先取性の高いマクリーン
今週の「聴き始め」週間は、図らずも「アルト・サックス」週間となっている。初日、リー・コニッツから始まって、フィル・ウッズ、そして、アート・ペッパーと来た。そう来たら、次は「ジャキー・マクリーン」である。
ジャキー・マクリーンは前進する、進歩するアルト・サックス奏者であった。ハードバップ全盛期にデビューするが、彼はハードバップに安住することは無かった。オーネット・コールマンが出現するや、オーネットの限りなく自由度の高いジャズに手を染め、新主流派のモーダルな演奏が出現すれば、モーダルな演奏にチャレンジする。マクリーンは先取性の高いジャズメンであった。
さて、そんな先取性の高いマクリーンを象徴するアルバムの一枚がこれ。Jackie McLean『One Step Beyond』(写真左)。1963年4月の録音。ブルーノートの4137番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Grachan Moncur III (tb), Bobby Hutcherson (vib), Eddie Khan (b), Tony Williams (ds)。
このアルバムは、パーソネルを見れば判るように、当時の先端のジャズの演奏トレンドを追求したアルバムである。聴くと判るのだが、このアルバムでは、オーネット・コールマン系のフリー・ジャズを追い求めているように感じる。
それでいて、ハードバップの様に演奏における構成、展開については、しっかりとアレンジされていることを感じる。単純にオーネットのフリー・ジャズを追い求め、コピーする様な安易で単純なアプローチに飛びつかない、マクリーンのしたたかさを感じる。
冒頭の「Saturday and Sunday」のテーマを奏でるバンドの音を聴くだけで、ただならぬ雰囲気を感じる。もはやこの雰囲気はハードバップでは無い。明らかに、ハードバップの次に来るべき新しいジャズの演奏トレンドである。フリーでありモードである。
このアルバムでは、まだモードの影は薄い。明快に感じるのは、オーネット・コールマンの様な、限りなく自由度の高いハードバップ的な演奏。オーネットほどにはフリーでは無いが、明らかにハードバップよりは遙かに自由度が高い。
ハードバップからモードへの移行の過渡期ならではのユニークな演奏の雰囲気がこのアルバムの個性である。いわゆる「フリーの要素を持つ4ビート」なスタイルで、この時期だけの、特別にユニークなスタイルである。
限りなく自由度の高いフリーなサウンドだが、作編曲がきっちりとしている。恐らく、ブルーノートの総帥であり、プロデューサーである、アルフレッド・ライオンの指導の賜ではないかと想像する。フリーなサウンドではあるが調性を保っているところがユニークである。マクリーンのアレンジ力を感じる。
アルバムを録音する時点でのジャズの演奏トレンドをしっかりと取り入れ、自分のバンド・サウンドに反映する。マクリーンの先取性と応用力の高さを強く感じる。さらに、そんなマクリーンのトレンドを取り入れる「柔軟性の高さ」を実感出来る好盤です。
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