こんなアルバムあったんや・56
ジャズ盤には、どう聴いてもリーダーが目立たなくて、サイドメンが目立ちに目立つ盤がある。それは特にプレスティッジ・レーベル系に多くて、リーダーの名前で辿り着いたら、リーダーはいまいち、サイドメンがいける、という盤が多々有ります。
プレスティッジの場合、ぱぱっとジャズメンを集めて、リハもほとんど無く、一発勝負で録音する。いわゆるジャム・セッションなスタイルの録音が多かったから、リーダーを決める場合、一番年長だからとか、前回は俺やったから今回はお前とか、結構、ええかげんなリーダーの決め方をしていたらしい。
そういう理由で「どう聴いてもリーダーが目立たなくて、サイドメンが目立ちに目立つ盤」が存在するという訳です。例えば、このアルバムなんか、その典型的な例ではないでしょうか。George Wallington『The New York Scene』(写真左)。
1957年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Phil Woods (as), George Wallington (p), Teddy Kotick (b), Nick Stabulas (ds)。 アルトのフィル・ウッズとトランペットのドナルド・バードの双頭フロントというのが珍しい。
このアルバムを聴き通せば絶対に思う。あれ、リーダーって、ピアノのジョージ・ウォーリントンやなかったっけ。それほど、ジョージ・ウォーリントンのピアノは印象に残らない。もともと、ジョージ・ウォーリントンのピアノは強烈な個性が希薄なバップ・ピアノなので、あまり印象に残らないのだが、特にこのアルバムではその傾向が強い。
では、このアルバムは何が印象に残るのか。それはまず、フィル・ウッズのアルト。ウッズのアルトが溌剌としていて素敵だ。活き活きとバイタルに吹きまくるウッズは良い。そして、そんな鋭角で切れ味良く、ブラスを鳴り響かせるウッズのアルトに触発されてか、このアルバムでのドナルド・バードのトランペットは良い。
とにかく、バードのトランペットが良く鳴っている。これだけ鳴っているバードのトランペットは珍しいのではないかしら。しかも、テクニックも優秀。指がもつれることもなく、速いパッセージでもしっかりとした運指。このアルバムでは、ドナルド・バードのトランペットも聴きものです。
ということで、このジョージ・ウォーリントンのリーダー作は、サイドメンのフィル・ウッズのアルトとドナルド・バードのトランペットを聴くべきアルバムだと言えます。つまり、プレスティッジ・レーベルに良くある「どう聴いてもリーダーが目立たなくて、サイドメンが目立ちに目立つ盤」の一枚です。
そういう意味で、このアルバムは「知る人ぞ知る盤」ではあります。知っている人は知っている。でも、マイナーな存在のアルバムではあります。ジョージ・ウォーリントンのピアノから入るとガッカリする盤で、アルトのフィル・ウッズとトランペットのドナルド・バードの双頭フロントという珍しさから入ると「思わぬ掘り出し物」として愛聴盤となる、不思議な内容のアルバムです。
震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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マスター、フュージョンギターの開祖?へのご意見ありがとうございます。
大いに納得です。^^
このウォーリントンのLPについても完全同意でございます。1970年頃の1100円廉価版LPシリーズで買いました。あの頃はなんとテレビCMで廉価版ジャズLP(クリフォードブラウンのエマーシー盤他)のスポットが流れたりして思えば隔世の感がありますね。
あの当時、私もロック少年からジャズの廉価版をへてジャズにのめりこみ今日に至っていますが、現在のジャズCD購買者の中心(B級C級廉価CD盤など)は私のようなフアンが中心だ、とある本に書いてありました。
ウォーりントンのLPはこの他におよそ10枚くらい聞きましたが、このLPを最初に聞いたせいでしょうか、これが今でも一番好きです。
最近ユーチューブで、昔のあるコーラスグループの「グラデュエーションデイ」を見つけて驚きました。(~o~)この盤の演奏も大好きです。
投稿: おっちゃん | 2016年2月16日 (火曜日) 06時34分