻れたジャズ・ギター。決して他に追従を許さない、孤高の「変態ジャズ」。そんなジョンスコが大好きだ。

そんな捻れに捻れた「変態ジャズ」のジョンスコは、リーダー作のジャケット・デザインを見れば直ぐに判る。ジョンスコのアルバムは、その内容についてはジャケット・デザインを見れば容易に想像出来る。恐らく、意識しているのだろう。

例えば、このアルバムなどがその良い例だろう。John Scofield『Überjam』(写真左)。2002年のリリース。まず、この盤のジャケット・デザインを見て欲しい。このジャケットは尋常では無い。
 

Uberjam

 
普通、こういう捻れた「変態デザイン」なジャケットを採用しないだろう。これはジョンスコの、我々聴き手に対するメッセージである。この盤は、尖って硬派にぶっ飛んで捻れに捻れた「変態ジャズ」だよ、と。

で、聴いてみると、なるほど、尖って硬派にぶっ飛んで捻れに捻れた「変態ジャズ」である(笑)。ディストーションした太いエレギの音色が捻れに捻れまくる。ジャケットのイメージ通り、ジャジーで曼荼羅な音世界が展開する。インド音楽とジャズの邂逅。エレギで奏でる東洋音楽と西洋音楽の融合。これも「フュージョン」である。

打ち込みでないベースやドラムが心地良く響き、適度なノリの良さが特徴の「ジャム・バンド系」の音世界。John Medeskiのオルガンのレガシーな響きが効いている。途中4曲目「I Brake 4 Monster Booty」ではラップが出てきたり、で、ほんと、良い意味でアウトに外れて、適度にぶっ飛んでいます。

この盤の音世界って、ジャズ者の皆さんのどれだけが、心から楽しむことが出来るのでしょうか。そんなふとした不安を思いっきり感じる「変態ジャズ」盤です。でもなあ、この尖って硬派にぶっ飛んで捻れに捻れた「変態ジャズ」な風情が良いんだよな〜(笑)。

食べ物に喩えると、くさやの干物、リヴァロ(ウォッシュタイプのチーズ)、シュールストレミング(塩漬けして発酵させたニシンを缶詰にしたもの)などと同じ感じのコンテンポラリー・ジャズですね。捻れに捻れてアウトに外れたフレーズですが、聴けば聴くほどに、その底に潜む、知る人ぞ知る魅力に填まっていく。

マイルス御大が生きていたら、恐らく絶対に要求しそうな、そんなリズム&ビート、そしてアウトなフレーズが満載です。現代ジャズの最前線な音世界でもあります。でもなあ、このアルバム・ジャケットですから、手にとって聴くのに「ちょっと勇気の要る」好盤ですね(笑)。

 
 

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2016年2月15日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・56

ジャズ盤には、どう聴いてもリーダーが目立たなくて、サイドメンが目立ちに目立つ盤がある。それは特にプレスティッジ・レーベル系に多くて、リーダーの名前で辿り着いたら、リーダーはいまいち、サイドメンがいける、という盤が多々有ります。

プレスティッジの場合、ぱぱっとジャズメンを集めて、リハもほとんど無く、一発勝負で録音する。いわゆるジャム・セッションなスタイルの録音が多かったから、リーダーを決める場合、一番年長だからとか、前回は俺やったから今回はお前とか、結構、ええかげんなリーダーの決め方をしていたらしい。

そういう理由で「どう聴いてもリーダーが目立たなくて、サイドメンが目立ちに目立つ盤」が存在するという訳です。例えば、このアルバムなんか、その典型的な例ではないでしょうか。George Wallington『The New York Scene』(写真左)。

1957年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Phil Woods (as), George Wallington (p), Teddy Kotick (b), Nick Stabulas (ds)。 アルトのフィル・ウッズとトランペットのドナルド・バードの双頭フロントというのが珍しい。

このアルバムを聴き通せば絶対に思う。あれ、リーダーって、ピアノのジョージ・ウォーリントンやなかったっけ。それほど、ジョージ・ウォーリントンのピアノは印象に残らない。もともと、ジョージ・ウォーリントンのピアノは強烈な個性が希薄なバップ・ピアノなので、あまり印象に残らないのだが、特にこのアルバムではその傾向が強い。
 

The_new_york_scene

 
では、このアルバムは何が印象に残るのか。それはまず、フィル・ウッズのアルト。ウッズのアルトが溌剌としていて素敵だ。活き活きとバイタルに吹きまくるウッズは良い。そして、そんな鋭角で切れ味良く、ブラスを鳴り響かせるウッズのアルトに触発されてか、このアルバムでのドナルド・バードのトランペットは良い。

とにかく、バードのトランペットが良く鳴っている。これだけ鳴っているバードのトランペットは珍しいのではないかしら。しかも、テクニックも優秀。指がもつれることもなく、速いパッセージでもしっかりとした運指。このアルバムでは、ドナルド・バードのトランペットも聴きものです。

ということで、このジョージ・ウォーリントンのリーダー作は、サイドメンのフィル・ウッズのアルトとドナルド・バードのトランペットを聴くべきアルバムだと言えます。つまり、プレスティッジ・レーベルに良くある「どう聴いてもリーダーが目立たなくて、サイドメンが目立ちに目立つ盤」の一枚です。

そういう意味で、このアルバムは「知る人ぞ知る盤」ではあります。知っている人は知っている。でも、マイナーな存在のアルバムではあります。ジョージ・ウォーリントンのピアノから入るとガッカリする盤で、アルトのフィル・ウッズとトランペットのドナルド・バードの双頭フロントという珍しさから入ると「思わぬ掘り出し物」として愛聴盤となる、不思議な内容のアルバムです。

 
 

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2016年2月14日 (日曜日)

カシオペア『Thunder Live』

1979年にファースト盤、セカンド盤と立て続けにリリースして、我々の度肝を抜いたカシオペア。そのバカテクな演奏力、キャッチャーな曲を提供するソングライティング力、どれを取っても今までに無い実力の高さだった。

が、大学時代、僕の周りにはそのカシオペアの登場に乗りきれないフュージョン者のやからも多くいた。日本人のみで構成された、それもまだまだ実績に乏しい若手ばかりで構成されたバンドの存在自体にどうも乗りきれないらしい。「スタジオ録音のアルバムだけでは判断できへんよな」が彼らの口癖だった。

つまりは、スタジオ録音であれば、何度も録り直しが出来る、編集で良いところばかりを集めることも出来る、酷いことに「吹き替えだって可能やろ」なんてことも言い出す始末。皆、若いくせに頭が硬いにもほどがある(笑)。

そんな頭の硬いやから達を思いっきり黙らせたライブ盤がこれ。CASIOPEA『Thunder Live』(写真左)。1980年4月のリリース。このライブ盤、全6曲の登場は、カシオペアというバンドに疑義を募らせていたフュージョン者の口を塞がせた、痛快な内容のライブ盤である。

ドラムが神保彰に変わった最初のアルバムでもあり、初期カシオペアの代表的なナンバーが勢ぞろいした全6曲。このライブ盤は、とにかく生々しいカシオペアの演奏を体感することが出来る。初期カシオペアの個性、「スリル、スピード、テクニック」というデビュー当時のキャッチコピーさながら、高度な演奏力で押し切っていくような、若さ溢れるポジティブな演奏の数々。
 

Casiopea_thunder_live

 
ネットの評論でも皆一様に「カシオペアのライブ盤の中でもピカイチの名盤。これを聴かずにカシオペアは語れない」と表現していますが、確かにこのライブ盤の内容は凄い。1980年当時、このライブ盤を初めて聴き終えた時、その内容に唖然として言葉が出なかったことを昨日のことの様に覚えています。

このライブ盤を聴いて、そして、このライブ盤でカシオペアが完全にメジャーな存在になった状況を感じながら、カシオペアをデビュー盤からずっと聴き続けてきたことを自慢に思いましたね〜。このライブ盤のリリース当時、いきつけの喫茶店で、ほぼ毎日流してました。カシオペアが我々の仲間内でもメジャーな存在となった瞬間でした。

ちなみに1980年のリリース当時のジャケットは相当酷いデザイン(写真右)。でも懐かしいなあ。1980年のリリース当時、この趣味の悪いジャケットには「ひき」ました。どう考えたらこうなるのか。さすがにこのジャケット・デザインは不評だった様で、現在のジャケットに差し替えられています。

今では何の変哲も無いシンプルで地味なジャケット(写真左)ですが、この地味なジャケットに騙されてはいけません。キャッチーなメロディーの数々も素晴らしい、初期カシオペアの代表的名盤です。これがライブ盤とは驚愕の内容でっせ(笑)。

 
 

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2016年2月13日 (土曜日)

カシオペア『Super Flight』

日本人発のフュージョン・バンドと言えば、まずは「カシオペア」を思い出す。ギターの野呂一生、キーボードの向谷実、ベースの桜井哲夫、ドラムの佐々木隆のドラム,。この4人の繰り出すバカテク+疾走感溢れるフュージョン・ジャズに僕達は狂喜乱舞した。日本人の日本人による日本人の為のフュージョン・ジャズ。カシオペアは当時、僕達のヒーローでしたね〜。

デビュー盤『CASIOPEA』が1979年5月のリリースであったが、その半年後に早々とセカンド盤『Super Flight』(写真左)をリリースしたカシオペア。バカテク疾走のハード路線のデビュー盤に比べて、このセカンド盤は、聴き易くキャッチーなフレーズ満載のメロディアス&ポップ路線のアルバムとなった。

当時、JALの『 アイ・ラブ・ニューヨーク 』キャンペーンCMとのタイアップ・ソングだったスティーヴ・カルメンが作曲した楽曲のカバー「I love New York」を収録したアルバムで、この曲のヒットでフュージョン・ジャズのブームにも乗り、カシオペアはメジャーな存在になりました。

確かにこのスティーヴ・カルメンが作曲した楽曲のカバー「I love New York」のキャッチャーな出来は今でも感心しますが、他の収録曲もかなりの出来で、アルバム全曲聴き応え満載の好盤に仕上がっています。9曲中7曲までが野呂一生の作で、野呂一生のワンマン・バンドな感じがするんですが、それはとんでもない誤解です。
 

Super_flight

 
アルバム収録のどの曲も、メンバーそれぞれの演奏の個性がフィーチャーされていて素晴らしいテンションです。演奏テクニックの高さはファースト盤で証明済み。テクニックばかりでは無い、唄う様にフレーズを弾きまくる様は惚れ惚れします。こんなに日本のジャズ・ミュージシャンって美味かったんや〜、って改めて嬉しくなる様な素晴らしい演奏ばかり。

カシオペアの代表曲「ASAYAKE」が初収録されているところも、このアルバムのハイライトの一つ。この「ASAYAKE」という曲がまた良いんですよね〜。カシオペアの曲って、ジャジーな雰囲気が希薄なところが個性だと思っていて、この「ASAYAKE」って曲など、その良い例です。

日本人にしか書けない、日本人にしか演奏できない、乾いたファンネス、希薄なジャジー感、それでいて、テクニック抜群、歌心満載のフュージョン・ジャズがこのアルバムにてんこ盛りとなっています。1979年のリリースですが、今でも時々聴きたくなる、カシオペアの初期の代表盤の一枚です。

僕はやっぱり、このスティーヴ・カルメンが作曲した楽曲のカバー「I love New York」が好きですね〜。この「I love New York」については、2010年9月4日のブログ(左をクリック)で語っていますので、こちらもご一読下さいね。

 
 

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2016年2月10日 (水曜日)

トロンボーンなジャズを愛でる

トロンボーンの音が好きである。ちょっとのんびりしたような丸みを帯びた音。意外と高い音から低い音までをカバーする幅広い音程。トロンボーン2本以上でのユニゾン&ハーモニーなぞ、ファンクネス濃厚に漂い、耳に柔らかく至福の時である。

そんなトロンボーン、ジャズの世界ではちょっとマイナーな楽器ではある。スライド管を動かして音程をとるので、速いパッセージが苦手。ビ・バップなど、速さとテクニックを誇る向きには、この楽器はちょっと向かない。しかし、どの楽器にも才人というのはいるもので、この難しい楽器をいともたやすく吹きこなす強者もいるのだ。

そんなジャズ・トロンボーンの強者二人が組んだデュオ・グループがある。「J&K」である。J.J.Johnson,とKai Windingという二人のジャズ・トロンボーン奏者がガッチリと組んだグループである。とにかく、この二人のトロンボーンは天才的である。トランペットやサックスの様にトロンボーンを吹き上げる。 

そんなジャズ・トロンボーンのデュオ・グループの先駆け「J&K」 の記念すべき初セッション盤がこれ。J.J.Johnson & Kai Winding『Jay & Kai』(写真左)。1947,1952,1954年と3つの時期の録音を集めたもの。全10曲のうち、1954年の録音によるもので、「J&K」がフロントでデュオ演奏しているのは8曲。残りの2曲はJ.J.とカイが1曲ずつコンボで演奏しています。
 

Jay_kai

 
J.J.Johnsonは1924年生まれなので、1954年を基準とすると30歳。Kai Windingは1922年生まれなので32歳。ジャズでいうとまだまだ若手のレベル。やんちゃで溌剌として尖った、若々しいジャズ・トロンボーンを聴くことが出来ます。

このアルバムを聴き通すと判るんですが、この二人のデュオ・グループ、とってもクオリティが高い。アンサンブルも優秀、アレンジが良いのでしょうね。とにかく天才的なジャズ・トロンボーン奏者が二人、フロントをとって吹きまくるですから、それはそれは、スリリングな展開がそこかしこに現れます。

1947,1952,1954年という、かなり年代物の録音なんですが、さすがサボイ・レーベル、中音域を前面に押し出した、厚みのあるジャジーな音が心地良く、この録音の個性が「J&K」のトロンボーンの音色を惹き立たせています。ライブ感を感じさせてくれる適度なテンションが良いですね。

収録曲を見渡すと、収録されている楽曲はほぼJ.J.の代表的なオリジナルで埋め尽くされていて圧巻です。聴き応え満点。このアルバムは「J&K」のアルバムの中でも上位に位置する好盤だと思います。ジャズ・トロンボーンを感じる入門盤としても良いですね。ジャズ・トロンボーンを愛でたくなると、この盤は必ず登場します。

 
 

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2016年2月 9日 (火曜日)

ウエザーリポートの2016年版

Peter Erskine(ピーター・アースキン)の名は、Weather Report(以降WRと略す)の黄金時代のドラマーとして知った。彼がWRに参加したのは、1978年の『Mr.Gone』から。エネルギッシュで多彩な音、滑らかなチェンジ・オブ・ペースが個性の疾走感と切れ味が素晴らしいドラマーだった。

とにかく、その包容力は素晴らしい。なんせ、キーボードの魔術師、ジョー・ザビヌル。宇宙から来たテナーマン、ウェイン・ショーター。そして、エレベの天才、ジャコ・パストリアス。この途方も無い3人を相手にドラムを叩きまくるのだ。その包容力とタフさは並大抵のものでは無い。

WR解散後はフリーランスなドラマーとして活躍。アースキンは結構器用なドラマーでもあり、ジャズの様々な演奏フォーマットやスタイルで叩くことが出来る。フュージョン、純ジャズ、どちらもOK。どんなフォーマットでもスタイルでも、かなり高度な味のあるドラミングを披露してくれている。僕のお気に入りドラマーの一人でもある。

そんなアースキン、実に魅力的なアルバムをリリースした。そのアルバムとは、Peter Erskine『DR.UM(ドクター・アム)』(写真左)。今月の3日にリリースされた出来たてホヤホヤの新作である。僕のお気に入りドラマーの新作、さっそく聴いてみた。

冒頭の「Lost Page」を聴いて思わず叫ぶ「これってWeather Reportやん」。次の「Hawaii Bathing Suit」を聴いて、やっぱり「これってWeather Reportやん」。その次の「Borges Buenos Aires」を聴いて、結局「これってWeather Reportやん」(笑)。そう、このアルバムのメイン・コンセプトは「ウエザーリポートの2016年版」。WRが甦った様な音世界にワクワクする。
 

Dr_um

 
ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Beasley (key), Janek Gwizdala (el-b), Bob Sheppard (ts), Jeff Parker, Larry Koonse (g), Aaron Serfaty (per), Jack Fletcher (vo)。う〜ん知らん名前ばっかりやなあ。でも、このアルバムのメイン・コンセプトは「ウエザーリポートの2016年版」。参加メンバーのテクニックは相当に高い。

キーボードの音は、まさにジョー・ザビヌルそっくり。これだけザビヌルそっくりを貫けば、それは個性になる。エレベは控えめのジャコ。ドラムのアースキンがリーダーなので、アースキンのバックに回って、アースキンのドラムをしっかりと支える。テナーは目立たない。逆にエレギの存在が印象的。WRって、フロントはやはりエレギの方が良かったか。

このアースキンの新作『DR.UM』は、テナー抜きのWRという印象が強い。ショーターのいないWR。しかし、これがなかなか良い雰囲気なのだ。WRの個性のひとつ、ぶ厚いキーボードのアンサンブルを前面に押し出すには、テナーの音は邪魔だったのかもしれない。そんな思いを持たせてくれる、素晴らしい内容の「ウエザーリポートの2016年版」。

そんなアルバム・コンセプトの中で、アースキンのドラミングは実に素晴らしい。WRの音にはWRの音に合ったドラムの叩き方があるみたいで、このアルバムでのアースキンのドラミングは、まさに「水を得た魚」である。これぞアースキンという、エネルギッシュで多彩な音、滑らかなチェンジ・オブ・ペースが個性の疾走感と切れ味が素晴らしいドラミングを聴かせてくれる。

いやほんとに、このアルバムでのアースキンのドラミングは素晴らしい。アースキンのドラミングの中でも、この『DR.UM』は屈指のアルバムになるだろう。

 
 

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2016年2月 8日 (月曜日)

フェルドマンの初お目見え盤

米国西海岸ジャズは「粋」である。テクニック優秀、ほど良くアレンジされ、心地良いユニゾン&ハーモニー。歌心あって聴き易いテーマの演奏、インプロビゼーションはテクニックを駆使した確かな展開。日本では東海岸のジャズとは違って、意外と阻害されていた。僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、米国西海岸ジャズのアルバムはほどんど見かけなかった。

そんな米国西海岸ジャズが日本の中で復権し始めたのは1980年代前半から。スイング・ジャーナル誌とのタイアップで米国西海岸ジャズのオムニバス盤が出た。それからである。それでも21世紀になった今でも、なかなか日本では米国西海岸ジャズの全貌には光が当たらない。そろそろ、その全貌を明らかにしないといかんと思うんだが如何だろう。

さて、そんな米国西海岸ジャズ、聴き心地が良くて、ハードなジャズの合間に必ず聴きたくなる。例えば、こんなアルバムがそんな存在である。Victor Feldman『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。

この盤のリーダー、ビクター・フェルドマンが面白い存在。フェルドマンは米国出身のジャズメンでは無い。もともとは英国生まれで、ロンドンで活躍したジャズメン。ロンドンで彼の個性は確立され、その後、米国西海岸にやってきた。そういうことで、フェルドマンは米国ジャズの洗礼を受けていない。
 

The_arrival_of_victor_feldman

 
このアルバムを聴けばそれが良く判る。米国のジャズ・ピアニストは、バド・パウエルから何らかの影響を受けているが、フェルドマンのピアノにはその形跡が無い。所謂、ビ・バップな節回しの影響が希薄なのだ。フェルドマンのヴァイブもそうだ。ミルト・ジャクソンの様なアーシーさは無く、どちらかと言えば、ファンクネスが希薄な白人ジャズの雰囲気に通じる。

そんなフェルドマンの歯切れの良いピアノが「米国西海岸ジャズ」である。ファンクネス希薄で切れ味の良いピアノとヴァイブ。ジャズと言うよりはクラシック出身な典雅な雰囲気。そんなピアノとヴァイブが、ほど良くアレンジされた米国西海岸ジャズに乗って展開する。これぞ米国西海岸ジャズと言っても良い雰囲気。

巷ではスコット・ラファロのベースを云々するが、確かに、太っとく鋼のように鳴る彼のベースは、フェルドマンのピアノ&ヴァイブに相対して、良いアクセントにはなっている。が、アルバム全体の雰囲気、これぞ米国西海岸ジャズと言っても良い雰囲気を担っているのはフェルドマンのピアノ&ヴァイブである。ラファロのベースはあくまで「脇役」である。

アルバム・ジャケットを見れば、今まさにフェルドマンがボートで海を渡って米国西海岸に到着しました、という感じのデザインが「お洒落」。英国人フェルドマンが米国西海岸に移り住んでジャズを奏でる。そんなフェルドマンが米国西海岸ジャズに合致した瞬間を捉えた、なかなかに聴き応えのあるアルバムである。

 
 

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2016年2月 7日 (日曜日)

カシオペアのデビュー盤を聴く

1970年代後半、僕がジャズを聴き始めた頃はフュージョン・ジャズの大ブーム。猫も杓子もフュージョン・ジャズ。そんな中、和製フュージョン・ジャズ、つまり日本人ジャズメンによるフュージョン盤も大量生産された。

そんな中で、21世紀の今に生き残る和製フュージョン・バンドが2つある。ひとつはカシオペア、もう一つはT-スクエア。どちらも紆余曲折を経ながらも、今でも現役でバンド活動を続けている。今回、やっとカシオペアの初期の頃のアルバムのコレクションが整ったので、一気に聴き直しを始めた。

まずはやっぱりこの一枚だろう。『CASIOPEA』(写真)。1979年5月に発売された記念すべきカシオペアの1stアルバムである。結構、豪華な録音環境で、ホーン・セクションとして、David Sanborn、Randy Brecker、Michael Breckerらがゲスト参加している。全ての曲は野呂一生の作で固められている。

カシオペアはデビューから現在に至るまで、一貫して「ギター、ベース、キーボード、ドラム」の4人編成(カルテット)で活動。ギターがメインのカルテット構成、これが実に良い。音がシンプルで疾走感溢れ、個々の楽器の音の分離が良い。電気楽器メインとしたフュージョン・ジャズ系バンドの理想系だろう。
 

Casiopea_first  

 
さて、このファースト盤であるが、驚愕の「目眩くテクニック」が目白押し。1979年当時のフュージョン系バンドのファースト盤としては、かなりの完成度の高さを誇ります。とにかく、仕掛けに凝りに凝りまくり、凄まじいテクニックを誇示しまくっている。

当時、この凄まじいテクニックが鼻につくどころか、一聴するだけで驚愕し、こいつらどうなってるんや、と思わずヘビロテになり、改めて「これは凄いバンドが出現した」と唖然としたことを昨日のことの様に覚えている。

冒頭の「タイムリミット」のドラムとホーンセクションのリフを聴くだけでワクワクする。そしていきなり出てくるエレベのソロ。当時、エレベの最高峰とされたジャコ・パストリアスのソロとなんら遜色の無いエレベのソロに驚愕。そして、目眩くテクニックの嵐、弾き倒しまくるエレギに驚喜。趣味の良い、程良く抑制されたキーボードに信頼感を感じて、このバンドが和製なのに思わず疑いを持った。

とにかく全編、懐かしい楽曲ばかり。ジャズ者初心者の頃、大学時代、思いっきり聴きまくった和製フュージョン盤です。今の耳には、内容的に若さが故に未成熟なフュージョン・インストですが、その若さが良い。そして、日本人発の素晴らしいフュージョン・バンドの出現に、当時、思いっきり驚喜乱舞しました。懐かしい想い出です。

 
 

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2016年2月 6日 (土曜日)

キャノンボールのアルトの歌心

キャノンボールって、喧しいだけのアルト・サックスでは無い。陽気な明るい音の中にしっかりと歌心が潜んでいて、その歌心は意外とワンホーンな演奏の時に現れ出でるのだ。加えて、競う必要の無い、競う気にならないパートナーの場合も、しっかりとその歌心が現れ出でる。

これがキャノンボール・アダレイの聴き方のツボだと会得しているが、この聴き方のツボをしっかりと押さえているのが、このアルバムである。『Cannonball Adderley and the Poll-Winners』(写真左)。1961年5月の録音。ハードバップが成熟し、ファンキー・ジャズがブームの時代である。

ちなみにパーソネルが、Cannonball Adderley (as), Wes Montgomery (g), Victor Feldman (p, vib), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)。パーソネルを見た瞬間にあれっと思う。キャノンボールは東海岸中心のジャズメン、ウェス以下、他の4人は西海岸中心のジャズメン。キャノンボールが米国西海岸に巡業に来た時に、たまたま集まったメンバーがこのメンバーだったらしい。

偶然の産物っぽいパーソネルなんだが、アルバムのタイトル通り、当時、ジャズメンの人気投票で常に一位を争うプレーヤー達の競演となっている。キャノンボールからしてみると、自分以外西海岸のメンバーなので、競う必要の無い、競う気にならない。加えて、ホーンはキャノンボール一人、ワンホーンである。
 

The_poll_winners

 
ということは、このアルバムのキャノンボールは良い、ということになる。で、聴いてみると確かに良い。陽気な明るい音の中にしっかりと歌心のある、聴き応え満点のインプロビゼーションを体感することが出来る。西海岸中心のリズム・セクションがバックということもあって、バックの洒落たアンサンブルに合わせて、程良く抑制されたブロウも実に好ましい。

西海岸のメンバーも実に良い音を出している。ギターのウエスは弾きまくり。キャノンボールを惹き立てる為にバッキングに回ることが多い役回りに徹しているが、このバッキングについてもウエスは聴き応え満点。しっかり弾きしっかり唄う。意外とバックに回ったウエスも隅に置けないことが良く判る。

ピアノ兼ヴァイブのフェルドマンも趣味が良く、小粋なフレーズには思わず口元が緩む。そして、何と言っても、バッキングに回って、このアルバムの演奏全体の底を支え、ジャジーなリズム&ビートを供給する、ベースのブラウンとドラムのヘインズが素晴らしい。重心の低い、タイトで躍動的なベース&ドラムが、このアルバムに詰まった演奏を上手く支え、上手く鼓舞している。

良いアルバムです。そう言えば、映画「スイング・ガールズ」で、竹中直人扮する小澤先生が、このアルバムについて熱く語るシーンがありましたね。このアルバムって、結構、マニアックな存在で、この映画の関係者ってちゃんとジャズを判ってるなあ、と妙に感心したことを思い出しました。

 
 

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2016年2月 5日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・76

米国西海岸ジャズって、やっぱり良いなあ。適度にアレンジされたハードバップ。ユニゾン&ハーモニーが小粋で美しく、インプロビゼーションもほど良くコントロールされ、決して、過度に熱くならない。「聴くジャズ」として十分に通用する内容に惚れ惚れする。

ということで、米国西海岸ジャズである。1950年代後半が米国西海岸ジャズが一番充実していた時代。この頃、米国西海岸ジャズといえば「コンテンポラリー・レーベル」だろう。コンテンポラリー・レーベルは米国西海岸ジャズの看板レーベル。コンテンポラリー・レーベルには、米国西海岸ジャズの良いところが沢山詰まっている。

例えば、このアルバムなんかどうだろう。Hampton Hawes『For Real!』(写真左)。1958年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Hampton Hawes (p), Harold Land (ts), Scott LaFaro (b), Frank Butler (ds)。早逝の天才ベーシスト、スコット・ラファロの名前が目を惹く。

ハンプトン・ホーズのピアノと言えば、オフビート感覚でもったりとした粘りがあって、跳ねるような弾くようなピアノが特徴。いわゆる「ビ・バップ」なピアノである。スタイルとしては、パウエル派の流れにある。が、この盤では、ハードバップの後期、新主流派に繋がる「思索的な響きとフレーズ」が見え隠れして、この盤でのホーズはなかなかに味わい深い。
 

For_real

 
スコット・ラファロのベースは太くて硬質。鋼の様にブンブン響くラファロのベースは、このアルバムの良きアクセント。この盤でのラファロは驚愕のテクニックを駆使した弾きまくりなベースでは無い。あくまで、演奏の底を支え、ビートを司るリズム・セクションとしてのベース。ピアノがバップなホーズなので、得意のインタープレイは棚上げである。

そして、この盤、意外とテナーのハロルド・ランドが良い。この盤でのランドは、アドリブ・フレーズにメリハリが付いて明確。ぼんやりとぼやけたところがない、ストレートで切れ味の良いテナー。こんなランドを聴ける盤ってなかなか無い。ランドって「吹ける」テナーマンやったんや、と改めて感心する。

フランク・バスターのドラムは他の3人ほどの個性は無く、淡々とリズムを刻む。大向こう張る派手さは無いが、これはこれで落ち着いていて「及第点」。出過ぎず、引っ込み過ぎず、趣味の良いポジションのドラムではある。

米国西海岸ジャズの歴史を揺るがす盤では無いのですが、聴けば聴くほどに味わいが出てくる好盤です。米国西海岸ジャズの良いところがギッシリと詰まったアルバムで、ジャズ喫茶にて、さりげなく「流し続ける」に最適な盤だと思います。

 
 

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2016年2月 4日 (木曜日)

英国のクロスオーバーは面白い

ジャズはジャズばっかり聴いていても良く判らないところがある。そういう時は他の音楽ジャンルに「即興性」を重視した演奏が無いかどうかを探索すれば良い。他のジャンルの「即興性」を重視した演奏を聴くと、逆に「即興性」を重視したジャズが明確なスタイルを持って見えてくる。

ジャズは米国が起源の音楽である。即興演奏が特徴の一つ。加えて、他の音楽ジャンルとの融合が柔軟に出来るところが特徴の二つ目。1970年代は、ジャズとロックの融合が流行った。クロスオーバー・ジャズである。このクロスオーバー・ジャズって、米国では明確にジャズのトレンドなんだが、欧州、特に英国ではその境界線が実に曖昧である。

このクロスオーバー・ジャズという演奏トレンドを見てみると、英国ではジャズとロックの棲み分けが実に曖昧。というか、棲み分けが無い。ロック・ミュージシャンがジャズもやるし、ジャズ・ミュージシャンがロックをやる、ということが多々見受けられる。つまり、英国の場合、ジャズから聴き耳を立てるだけでは駄目で、ロックから聴き耳を立てることも必要になる。

例えば、ここにエレクトリックなインスト中心のアルバムがある。Brian Eno『Another Green World』(写真左)。1975年リリース。元Roxy Musicのブライアン・イーノのソロ3作目。聴いてみると直ぐに判るのだが、アンビエント志向の強い、クロスオーバーな音楽である。
 

Another_green_world

 
冒頭の「Sky Saw」を聴けば、このアルバムのクロスオーバーっぽさが良く理解出来る。ノコギリで引き切るような、荒々しく激しく歪んだギター音がで始まる実験的な曲。ビートが後のテクノっぽく、従来のロックやジャズのリズム&ビートでは無い。即興性の雰囲気の色濃い演奏で、ボーカルも入るが、このボーカルですら楽器的な響きを宿していて実にクロスオーバーっぽい。

ボーカル入りのポップな曲はフュージョンっぽくもあるし、リズム&ビートの乗った楽曲は明らかにクロスオーバーっぽいエレクトリック・ミュージックだし、リズム&ビートが無い楽曲は明らかにクロスオーバーっぽいアンビエント・ミュージックである。

つまりは「ロックっぽくもあればジャズっぽくもあるエレクトリック・ミュージック」。ジャズとロックの棲み分けが実に曖昧な英国ならではの音楽的成果である。ただし、このアルバムの為にスタジオに集結したミュージシャンは英国ロック畑からの参入がほとんど。ロックが創るクロスオーバー・ミュージックである。

実にアートしていて、実にロックっぽく、実にジャズっぽい。英国には、こういうジャンル不明の即興性重視のエレクトリック・ミュージックが存在するのだ。英国のクロスオーバー・ミュージックは面白い。

 
 

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2016年2月 3日 (水曜日)

ジャズ・トロンボーンを愛でよう

Michael Davis(マイケル・ディヴィス)。米国はカルフォルニア、サンノゼ出身のジャズ・トロンボーン奏者。1961年生まれなので、今年で55歳、僕達と同世代になる。結構なキャリアの持ち主で、著名なアーティストのツアーや録音を数多く経験しています。しかし、日本では全くと言って良いほど、名前を知られていません。

実は僕もそうでした。ひょんなことから、このアルバムを聴いて、これは素晴らしいトロンボーン奏者やなあ、と感心しました。そのアルバムとは、Michael Davis『Absolute Trombone』(写真左)。1997年の録音。一流のジャズ・トロンボーン奏者18名が集結した、何とも豪華なアルバム。

編成は18人ですが、4重奏から10重奏、リズム・セクション有りから無しまで、様々なパターンで、トロンボーンの音色、トロンボーンの雰囲気、トロンボーンの個性が心ゆくまで楽しめるアルバムです。収録されたどの曲もアレンジが秀逸で、トロンボーンの音の幅、高い音から腹に響く低音までを十分に感じることができます。
 

Absolute_trombone

 
日本ではジャズ・トロンボーンの人気自体が低調で、ジャズ・トロンボーン好き=マニアックなジャズ者、という図式が定着しています。ジャズ・トロンボーン奏者として名前が売れているのは、J.J.Johnson、Cartis Fuller、Kai Winding、Bob Brookmeyer 位でしょうか。現代に至っては具体的な名前が浮かびません。

そういう意味では、このマイケル・ディヴィスは、現代のジャズ・トロンボーン奏者として「イチ押し」の存在です。特に、この『Absolute Trombone』というアルバムは、トロンボーン奏者としてのマイケル・ディヴィス個人を愛でることも出来るし、ジャズ・トロンボーンそのものを大いに楽しむことも出来る優れものです。

いや〜良いアルバムです。このアルバムに出会った幸運を感謝しますね〜。大編成のジャズトロンボーンアンサンブルとしては録音・演奏ともに極上のアルバムです。ジャズ者万民にお勧め。

 
 

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2016年2月 2日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・50

僕はケニー・バロン(Kenny Barron)のピアノが良く判らなかった。癖が無い。流麗かつ端正である。テクニックは優秀。ファンクネスは希薄。それでいてドライブ感は旺盛。グイグイ弾きまくる力強さはある。逆に繊細な表現も出来る。とにかく器用なピアニストである。

つまりは「これ」といった決定打に欠けるが、平均的に素晴らしいプレイを聴かせてくれる、僕にとってはつかみ所の無い「不思議なピアニスト」だった。でも、バロンのプレイを聴き始めると、じっと聴き入ってしまう。そういう魅力のあるピアノである。僕はそんなバロンに初めて出会ったアルバムがこれ。

Kenny Barron『Scratch』(写真左)。1985年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Barron (p), Dave Holland (b), Daniel Humair (ds)。ケニー・バロンは1943年生まれだから、バロンが42歳の時の録音。円熟期に差し掛かる前の、中堅時代の録音になる。

バリバリに弾きまくるバロンが聴ける。デイブ・ホランドのベースのサポートも重厚。ダニエル・ヒューメイヤーのドラムの疾走感も魅力だ。思いっきりスインギーで、インプロビゼーションの弾き回しはモダン。それまでにありそうで無かった弾き回しと音の重ね方は新しい響きだった。
 

Kenny_barron_scratch

 
リリカルではあるが耽美的では無い。切れ味鋭いが鋭角な鋭さでは無い。奇をてらった革新的な響きは皆無。アブストラクトな展開にも無縁。とにかくバリバリに弾きまくる。ネオ・ハードバップにつながる正統派な展開。でも、このアルバムを初めて聴いた1993年の頃には、このバロンの魅力が理解出来なかった。 

しかし、今は判る。癖が無く端正なところがバロンのピアノの個性。平均的に素晴らしいプレイを聴かせるところが、いわゆるピアニストとしての総合力の高さが個性。ハードバップから当時、純ジャズ復古の時代まで、こういうピアニストはいなかった。何かしら強烈な個性を持ったピアニストは多く存在した。しかし、バロンの様な、総合力で勝負する、癖が無く端正な個性を持ったピアニストは存在しなかった。

この『Scratch』を聴けば、その「個性」の一端を十分に感じていただけると思います。これだけ端正で流麗な、それでいてドライブ感のあるピアノはなかなか他に無い。冒頭の「Scratch」から、ラストの「And Then Again」まで一気に聴き通してしまいます。迫力あるバロンのピアノ。聴き応え十分。

現代的なイラストをあしらったアルバム・ジャケットも魅力的。バロンのピアノの個性をとても良く表していると思います。エンヤ・レーベルからのリリースなのも魅力的。ホレスト・ウェーバーのプロデューサーの手腕も冴えまくっています。良いピアノ・トリオ、良いアルバムです。

 
 

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2016年2月 1日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・30

ゲイリー・バートン(Gary Burton)のヴァイブが好きである。もともとヴァイブの音が好きで、最初は、ミルト・ジャクソンがお気に入り。1978年に友人の家で、チック・コリアとのデュオ盤『Crystal Silence』で、ゲイリー・バートンのヴァイブを知って、以来、ずっとミルトと同じレベルでの「お気に入りヴァイブ」。

ゲイリー・バートンのヴァイブはミルトと違ってファンクネスは希薄。代わって、クラシック音楽に通ずる明快な響きと卓越したテクニック、4本マレットが紡ぎ出すユニゾン&ハーモニー。硬質でクリスタルな響きはバートン独特なもの。意外とクロスオーバーな展開が得意。純ジャズというよりは、フュージョンな要素を交えたコンテンポラリーなジャズの響きである。

そんなゲイリー・バートンの素敵なカルテット盤がある。The New Gary Burton Quartet『Common Ground』(写真左)。2011年のリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Julian Lage (g), Scott Colley (b), Antonio Sanchez (ds)。

冒頭の「Late Night Sunrise」がスッと入ってくる瞬間が素晴らしい。バートンのヴァイブの音がとても躍動感があって美しい。ジュリアン・レイジの官能的でアグレッシブなエレギも良い。アントニオ・サンチェスのドラミングが硬軟自在に絡み、スコット・コレイのベースが演奏の底をガッチリ押さえる。素晴らしいネオ・ハードバップな演奏。惚れ惚れする。
 

Common_ground_1

 
このアルバム、やはりハイライトは、ジュリアン・レイジのギターだろう。パット・メセニーの様でもあるが、官能的なくすんだ音色とアグレッシブなフレーズは、ジュリアン・レイジの独特の個性。テクニックはもちろん卓越したもの。そのテクニックの確かさはアコギの演奏で実感する。

エンディングはキース・ジャレットの「In Your Quiet Place」は懐かしさ漂う新しい雰囲気の演奏。1971年録音のアトランティック盤『Gary Burton & Keith Jarrett』で取り上げられていた曲で、演奏の雰囲気は「クロスオーバー・ジャズ」。そんなクロスオーバー・ジャズの名曲を現代のネオ・ハードバップな切り口で再構築している。

哀愁漂うメロディーが美しく、リズム&ビートは「エイト・ビート」。メロディーの美しいジャズ・ロックな面持ち。インプロビゼーションの後半がカントリーっぽく変容していくところがキースらしい個性。瑞々しい叙情とカントリー・フレーバーが心地良い。このキースの名曲をゲイリー・バートンをリーダーとした「The New Gary Burton Quartet」が再演する。これが実に良い。

このアルバム、全編に渡って佳曲揃い。録音当時68歳のゲイリー・バートンのヴァイブ。まだまだ現役、まだまだいける、そんな思いを持たせてくれる素晴らしい演奏がギッシリと詰まっています。良いアルバムです。我が音楽喫茶『松和』の昼下がりに流したいですね。

 
 

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