サザン・ロックのジャズ・ロック
僕が高校時代、1970年代半ば辺りで、サザン・ロックのプチ・ブームがあった。Allman Brothers Band(オールマンズ)やLynyrd Skynyrd(レイナード・スキナード)のアルバムがロック雑誌で紹介されたりして、僕達ロック小僧は、この時初めて、サザン・ロックの存在を知った。
サザン・ロックは、カントリーやブギウギ、ブルース、R&Bなど、アメリカ南部の土臭い音楽を前面に押し出したロック、と解釈される。いわゆる米国ルーツ・ミュージックの中で、米国南部中心に定着しているものをベースにしたロックである。こういうサザン・ロックって、ジャズとは全く無縁なんだろうな、と思うんだが、それがなかなか、そうでは無いから音楽って面白い。
デレク・トラックス(Derek Trucks)というギタリストがいる。オールマンズのオリジナル・メンバーであるブッチ・トラックスの甥。1999年に、オールマンズの正式メンバー、ギタリストとして迎えられた。この若きギタリストが意外とジャズ、フュージョンに近いプレイスタイルをしているのだから面白い。
彼のギターは、ロックとブルースをベースとしつつ、マイルス・デイヴィスの「So What」やジョン・コルトレーンの「Mr P.C」をカバーするなど、ジャズへの造詣が深い。加えて、サン・ラなどにも影響を受けるなどフリー・ジャズ、さらにインド・アラブ音楽などにも適用する、幅広い音楽性が特徴。
そんなトラックスの1997年のリリースのデビュー盤、Derek Trucks Band『The Derek Trucks Band』(写真左)を聴けば、ジャズやフュージョンにも適用した、そんな多様性のある魅力的なギター・プレイを堪能することが出来る。
2曲目にジョン・コルトレーンの「Mr. P.C.」、8曲目に同じくコルトレーンの「Naima」、6曲目にウェイン・ショーターの「Footprints」、9曲目にマイルス・デイヴィスの「So What」が収録されているのが特徴的。4曲ともメインストリーム・ジャズの中でも高度な曲ばかりなんだが、このDerek Trucks Bandは事も無げに、素晴らしい演奏を展開している。
トラックスのギターはロック寄りのアドリブ・フレーズなので、ファンクネスは希薄なんだが、疾走感、節回し、展開の機微はメインストリーム・ジャズそのもの。スマートでシンプルなジャズロック的なギターで、特に、前述のジャズメン達によるオリジナル曲についての演奏は明らかにメインストリームなジャズ・ギターと言って良い。
他のトラックスのオリジナル曲についても、コッテコテのサザン・ロックというよりは、米国ルーツ・ミュージックの要素を的確に取り込みつつ、トラックス自身のオリジナリティーをしっかりと前面に押し出した、トラックス自身の唯一無二なギター・プレイが魅力的。ロック・ギターというよりは、フュージョン・ギターという雰囲気が個性的だ。
デレク・トラックスって1979年生まれなので、このデビュー盤の『The Derek Trucks Band』のリリース時、18歳の若さだった。18歳の若さで、メインストリーム・ジャズの中でも高度な曲を事も無げに涼しい顔で弾き回していく力量と才能に、このアルバムを初めて聴いた時には、思いっきり呆れたものだった。以降、僕はデレク・トラックスのギターのマニアで有り続けている。
震災から4年9ヶ月。決して忘れない。まだ4年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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