« ポール・ブレイのソロ・ピアノ | トップページ | 狭間美帆『Time River』が良い »

2016年2月22日 (月曜日)

縦ノリの新しい4ビート感覚

最近はこのバンドの名前を聞かなくなったなあ。このバンドのアルバムを初めて聴いた時、新しい4ビート・ジャズに出会った感じがした。横乗りのスイングでは無い「縦ノリ」の4ビート。新しい感覚のテナー。お洒落なヴァイブ。タイトで鋼の様なベース。フュージョン感覚のライトで流暢なピアノ。

そのバンドとは「ステップス(Steps)」。リーダー格、ヴァイブのマイク・マイニエリが「思いついた」グループとのこと。Wikiにその経緯が粋な言葉で綴られている。「7番街の南、ニュー・ヨーク市のナイトクラブで、1979年にアルバイトたちによる冒険的な企てとして、ステップスは始まった」。

僕が感じた「新しい4ビート・ジャズ」は、スタジオ音源のセカンド盤とライブ音源のサード盤とで、今でもしっかりと追体験することが出来る。1979年12月リリースの『Step by Step』(写真左)と、1983年リリースの『Paradox』(写真右)。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Steve Gadd (ds), Eddie Gómez (b), Don Grolnick (p), Mike Mainieri (vib)。

パーソネルのいずれも、今ではレジェンドと呼ばれるジャズメンばかりである。テナーのマイケル・ブレッカーは2007年1月に、ピアノのドン・グロルニックは1996年6月に、それぞれ鬼籍に入っている。振り返ってみると、そうか、5人中2人が逝去しているのか。

時代的にはフュージョン・ジャズ全盛期なんだが、そんな中にこのステップスの4ビート・ジャズは新鮮に響いた。とにかく新しい。何が新しいかというと、ガッドとゴメスの叩き出すビート。横に揺れる3連ノリの旧来のスイング感溢れる4ビートではない、縦に揺れるスクエアな均等レベルの4ビートが、今の耳にも新しい感覚を醸し出す。
 

Step_by_step_paradox

 
そして、新しい感覚の2つ目が、テナーのマイケル・ブレッカーの存在。マイケルのテナーの音は当時、実に斬新に響いた。コルトレーンのええとこ取りはしているが、決して、コルトレーンのフォロワーでは無い。テクニカルには吹き上げているが、そのフレーズのそこはかとない大らかさは、どちらかと言えば、ソニー・ロリンズの想起させる。

テクニック優秀、音も大きくストレートに流麗に流れ、歌心溢ればかりに耳に馴染む。そのフレーズのトーンは決して、昔のハードバップのトーンをなぞってはいない。そのトーンは新しい。それまでに聴いたことの無い、ストレートで切れ味の良いメロディアスなトーン。

このマイケル・ブレッカーのテナーが、当時の日本のジャズ雑誌では酷評されていたのだから驚きだ。当時、それだけ新しいトーンのテナーである。従来のそれまでのジャズ・テナーの正反対の音とでも表現したらよいだろうか。今の耳にも確かに新しいトーンに響く。意外と現代の現役ジャズ・テナーにフォロワーが見当たらないのに愕然とする。

今一度、この2枚のアルバムを聴いて欲しい。今のジャズに無い「新しい感覚の4ビート」、新しいトーン、新しいリズム&ビートが聴いて取れる。ネオ・ハードバップの範疇なのだろうが、1950年代から1960年代のハードバップ、モード・ジャズのトーンを踏襲していないところが、このステップスの唯一無二、個性的なところ。

1980年初頭にして、コンテンポラリーな純ジャズ。この後、純ジャズ復古の大号令がかかって、ウィントン・マルサリスを中心とする新伝承派のネオ・ハードバップの波が押し寄せる訳だが、その新伝承派のトーンよりも斬新で色褪せないところが、このステップスの音の凄いところである。思わず「再評価」である。

 
 

震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« ポール・ブレイのソロ・ピアノ | トップページ | 狭間美帆『Time River』が良い »

コメント

縦ノリ4ビートといいますと、日本のロックグループのクりエイションの
「危険な関係のブルース」を聞いて(やはりロック畑のジャズはこうなるのかなあ?)と思いました。(~_~;)

そしてジャズを聴き始めた頃同じ感じを受けたのは、ジムホールの「アランフェス」(CTI)と、チェットベイカーの「枯葉」(CTI)でした。どちらもタイコはスティーブ・ガッドでした。

正直いって、下手な4ビート、スイングしない4ビートだなあ・・と、当時は思っておりました。(~_~;)

今ではこれは新感覚の「縦のり4ビート」と理解できますが、当時はなかなかなじめませんでした。

ロック畑のドラマーの新感覚4ビートジャズととらえるか、体の中に4ビート感覚のないドラマーだ、ととるかはあくまでも好みの問題だ、と思えますが、私は後者の意見です。笑

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 縦ノリの新しい4ビート感覚:

« ポール・ブレイのソロ・ピアノ | トップページ | 狭間美帆『Time River』が良い »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2020年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

カテゴリー