モード・ジャズなマクリーン
今週の「聴き始め」週間は、図らずも「アルト・サックス」週間。締めはジャキー・マクリーン。マクリーンは先取性の高い「進化のアルト・サックス」。ひとつの演奏スタイルに留まらない、チャレンジブルでイノベートなアルト・サックスである。新年を迎えて、聴き始めに相応しいジャズメンである(ちょっとこじつけか・笑)。
Jackie Mclean『It's Time』(写真左)というアルバムがある。1964年8月の録音。ブルーノートの4179番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Charles Tolliver (tp), Herbie Hancock (p), Cecil McBee (b), Roy Haynes (ds)。
昨日のブログでご紹介した、ほぼ一年前の『One Step Beyond』では、オーネット・コールマン系のフリー・ジャズに適応したマクリーンであったが、このアルバムでは、変わり身早く、当時、ジャズの最先端の演奏スタイルである、モード・ジャズ、いわゆる新主流派のジャズ・スタイルを採用している。
まずはバックのミュージシャンを若手の精鋭を中心に固めている。一番年長のドラマー、ロイ・ヘインズですら、録音当時39歳。トランペットのチャールズ・トリヴァーは22歳、ベースのセシル・マクビーは29歳、ピアノのハービー・ハンコックは24際。主役のマクリーンが33歳。平均年齢は30歳を下回る。
このアルバムでのキーマンは、当時弱冠24歳の若き精鋭の一人、ピアノのハービー・ハンコックだろう。冒頭のトリヴァー作の「Cancellation」のハービーのピアノの響き、フレーズが何から何までモードであり、新主流派なのだ。実はこのアルバム全編に渡って、このハービーのモーダルなピアノが、演奏全体の雰囲気を決定付け、フレーズ展開の方針を指し示す。
そこに二人目のキーマン、当時29歳のセシル・マクビーのベースが、演奏全体を支えリードし、盛り立てる。「ポスト・バップ・ジャズの最も進歩的で多才なベース奏者」と評されるマクビーのベースが、これまた何から何までモードであり、新主流派なのだ。このマクビーのベースが、ハービーのピアノとコラボして、コッテコテのモード・ジャズの雰囲気を撒き散らす。
そして、主役のマクリーンである。昨日も書いたが、マクリーンは、ジャズの新しい演奏スタイルに対しての適応力が高い。楽器のテクニックもさることながら、ジャズの新しい演奏スタイルに適応しやすいアレンジを施すのが実に上手い。
実際には、ヘッド・アレンジなのか、デスク上のライティングなのか、本人に訊いてみないと判らないが、彼のアレンジ能力の高さが、ジャズの新しい演奏スタイルに対しての適応力がの高さに繋がっていると思う。
この『It's Time』は、意外とモード・ジャズ、新主流派ジャズの雰囲気が色濃く、モード・ジャズの入門盤としてもお勧めできるものです。録音当時は1964年。この辺りからジャズはフリー・ジャズの洗礼を受けつつ、ロック・ミュージックに「大衆音楽」の座を奪われ、混迷の時代を迎えていくことになります。
アルバム・ジャケットも良いですね。エクスクラメーション・マークを並べ立てて、上部に印象的なタイポグラフィー。主役の写真は小さく右上に飾られる。現代アートの好例としても楽しめる、優れたデザイン・センスには脱帽です。
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