珍しい「ロンとチックの共演盤」
ロン・カーターの1970年代のリーダー作群を眺めていて、へ〜っこんなアルバムあったんや、とちょっとビックリするものが何枚かある。基本的には組合せの妙なんだが、このアルバムはとにかく珍しい。
Ron Carter『Parade』(写真左)。1979年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Chick Corea (p), Tony Williams (ds) のピアノ・トリオをベースに、テナー2本、アルト1本、トランペット3本、チューバ2本が加わる、11人編成のスモール・オーケストラ。ユニークな編成。
まず、ちょっとびっくりするのが、ピアノのチック・コリアの参加。ロンの音楽性を鑑みる中で、チック・コリアがピアノで参加する動機が浮かばない。そして、ドラムのトニー・ウィリアムス。ロンのクロスオーバー系ジャズのアルバムには、トニー・ウィリアムスは、事実として決して呼ばない。
そういう意味で、この『Parade』というアルバムは異色作といえる。全11人のユニークな編成は、チック・コリアの「Return to Forever」の編成を彷彿とさせる。ホーン・アレンジがシンフォニック・ジャズやビッグ・バンド・ジャズ的なアレンジが中心となっている。
アルバム全体の雰囲気としては、チックの音楽的趣味を前面に押し出した、スパニッシュ、ボサノバ&サンバ等、チックのフュージョン・ジャズのトレンドがメインの展開になっていて、そこにロンとトニーがリラックスして付き合う、ってな感じになっている。といって、チックもロンもトニーも適当に流している訳では無い。よくよく聴くと、かなり気合いの入ったプレイを聴かせてくれているところが嬉しい。
よくよく振り返ってみると、チックとトニーは短期間ではあるが、マイルスやゲッツのバンドで共演している経緯がある。そこでの相性は悪くなかった。基本的に音楽性の志向が合わないだけで、チックとトニーは意外と良い組合せであると僕は思う。逆に、ロンとチックは全くといって良い程、共演のアルバムが無い。
ロンからしてみると、一度はチックとのアルバムを残しておきたい、と思ったのではないか。ロンのクロスオーバー系ジャズについては、スパニッシュ、ボサノバ&サンバ等、チックのフュージョン・ジャズの志向に合致したものが多く、そんな志向の中では、やはり、ピアノ&キーボードはチックが相応しい。でも、縁が無かったんでしょうね。
このアルバムは、ロン、チック、トニーの3人が顔合わせをした唯一のアルバムなので、ピアノ・トリオかワン・ホーン・カルテットといった編成で、ストレート・アヘッドな純ジャズをじっくり聴きたかったという要望が強いのか、あんまり評判が良くありませんが、ロンのフュージョン・ジャズとして聴けば、これはこれで内容のあるアルバムだと思います。
チック者の私からすると、このアルバムはやはり外せませんね。もともとマイルストーン・レーベルのロンのリーダー作は廃盤状態に陥ることが多く、この盤についても、なかなかポピュラーな存在では無かったのですが、最近、やっとダウンロードサイトからの入手も可能になりました。まず、チック者の方々にはお勧めですね。
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