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2016年1月13日 (水曜日)

リー・コニッツのクール・ジャズ

リー・コニッツについては、若い頃は聴かなかった。リー・コニッツは白人のアルト・サックス奏者。レニー・トリスターノに師事し、トリスターノ派のジャズメンとして有名。とまあ、そこまでは良いのだが、じゃあ、彼のプレイを聴いてみて、若い頃は不覚にも「なんか平凡やなあ」なんて思ったりしたのだ。

ここに、Lee Konitzの『Subconscious-Lee』(写真左)というアルバムがある。1949年と1950年の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as), Warne Marsh (ts), Billy Bauer (g), Lennie Tristano (p),  Sal Mosca (p), Arnold Fishkin (b), Shelly Manne (ds), Denzil Best (ds), Jeff Morton (g)。トリスターノ傘下の精鋭がズラリ。

時は1949年から1950年。ジャズ演奏のトレンドは「ビ・バップ」。とある楽曲からコード進行を借用し、そのコード進行に乗って、いかにイマジネーション溢れる、かつ疾走感溢れるハイテクニックなアドリブを聴かせるか。そんな一種アクロバティックな、瞬間芸の様なジャズ。そんな「ビ・バップ」真っ只中な時代に、トリスターノ傘下の俊英達が抑制の効いたデリカシーに富むプレイを聴かせる。

そう、コニッツをはじめ、トリスターノ傘下の俊英達の演奏の雰囲気は「ビ・バップ」のマナーに則っているのだが、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピー達の「ビ・バップ」の様に熱くないのだ。トリスターノ傘下の俊英達は、疾走感溢れるハイテクニックなアドリブとは、ほぼ正反対の抑制の効いた理知的でクールなアドリブを展開するのだ。

この熱くないビ・バップ、抑制の効いた理知的でクールなアドリブというのは、後の1950年代中盤以降、ジャズの演奏のトレンドがハードバップに移行した後、マイルスを中心に展開されたクールでヒップなジャズに繋がるスタイルなのだ。1949年から1950年には、このようなスタイルは無かった。トリスターノ派のみが為し得たスタイルであった。
 

Subconsciouslee

 
当時、米国東海岸中心に展開されていた、疾走感溢れるハイテクニックなアドリブ、熱いイマジネーション溢れるブロウがメインの「ビ・バップ」の時代に、後のハードバップ時代を完全に先取りした、このトリスターノ派の熱くないビ・バップ、抑制の効いた理知的でクールなアドリブが存在したということに意味があるんですね。私が40歳を迎えたあたりで、そういうことに気がつきました。

とはいえ、米国東海岸中心の熱いビ・バップも、トリスターノ派の抑制の効いた理知的でクールな演奏も、どちらも演奏の雰囲気、マナーは大差なく、ハイテクニックでイマジネーション溢れるアドリブを聴かせるところは同じ。ただ、トリスターノ派の方がグループ・サウンズの追求という点では一歩リードかなあ、というくらい。

ということで、40歳を迎えるあたりから、やっとこの『Subconscious-Lee』の演奏の内容が楽しめる様になりました。抑制の効いた理知的でクールなジャズ、そういう観点から「クール・ジャズ」とも呼ばれるみたいですが、そういう観点では、このトリスターノ派の演奏の方向性は、1950年代の米国西海岸ジャズにかなり影響を与えたのではないか、と睨んでいます。

ジャズの歴史、ジャズの演奏のトレンドの歴史を紐解きながら、やっとこさ理解し楽しむ事のできるトリスターノ派であり、このLee Konitzの『Subconscious-Lee』という盤です。こういうところがジャズって面白いですね。親しめば親しむほどに奥が深い。止められませんなあ(笑)。

「subconsciously(潜在的に)」という単語に自分の名前の“lee”をかけたタイトルがお洒落。また、この『Subconscious-Lee』の録音が、プレスティッジ・レーベルの最初の立ち上げ録音だったという逸話も含めて、このアルバムはなかなか面白いと思います。でも、録音年が古いが故に録音もあまり良く無いし、ジャズ者初心者にはちょっと重荷かも。ジャズ者中級者以上にお勧め。

 
 

震災から4年10ヶ月。決して忘れない。まだ4年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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