ピアノ・トリオの代表的名盤・49
ベーシストがリーダーのアルバムが面白くて、まだまだその聴き直しは続く。というか、今回のアルバムは「聴き直し」というか、2015年の新盤の中でも印象に残った優れもの。
僕が思うに、ベーシストのリーダー作として理想的なのは、ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出するやり方。ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。
これが本来のベーシストがリーダーを張る、リーダー・アルバムのあるべき姿だと思うんですが、その「あるべき姿」のひとつがこのライブ盤に凝縮されています。Christian McBride Trio『Live at the Village Vanguard』(写真左)。2014年12月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Christian McBride (b), Christian Sands (p), Ulysses Owens, Jr. (ds)。
ベースでリーダーのクリスチャン・マクブライド自身、初めてヴァンガードに出演したのが1995年だそうで、以来20年選手になります。マクブライドのアコ・ピアノ・トリオは、ビレッジ・バンガードのクラブ・オーナーであるロレイン・ゴードンのお気に入りでもあり、2007年から年に一度の定例公演をスタートしたのをきっかけに、今では2週間公演がブッキングされる正真正銘のレギュラー・バンドでもあるそうです。
なろほど、このライブ盤には、そんなマクブライド・トリオの堂々とした、王道を行くメインストリームなジャズ・トリオの演奏が目一杯詰まっています。しかし、テンションも適度に高くて、それぞれ、トリオを構成する3人のテクニックも凄まじいほど高く、それぞれの演奏を聴いていると、思わず唖然とする瞬間が度々あります。凄いなあ。
このライブ盤を聴いていると、1970年代後半の「Great Jazz Trio」を想起します。ピアノにハンク・ジョーンズ、ドラムにトニー・ウィリアムス、ベースにロン・カーターを配した相当に高度な演奏がメインのトリオでしたが、このベースのロン・カーターにとってのGJTの位置づけが、今回のマクブライドにとっての、この純ジャズ・ピアノ・トリオなんでしょうね。
1970年代後半のGJT(Great Jazz Trio)」と、今回のCMT(Christian McBride Trio)を比較してみると、その演奏テクニック、演奏全体のトレンドやコンセプト、演奏の展開やアレンジ、どれをとってみても、大きく進歩していることが判ります。いや〜、やっぱりジャズって生きているんですね。この40年間のジャズ演奏の進歩というか深化って凄いですね。
CMTの演奏は一言で言うと「スインギー&ハード・ドライブ」。ホレホレという感じで畳みかけるように、良い意味で追い立てるように、グイグイ疾走していきます。もはやそれは驚きを超えて爽快感のみが後に残るスピードで、ジャズの演奏テクニックもここまで進化したのか〜、と改めて感慨に耽ってしまいます。
二人のクリスチャン、マクブライドはベース、サンズはピアノのテクニックと歌心は凄まじいばかりのレベルの高さです。そして、その二人のリズム&ビートを支え、バンド全体を統制していくオーエンズのドラミングには思わず脱帽です。常に冷静に、決して前に出ることも無く、それでいて時に熱く、特にクールにリズム&ビートを繰り出していくオーエンズのドラム。素晴らしいです。
凄まじいレベルの高さを保持した純ジャズなピアノ・トリオ、そして、ライブ盤です。後のジャズの歴史に残るライブ盤になっていくのでは無いでしょうか。ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。ベーシストのリーダー作として理想的な好盤です。
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