ファーマーとバードの邂逅です
このアルバムにはなかなか縁が無かった。と言うか、敬遠していたと言っても良い。存在は、ジャズ者中堅の頃、ジャズを聴き始めて10年くらい経った頃から知っていた。でもなあ、このアルバムにはなかなか触手は伸びなかった。
だってですよ、このジャケット・デザインですよ。パチモンの雰囲気満載ですやん。しかも、プレスティッジ・レーベルからのリリースである。やっつけ仕事、一発勝負のジャム・セッション的録音を旨とするので、その出来不出来の差が激しい、というか、不出来の割合が結構高い。
二人の人気トランペットが双頭リーダー。これってどう考えたって、オールスター的なジャム・セッションですやん。まあ、小遣い稼ぎに、ワッと集まって、一発勝負でレコーディングして、出来不出来は二の次。ワッと集まっての一発勝負なんで、それぞれのジャズメンのコンディションはまちまちなの、みえみえですやん(笑)。
そんなアルバムとは、これ。Art Farmer and Donald Byrd『2 Trumpets』(写真左)。1956年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer, Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Barry Harris (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds) 。パーソネルは、全くもって申し分無い。ハードバップの人気ジャズメンが集結している。
特に、二人の人気トランペットが双頭リーダー、いわゆる「主役が二人」なのが全くもって危ない。優秀なトランペッター同士である。どうしても張り合ってしまうのではないか、張り合って、それが裏目裏目に出て、本来のそれぞれが持つ個性を全くつぶし合うような、そんなジャム・セッションがジャズの世界には良くあるのだ。
で、このアルバムは、やっとこさ、2年前に入手した。で、聴いてみて「あら、ビックリ」。この双頭リーダーの、アート・ファーマーとドナルド・バードの相性は抜群に良い。お互いがお互いの音をよく聴き、それぞれの個性を理解した上で、ユニゾン&ハーモニーからアドリブ合戦を繰り広げている。これには感心した。
速い曲でのアドリブの展開については、それぞれの個性とアプローチが非常に良く出ていて面白い。バラード曲については、それぞれの情感の表現の仕方、アドリブ部での解釈の違いなど、良い意味でその個性が程良く出ていて、とても興味深い。なんだか「一粒で二度美味しい」グリコのキャラメルみたいなアルバムである。
二人のトランペットの音は完璧にハードバップ。アルトのマクリーンも完璧にハードバップ。ハリスのピアノ、ワトキンスのベース、テイラーのドラムのリズム・セクションも明らかにハードバップ。このアルバムには、徹頭徹尾、ハードバップな音がギッシリと詰まっている。
ハードバップ入門として、ジャズ本などに紹介されることは殆ど無いアルバムです。長年、廃盤になっていて入手困難だったのが原因なんでしょうが、最近では、ダウンロードサイトからでも音源が購入できる様で、このアルバム、ハードバップ入門盤としてその名を挙げられることが多くなれば良いですね。そんな感じの好盤です。
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