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2016年1月30日 (土曜日)

「クロスオーバー」は生きている

さてさて、バーチャル音楽喫茶『松和』が、伝説のフュージョン・ジャズ雑誌「ADLIB」の代わりに特集する「2015年度 フュージョンジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」。今日のアルバムはこれ。

Lionel Loueke『Gaïa』(写真左)。まず、このアルバム・リーダーの名前が読めない(笑)。Lionel Loueke=ライオネル・ルエケと読むらしい。このライオネル・ルエケは1973年、ペニン生まれのギタリスト。今年で43歳になる。バークリー音楽院出身。アフリカ出身のジャズ・ミュージシャンの中でも、カメルーンのリチャード・ボナとともに21世紀初頭最高のミュージシャンとの評価の高いギタリストである。

さて改めて、Lionel Loueke『Gaïa』。昨年のリリース。ちなみにパーソネルは、Lionel Loueke (vo,g), Massimo Biolcati (b), Ferenc Nemeth (ds)。ブルーノート・レーベルからのリリースである。もともとブルーノートからリリースされるアルバムのリーダーは元来曲者が多い。このリーダー・ギタリストのライオネル・ルエケも曲者ギタリストではある。

加えて、プロデュースはドン・ウォズ。現代の「アルフレッド・ライオン」と謳われるドン・ウォズ。ブルーノートの社長であり、プロデューサーでもある。そんなドン・ウォズのプロデュース盤である。ありきたりの盤である筈が無い。と思いつつ聴いて、あぁやっぱりと納得の素晴らしい内容のアルバムである。

内容的には「クロスオーバー・ジャズ」と表現するのが一番適切だろう。フュージョン・ジャズと表現するには、音がシンプルでストイックで攻撃的。ジャズとロックの融合がメインな音世界。ソフト&メロウな要素はほとんど無い。そういう意味で、1970年代の「クロスオーバー・ジャズ」の音世界に近似している、と表現するのが、この盤に相応しい。
 

Lionel_loueke_gaia

 
さて、このライオネル・ルエケの4枚目のブルー・ノート作品は親しい友人を観客に迎えたスタジオ・ライヴ盤。トリオの緊張感溢れるインプロビゼーションが心地良い。

1970年代のクロスオーバー・ジャズを温故知新しつつ、1980年代以降、現在までのジャズ演奏のトレンドもそこはかとなく織り込んでいるので、音の古さは全く感じない。逆に新しい響きを湛えたクロスオーバー・ジャズの音にちょっとどぎまぎする。

一言で言うと「ジャズとロックの融合がメインで、アフリカ的な音の響きを織り込むことが個性」な音世界である。これが実にユニーク。今までありそうでなかった大人のだ。どこかで聴いたことがあるんじゃないか、と思って聴き込むのだが、これが「無い」。

このクロスオーバー・ジャズの世界に織り込まれたアフリカ的な音の響きという部分が、このルエケのトリオの個性であり、このルエケを曲者ギタリストとする所以である。

1970年代のエレクトリック・ジャズの世界を臨書しつつ、アフリカな響きを現在までのジャズ演奏のトレンドと共に取り込んで展開する。こういう内容のアルバムが2015年にリリースされるという事実を捉えると、クロスオーバー・ジャズは生きている、まだまだ進化しているんやなあ、と改めて感動する。良いアルバムです。

 
 

震災から4年10ヶ月。決して忘れない。まだ4年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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