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2015年12月の記事

2015年12月29日 (火曜日)

来年はジャズ・オルガンを攻める

今晩は今年のジャズの聴き納め。最近では、来年のジャズ盤聴きの志向を明確にするアルバムを聴き納めに聴く様にしている。来年はジャズ・オルガンと極めたい、と思って、このアルバムを選んだ。

John Scofield『A Go Go』(写真)。1998年のリリース。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), John Medeski (org, p), Chris Wood (b), Billy Martin (ds)。ジョン・メデスキのオルガン参入が目を惹く。いやいや、ドラムがマーチン、ベースがウッド。あれれ、メデスキ、マーティン&ウッド(Medeski, Martin & Wood)の皆さんとの競演ですか。

もともと、ジョン・スコフィールド、こと「ジョンスコ」のギターは大好き。そんなジョンスコのギターに大好きなジャズ・オルガンの音が絡むのだから、これは堪らない。ファンクネス満点なジョンスコのエレギが素敵である。

ジョンスコのエレギは、それはそれは素敵に「捻れる」のだが、その捻れにメデスキのオルガンが絶妙に絡む。そこに、ビリー・マーチンのドラムがドコドコ煽り、クリス・ウッドのベースがうねりにうねる。そこはもう「大ファンキー・ジャズ・ギター大会」である(笑)。
 

A_go_go

 
メデスキのオルガンがポイント。マーチンのドラムとウッドのベースを伴って、メデスキのハモンド・オルガンはハモンドらしからぬ、ストレートでコキコキなフレーズで、鋭角に攻めてくる。

そこに捻りに捻れたジョンスコのエレギがグニョンと絡む。そして、そこにファンクネスがブワーッと拡がる。すっきりスリムなファンクネス。グルーブ感も半端ない。

ジョンスコのファンク路線の作品。その「こってこてのファンクネス」を増幅するメデスキのハモンド・オルガン。いやいや、ジャズ・オルガンって良いですね。やっとこのところ、ジャズ・オルガンを極める為のアルバム蒐集が進んで、いよいよ来年はジャズ・オルガンを攻めます。

いや〜やっぱりジャズって良いですね〜。それでは良いお年をお迎え下さい。

 
 

震災から4年9ヶ月。決して忘れない。まだ4年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2015年12月28日 (月曜日)

要注意のピアニストの出現・2

今日の話題は昨日の続き。来年以降、要注意のジャズ・ピアニストの出現その2である。僕が「これは」と思うのは、ジャズ・ピアニストが主。この人もピアニストである。

そのピアニストとは「Fred Hersch(フレッド・ハーシュ)」。ネットの紹介記事では「ピアノの詩人」と喩えられている。1955年オハイオ州シンシナティ生まれ。今年で60歳になる。もちろん新人では無い。でも、僕は今年になるまで、このピアニストの存在を知らなかった。

その独特の奏法と創造のアイデアのユニークさで「ピアノの詩人」などと評され、1980年代以降のピアニストの中で、最もエヴァンスイズムを受け継いだと言われる。耽美的でリリカルなピアノの最右翼の一人である、とのこと。へ〜、そうなんだ。

そんなフレッド・ハーシュと出会ったアルバムが、今年の新譜である、Fred Hersch『Floating』(写真左)。2014年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、Fred Hersch (p), John Hebert (b), Eric McPherson (ds, per)。演奏曲は、オリジナル7曲に、スタンダード等3曲で全部で10曲と言う構成。

1曲目の有名スタンダード曲「You and The Night and The Music(あなたと夜と音楽と)」を聴けば、そのユニークさが良く判る。冒頭のテーマの部分から、ちょっと違和感のある響きに「えっ」となる。なんか変やなあ、何が変なんやろう、と思ってじっくりと聴き耳を立てると、左手がブロックコードでは無い。
 

Fred_hersch_floating

 
左手が動く。左手が旋律を奏でていく。右手もテーマの旋律を奏でる。左手は単音でベースラインを奏でていく。対位法のような響きもするが、それよりも右手と左手が自由に動きつつ、全体のテーマを立体的に聴かせる、そんな、あまり今までに聴いたことの無い響き。思わず「ドキドキする」。

独特の奏法もさることながら、ハーシュのピアノの響きの美しさも特筆もの。ピアノが前に出て、ベースとドラムが追従するオーソドックスなピアノ・トリオとしての展開あり、逆に3人対等にインプロビゼーションを繰り広げる、自由度の高いピアノ・トリオとしての展開もあり、確かに「耽美的でリリカルなピアノの最右翼」として目されていることも納得出来る。

彼がBrad Mehldauのメンターであるということも納得。今まで何でこのピアニストに出会うことが無かったのか、不思議でならないし、ちょっと後悔もしている。これだけ聴き応えがあって、これだけ聴きどころ満載のピアニストも珍しい。遅まきながら、良いピアニストに巡り会えた。

重篤な病に倒れたのは2007年。昏睡状態が2ヵ月に及んだとのことである。一時は再起不能ともいわれたが、2010年のアルバム『Whirl』で完全復活を果たした。そして、2014年のこの『Floating』である。来年以降、要注意のジャズ・ピアニストの出現である。早々に彼のアルバムは全て、聴き込む必要がありそうだ。

 
 

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2015年12月27日 (日曜日)

要注意のピアニストの出現

今年、ジャズの新譜を聴いていて、何人かの、これは、という逸材に出会った。こういう逸材に出会う瞬間、というのがあるので、ジャズはまだまだ聴き飽きることが無い。ジャズは生きている、ということを実感する。

特に僕が「これは」と思うのは、ジャズ・ピアニストが主。自分でも少しだけピアノを弾けるので、ジャズ・ピアニストの個性というものが、多少の実感を持って感じることが出来る。そのテクニックの難易度、弾き回しの個性を他の楽器よりは、自分でも良く判ると思っている。

さて、そんな今年出会った逸材の一人が「Yaniv Taubenhouse」。「ヤニフ・タウベンハウス」と読む。ここでの愛称は「ヤニフ」としたい。イスラエルはテルアビブの出身。最近、ジャズ界のトレンドになってきた「イスラエル・コネクション」からのピアニストの逸材である。

僕はヤニフのデビューを見逃している。ヤニフは、2013年に『Here From There』でデビューしている。このアルバムも聴き返せば、実に個性的なピアニストの登場を教えてくれている好盤なんだが、特にスタンダード曲の解釈にその個性が滲み出ている。

そして、僕が今年、このヤニフに出会ったアルバムがこれ。Yaniv Taubenhouse『Moments in Trio, Vol.1』(写真左)。パーソネルは、Yaniv Taubenhouse (p), Rick Rosato (b), Jerad Lippi (ds)。2015年5月18日の録音。ヤニフのセカンド盤になる。
 

Moments_in_trio_vol1

 
まず、ジャケットが良い。雰囲気的には「ブラッド・メルドー」を意識していると見た。実に雰囲気のあるジャケット。こういうジャケットって、決して期待を裏切らない。いわゆる「ジャケ買い」の対象である。

さて、このアルバムを聴いてみると、確かにジャズ・ピアノとして新しい響き、新しい個性を聴くことが出来る。演奏の傾向としては、バリバリ弾きまくる「バップ的」なピアノでは無く、ビル・エバンスに端を発する、間を活かした「耽美的」なピアノの傾向を踏襲している。

ピアノの響き的には「キース・ジャレット」を想起するが、アドリブ・フレーズの展開はキースとは全く異なる。どちらかと言えば「ブラッド・メルドー」的なアドリブ展開の志向ではあるが、メルドーほどにウェットでは無い。しかし、このヤニフのピアノを聴いて思うのは「遂にキースのピアノはレジェンドになった」という感覚。

それほど、ヤニフのピアノは、ジャズ・ピアノの現代の響き、トレンドを十分に吸収し、ヤニフなりに再構築している。響きや展開の傾向はそれまでのジャズ・ピアノのスタイリストの個性を上手く取り入れているものの、最終的には「今までに聴いたことの無い」響きとアドリブ展開の志向を獲得している。

来年以降、要注意のジャズ・ピアニストの出現である。今一度、デビュー盤の『Here From There』とこの新譜の『Moments in Trio, Vol.1』は十分に聴き込む必要がありそうだ。

 
 

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2015年12月26日 (土曜日)

ジャズの中堅もまだまだ活躍です

いよいよ今年も押し詰まってきた。今年もあと5日。今年もずっとジャズを聴き続けて来た。ジャズ界もなんとか、その活気を維持してきた。ジャズの廉価盤が意外とヒットしているらしい。ジャズはまだまだ「いける」のかもしれない。

ジャズの中堅どころもまだまだ活躍している。今年の新譜の中で、このアルバムを聴いて嬉しく思った。Benny Green『Live in Santa Cruz』(写真左)。カリフォルニアのサンタクルーズにあるKuumbwa Jazz Centerでのライブ音源。ちなみにパーソネルは、Benny Green (p), David Wong (b), Kenny Washington (ds)。

ピアニスト、ベニー・カーターが2013年4月4日、50歳の記念にライヴ録音したのが本作になる。ベニー・グリーンは、80年代初頭、20歳で頭角を現し、ベティ・カーターのグループに加入、1987〜89年には、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズで活動。1991年からは自身のトリオを結成し現在に至る。

僕はこのベニー・グリーンのピアノが好きで、以前から新譜に触れる度にアルバムを聴いてきた。彼のピアノはスインギー。左手のベースラインからはそこはかとなくファンクネスが漂う。バラード演奏はブルージーな雰囲気濃厚、アップテンポの演奏はビ・バップを彷彿とさせる正統派なドライブ感。

レイ・ブラウンからオスカー・ピーターソンの後継者と指名されたり、その正統派なジャズ・ピアノは「メインストリーム・ジャズ」なピアノ、ど真ん中である。このところ、彼の個性も十分に成熟して、そのプレイを聴けば彼のものと判るレベルのものになったと感じている。このライブ盤を聴いていて、本当に良いピアニストになったなあ、と心から思った。
 

Live_in_santa_cruz

 
テクニックのレベルは申し分無し。歌心もあって、ファンクネスも十分。1950年代のハードバップなピアノを焼き直した、ネオ・ハードバップなピアノが実に美しい。オスカー・ピーターソンの後継と指名されたことが納得できる、惚れ惚れするほどのドライブ感。年齢的にも一番良い時代のベニー・グリーンのピアノを思いっきり堪能できます。

ベニー・グリーンは、僕がジャズを聴き始めてから頭角を現したジャズ・ピアニストなので、デビュー盤の頃からずっと聴いてきたのですが、このライブ盤『Live in Santa Cruz』を聴いて、本当に良いジャズ・ピアニストになったと嬉しくなりました。

また、最後になりましたが、リズム・セクションの二人の演奏も素晴らしいものがあります。ベニー・グリーンと比べると20歳も年下になるんですが、そんな若さを感じさせない、どっしりと構えたベースラインが頼もしいデヴィッド・ウォンと、ネオ・ハードバップの中で屈指のドラマーとして、その味わい深いドラミングが魅力のケニー・ワシントン。この二人がガッチリとリーダーのベニー・グリーンのピアノを支えます。

2015年もそろそろ終わるが、ジャズの中堅どころの活躍を聴くにつけ、ジャズもまだまだ捨てたもんやないなあ、と思った。ジャズメンそれぞれの個性も楽しいし、そのテクニックにはいつも驚かされる。ジャズはまだまだ生きている、そう思う2015年の年の暮れである。

 
 

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2015年12月25日 (金曜日)

僕の「究極のクリスマス盤」

僕にとっての「究極のクリスマス盤」は、Simon & Garfunkel『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』(写真左)。1966年のリリース。S&G初の米国のビルボードトップテン入り(最高位4位)した名盤である。即席であった前作『Sound of Silence』とは違い、じっくり腰を据えて制作された本作の完成度は非常に高い。

アルバム・タイトルは英国民謡「スカボロー・フェア」の歌詞の一節からの引用。その英国民謡「スカボロー・フェア」でこのアルバムは幕を開ける。繊細で美しいメロディに思わず聴き惚れてしまうが、2曲目以降の曲を聴き進めるにつれ、このアルバム、そんな甘さなど無縁なのに気付く。

このアルバムがリリースされた1966年の米国は政治的に混沌とした時代。このアルバムは、ほのぼのとした長閑な音世界では無く、社会の矛盾や不正を告発する「メッセージ」が織り込まれた、実に硬派で骨のあるフォーク・ソング集になっている。

冒頭の「スカボロー・フェア」を聴けばそれが良く判る。単に英国民謡をデュオで唄っている訳では無い。正式なタイトルは「スカボロー・フェア/詠唱」。ポール・サイモン作詞作曲の「サイド・オブ・ア・ヒル」のものを「詠唱」として「スカボロー・フェア」と対比させることによって、秀逸な反戦歌に仕上がっている。

この「スカボロー・フェア/詠唱」に感じ入って、2曲目以降になだれ込む。「Patterns」「Cloudy」「Homeward Bound」と社会風刺、望郷の歌。続いて「The Big Bright Green Pleasure Machine」「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」「The Dangling Conversation」「Flowers Never Bend with the Rainfall」。
 

Parsley_sage_rosemary_and_thyme

 
ジャズっぽいコード感を持った曲や前衛的なパーカッション、内省的で沈着なムードが漂う風刺的な曲もあれば、歌詞の面白さを十二分に楽しませてくれる曲もある。「A Simple Desultory Philippic (Or How I Was Robert McNamara'd into Submission)」「For Emily, Whenever I May Find Her」「A Poem on the Underground Wall」と続く。

そして、何と言ってもこのラストの曲である。「7 O'Clock News / Silent Night」。邦題「7時のニュース/きよしこの夜」。これは強烈な印象を残してくれる、究極のクリスマス・ソングである。

S&Gの厳かな「きよしこの夜」が流れる中、そのバックにニュースのアナウンスが流れている。公民権法の法案、レニー・ブルースの訃報、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアのデモ行進の予定、リチャード・スペックの公判、ベトナム戦争の反対運動。

この曲を初めて聴いたのが中学生の時。バックのニュースがどんな内容なのか判りませんでしたが、その雰囲気は、明らかに「きよしこの夜」の対極にある内容なんだろう、ということはアナウンサーの口調から想像できました。

そして、そのバックのニュースの内容をしっかりと理解したのは高校1年生の冬、思わず旋律が走りました。敬虔さ、神聖さ、楽しさが中心のクリスマス・ソングとは対極にある、社会の矛盾、課題を突きつける究極のメッセージ・ソングがここにあります。そして、歌が終わった直後にニュースのアナウンサーが一言「Good Night」。

なんとも言えない「いいようの無い無念さと虚しさ」と同時に「明日の希望を感じる余韻」が漂います。このアルバムは僕の「究極のクリスマス盤」。必ず、12月25日、クリスマス・シーズンの締めに聴くアルバムです。

 
 

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2015年12月24日 (木曜日)

マントラの秀逸なXmas曲集

ジャズのソロ・ボーカルやコーラス・グループについては「Xmas曲集」が出しやすい。もともとXmas曲って、歌詞があって唄があって、という曲がほとんどだからね。メジャーどころのボーカリスト、コーラス・グループは、その活動の歴史の中で、必ず一枚は「Xmas曲集」を制作しリリースしている。

僕の長年お気に入りのジャズ・ボーカル・グループ、マンハッタン・トランスファーも「Xmas曲集」を出している。その「Xmas曲集」とは、Manhattan Transfer『The Christmas Album』(写真左)。

1992年のリリースになる。Manhattan Transfer=マンハッタン・トランスファー、略して「マントラ」なんだが、マントラは1972年の結成なので、結成20周年にして、満を持してのXmas曲集のリリースである。

Xmas曲集をリリースしてこそ、名実共にメジャーな存在になる、と言われるだけに、この1992年のマントラのXmas曲集のリリースについては「よかったな〜」って「万感の想い」を感じたことを覚えている。マントラについては、デビュー盤の『Manhattan Transfer』から聴き続けてきたからなあ。
 

Manhattan_trasfer_christmas

 
さすがに結成後20年経ってからの「Xmas曲集」である。その内容の充実度合いと来たら、それはそれは素晴らしい出来である。「Xmas曲集」ということを離れて、ジャズ・コーラスの好盤としても十分に鑑賞に耐える、逆に言うと、このアルバムを「Xmas曲集」として留めるには勿体ないくらいの内容の充実度となっている。

ジャズの「Xmas曲集」の成否は、ひとえにアレンジにかかっていると言えるが、このマントラの「Xmas曲集」はアレンジが秀逸。フルオーケストラやコーラスをバックにしたアレンジが素晴らしい。「Xmas曲」は皆が知っている、キャッチャーで、ちょっと俗っぽい旋律が多いので、アレンジに手を抜くと、途端に「陳腐なXmas曲」に陥ってしまう危険性を孕んでいる。

そういう点では、このマントラの「Xmas曲集」については全く問題無い。というか、アレンジが優れている分、俗っぽい「Xmas曲」ですら、高尚で敬虔なジャズ・コーラスに早変わりする。適度に洒落ていて小粋なジャズ・コーラスに昇華して、それはそれは思わず聴き惚れてしまう位の典雅でモダンな雰囲気。

このマントラの「Xmas曲集」は、マントラの実力の素晴らしさを再認識させてくれる、素晴らしい内容のアルバムに仕上がっています。ジャジーで高尚で敬虔、適度にお洒落で小粋なコーラスが奏でる「Xmas曲集」。ジャズ・ボーカルの好盤としてもお勧め。

それでは「Merry Christmas」。

 
 

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2015年12月23日 (水曜日)

スムース・ジャズのXmas曲集盤

メインストリーム・ジャズ、いわゆる昔から続く純ジャズには、当然、クリスマス曲集という企画盤は多々あるんだが、1970年代のフュージョン・ジャズのフォーマットには、意外とクリスマス曲集という企画盤はほとんどみあたらない。

僕は1970年代のフュージョン・ブームはリアルタイムで体験しているのだが、1970年代の大ブームの時に、リー・リトナーやラリー・カールトンなど、フュージョン・ギターの人気者や、フュージョンの名アレンジャーとして成らしたボブ・ジェームスやデイブ・グルーシンがクリスマス曲集の企画盤をリリースしたという話は聞かなかったなあ。

21世紀になって振り返ってみると、フュージョン・ジャズから枝分かれして進化した「スムース・ジャズ」のジャンルで、クリスマス曲集の企画盤が出ていることに気がつく。クリスマス曲集の企画盤って、そのアレンジや演奏内容などの優劣が重要で、チープな無い様なものは聴くに堪えないので選盤には気を付けなければならない。

そんなスムース・ジャズのジャンルの中でのクリスマス曲集の企画盤で、これはええなあ、と感心して聴き続けているアルバムが幾枚かある。その一枚が、Dave Koz『Ultimate Christmas』(写真左)と、Shakatak『Christmas Collection』(写真左)。この2枚は最近のクリスマスシーズンにおけるお気に入り盤である。

Dave Koz『Ultimate Christmas』は、2011年のリリースで、デイヴィッド・ベノア、ブレンダ・ラッセル他、スムース・ジャズ界の一流ミュージシャンも参加しており、内容的に充実した、アレンジ、テクニック共に申し分無いクリスマス曲集に仕上がっている。

リーダーのコズのアルトは素直にスッと伸びた、耳当たりの良い響きが個性のアルト。一聴すると、サンボーンか、と思うが、その音の「スッと伸びる」伸び具合がサンボーンよりシンプル。捻りや小節が無いシンプルさがコズの個性。そんな耳当たりの良いアルトがクリスマス曲のキャチャーなフレーズを慈しむように吹き上げていく。
 

Koz_shakatak_xmas

 
Shakatak『Christmas Collection』は、これも2011年のリリースで、日本独自企画によるシャカタクのクリスマス曲集のベスト盤。シャカタクは英国のフュージョン〜スムース・ジャズの老舗バンドで、流麗な旋律とアレンジに優れたバンドである。

そんなシャカタクが、1990年代に発表した3枚のクリスマス曲集盤を再編集したもの。21世紀にもなって、日本のレコード会社も酔狂な企画をするもんだ、と思うんですが、これがなかなかの内容になっているのだから面白いですね。

もともとのシャカタクの演奏自体のクオリティーは高いので、クリスマス曲集といっても聴き応えはある。今の耳で聴いても、全く古さは感じないし、十分にスムース・ジャズの秀作として通用する内容の濃さである。クリスマス曲集という企画盤ではあるが、意外と洒落た内容になっています。

収録曲を見渡すと、山下達郎「クリスマス・イブ」、KUWATA BAND「メリー・クリスマス・イン・サマー」、辛島美登里「サイレント・イブ」のJ-POPのクリスマス曲をカバーしています。これはまあご愛嬌ってことで。

スムース・ジャズのジャンルの中で、これはええなあ、と感心して聴き続けているXmas曲集盤で、今年もクリスマス・シーズンを楽しんでいます。今日ご紹介した数少ないスムース・ジャズのXmas曲集盤、なかなかの好盤です。

 
 

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2015年12月22日 (火曜日)

マルサリスお父さんのXmas曲集

このクリスマス曲集はほのぼのして心に沁みる。同じジャズでもアレンジと弾き手のキャラクターによって、ここまで雰囲気がガラッと変わる。ジャズって面白いなあと思う。

そのクリスマス曲集盤とは、Ellis Marsalis『New Orleans Christmas Carol』(写真左)。一昨日ご紹介した、Winton Marsalisの父君がリーダーである。ちなみにパーソナルは、Ellis Marsalis (p), Bill Huntington (b), Jason Marsalis (ds, vib), Roman Skakun (vib), Cynthia Thomas, Johnaye Kendrick (vo)。マリサリス家の末弟、ジェイソンが参加している。

温かく優しいピアノではあるが、演奏全体のアレンジは、要所要所、ニューオリンズ・ジャズの要素が見え隠れする優れもの。最初は、良いところで「おやっ」と思う程度のニューオリンズ・スタイルの演奏が出てきて、これが要所要所にちりばめられていて、最後には「うぅ〜ん、これは粋なクリスマス・ジャズやなあ」ということになる。

オールド・スタイルのジャズ・アレンジがこんなにクリスマス曲に合うとは思わなかったなあ。でも、基本的には宗教音楽、賛美歌、ゴスペルの雰囲気が色濃いのがクリスマス曲ではあるので、そういう意味ではニューオリンズなどのオールド・スタイルのジャズ・アレンジにはピッタリなのは合点がいくと言えば合点がいく。
 

A_new_orleans_christmas_carol

 
加えて、ヴァイブの音が効いています。なるほど、クリスマス曲にはヴァイブの音色が合うのか。目から鱗でございます。ヴァイブの明快な音色がクリスマス曲のキャッチャーなフレーズをクッキリと浮かび上がらせています。良い感じやなあ。

基本的に、明るく楽しいクリスマス曲集に仕上がっています。これって、エリス・マルサリスの人柄そのものでしょう。お父さんのピアノは明るさや希望を感じさせてくれて、聴いていてほのぼのとしてしまいます。良い感じのクリスマス曲集で、我がバーチャル音楽喫茶『松和』ではこの季節、ヘビロテ盤になっています。

ウィントンなど、エリス・マルサリスのご子息達のように、生真面目で頭で考えるようなジャズとは対極の「本来のオールド・スタイルのジャズ」がこのアルバムに詰まっています。このアルバムでのエリス・マリサリスのピアノは、単にクリスマス曲集」で留めておくには勿体ない「味のある小粋な」ピアノです。

優しいお父ちゃんがピアノでクリスマス曲を、味のある小粋なピアノで弾いていってくれる、って、感じ。聴いていて「幸せ感」感じる好盤だと思います。

 
 

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2015年12月21日 (月曜日)

ジャズロックは進化している

ジャズは何も昔の「文化遺産」ばかりを聴くだけでは能が無い。新しいジャズメンをアルバムを聴くことも大切である。「今のジャズ」に触れることによって、昔のジャズを再確認する。いわゆる「温故知新」である。

最近聴いた今年の新譜の中で、このアルバムにはたまげた。Wayne Krantz『Good Piranha / Bad Piranha』(写真左)。内容的には明らかにジャズロック。リーダーのクランツのエレギは明らかにロック畑。このアルバムはいわゆる「ロックからジャズへのアプローチ」。ジャズからロックのアプローチの様に粘っこくなく、サラッとした「クロスオーバーなジャズロック」。

リーダーのウェイン・クランツは、ニューヨークで最も注目を集めているギタリストの一人。昨今はスティーリー・ダンのツアーに参加したり、ドナルド・フェイゲンの最新作「Morph The Cat」に参加するなど、サイドメンとしての活躍も目覚ましい。ロックからジャズへのアプローチ」。いわゆる、ジェフ・ベックやアラン・ホールズワースと同類である。

独特の音色を持ったエレギで、ドライ感があって、エフェクトが効果的で音の広がりと漂い方が個性的。ロック然としたコードリフで周りをプッシュし、飛翔感を醸し出す。適度なうねりを伴ったグルーブは「サラッとしたファンクネス」。
 

Good_piranha_bad_piranha

 
どこかにありそうな音色なんだが、いろいろ振り返った挙げ句、これって新しいエレギの音色なんだ、ということに落ち着く、温故知新なエレギの音色。テーマやアドリブの展開よりも。変幻自在なグルーブ感でグイグイと惹きこむ様なフレーズを畳みかけるクランツのエレギは唯一無二。

このアルバムの収録曲はユニークな構成で、盟友キース・カーロック(ds)と、ネイト・ウッド(b)、ティム・ルフェビュール(b)という二人のベーシスト(ネイトは後半4曲でドラムを担当)をそれぞれ起用した「2種類のトリオ」で、全く同じ4曲を順に演奏したもの。

聴いていただかないとそのニュアンスが伝わらないが、どちらのトリオ演奏もそれぞれの個性が滲み出ていて興味深く、そんな二つのトリオで、ウェイン・クランツのエレギの個性は全く揺らぎが無い。個性的な「サラッとしたファンクネス」を主体としたエレギのフレーズは明らかに「ジャズロック」。

このクランツの新譜を聴いていて、21世紀のジャズロックを感じました。「ロックからジャズへのアプローチ」なジャズロック。20世紀のジャズロックとはちょっと雰囲気が異なる、新しい響きと音色が詰まったジャズロック。ジャズロックの進化がこのアルバムに詰まっています。

 
 

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2015年12月20日 (日曜日)

ウィントンらしいXmas曲集

この頃の季節になると、クリスマス曲が街中に流れる様になる。クリスマスの言葉が聞ける季節になると、今年も押し詰まってきたなあ、と感慨深い思いに包まれる。なんだかしみじみしてしまう。

クラシックのジャンルでは、クリスマス曲と言えば、バロック系のバッハとかの宗教音楽系や賛美歌がメインになる。クラシックについては、さすがに歴史があるジャンルなので、曲のバリエーションが豊富。それでも曲の作りはバロック時代のものが殆どなので、飽きると言えば飽きる。

ポップスのジャンルでは、定番のクリスマス・ソングをカバーするが、アレンジが一様なのであまり面白く無い。ポップスで採り上げられる曲は、スタンダード系で数十曲で、様々なミュージシャンが寄ってたかって、その数十曲を一様なアレンジでやるもんだから、基本的に飽きる。

ジャズのジャンルについては、採り上げられる曲の数については、ポップスと事情は似たり寄ったりなんだが、アレンジのバリエーションが圧倒的に豊富だ。ジャズの演奏スタイルについても数十種類のスタイルがあり、ジャズメンの数だけ個性がある。同一曲でも同じアレンジ、表現になることは無く、そういう意味では一番飽きが来ない。

例えば、このアルバムは、そんなジャズのジャンルにおけるクリスマス曲のアレンジの面白さを伝えてくれる。Wynton Marsalis『Crescent City Christmas Card』(写真左)。1989年リリースの、ジャズ・トランペットの貴公子、ウィントン・マルサリスの初クリスマス・ソング集である。
 

Crescent_city_christmas_card

 
この頃のウィントンは「自分のルーツ探し」にご執心の時期で、ブルースだのディキシーだの、ジャズのルーツと言われる米国ルーツ・ミュージックに触手を伸ばしていて、このクリスマス曲集でも、内容的にはオールド・ジャズをベースにしたスタイルのアレンジで固めている。いわゆる「ニューオリンズらしさ」を出したデキシーランド・ジャズなスタイルの演奏が特徴的。 

とにかく優秀なメンバーを集めて、優等生なウィントンが完璧なテクニックと理屈っぽいアレンジを施して制作したクリスマス曲集である。とにかく全編、ある種の「生真面目さ」が充満している。思わず襟元を正して聴いてしまう、そんな堅苦しさはある。

しかし、聴いて楽しいばかりがジャズでは無い。このアルバムには、真摯なジャズを前提にした、ある種、敬虔な雰囲気が漂う、優れたクリスマス曲集に仕上がっている。ポップスのクリスマス曲集の様な楽しさは無いが、メインストリームなジャズとしては聴き応えのある作品ではある。

このクリスマス曲集は、ダイレクトに当時のウィントンらしさが反映された作品でしょう。しかし、サンタの格好をして、トランペットを片手にはにかんでいるウィントン・マルサリスの写真をあしらったアルバム・ジャケットには、いつもながら「ひき」ますね〜(笑)。

 
 

震災から4年9ヶ月。決して忘れない。まだ4年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2015年12月19日 (土曜日)

サザン・ロックのジャズ・ロック

僕が高校時代、1970年代半ば辺りで、サザン・ロックのプチ・ブームがあった。Allman Brothers Band(オールマンズ)やLynyrd Skynyrd(レイナード・スキナード)のアルバムがロック雑誌で紹介されたりして、僕達ロック小僧は、この時初めて、サザン・ロックの存在を知った。

サザン・ロックは、カントリーやブギウギ、ブルース、R&Bなど、アメリカ南部の土臭い音楽を前面に押し出したロック、と解釈される。いわゆる米国ルーツ・ミュージックの中で、米国南部中心に定着しているものをベースにしたロックである。こういうサザン・ロックって、ジャズとは全く無縁なんだろうな、と思うんだが、それがなかなか、そうでは無いから音楽って面白い。

デレク・トラックス(Derek Trucks)というギタリストがいる。オールマンズのオリジナル・メンバーであるブッチ・トラックスの甥。1999年に、オールマンズの正式メンバー、ギタリストとして迎えられた。この若きギタリストが意外とジャズ、フュージョンに近いプレイスタイルをしているのだから面白い。

彼のギターは、ロックとブルースをベースとしつつ、マイルス・デイヴィスの「So What」やジョン・コルトレーンの「Mr P.C」をカバーするなど、ジャズへの造詣が深い。加えて、サン・ラなどにも影響を受けるなどフリー・ジャズ、さらにインド・アラブ音楽などにも適用する、幅広い音楽性が特徴。

そんなトラックスの1997年のリリースのデビュー盤、Derek Trucks Band『The Derek Trucks Band』(写真左)を聴けば、ジャズやフュージョンにも適用した、そんな多様性のある魅力的なギター・プレイを堪能することが出来る。
 

Derek_trucks_band

 
2曲目にジョン・コルトレーンの「Mr. P.C.」、8曲目に同じくコルトレーンの「Naima」、6曲目にウェイン・ショーターの「Footprints」、9曲目にマイルス・デイヴィスの「So What」が収録されているのが特徴的。4曲ともメインストリーム・ジャズの中でも高度な曲ばかりなんだが、このDerek Trucks Bandは事も無げに、素晴らしい演奏を展開している。

トラックスのギターはロック寄りのアドリブ・フレーズなので、ファンクネスは希薄なんだが、疾走感、節回し、展開の機微はメインストリーム・ジャズそのもの。スマートでシンプルなジャズロック的なギターで、特に、前述のジャズメン達によるオリジナル曲についての演奏は明らかにメインストリームなジャズ・ギターと言って良い。

他のトラックスのオリジナル曲についても、コッテコテのサザン・ロックというよりは、米国ルーツ・ミュージックの要素を的確に取り込みつつ、トラックス自身のオリジナリティーをしっかりと前面に押し出した、トラックス自身の唯一無二なギター・プレイが魅力的。ロック・ギターというよりは、フュージョン・ギターという雰囲気が個性的だ。

デレク・トラックスって1979年生まれなので、このデビュー盤の『The Derek Trucks Band』のリリース時、18歳の若さだった。18歳の若さで、メインストリーム・ジャズの中でも高度な曲を事も無げに涼しい顔で弾き回していく力量と才能に、このアルバムを初めて聴いた時には、思いっきり呆れたものだった。以降、僕はデレク・トラックスのギターのマニアで有り続けている。

 
 

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2015年12月18日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・73

このアルバムの音源をずっと探していた。2度ほどCDでリイシューされたのだが入手できず。リイシューされた中古CDは高額で手が出ず。いよいよLPに手を出すしか無いか、と思っていたら、ひょんなことから音源が手に入った。

そのアルバムとは、Arthur Blythe『Illusions』(写真左)。1980年の作品。Arthur Blythe (as), Abdul Wadud (cello), James Blood Ulmer (g), Bob Stewart (tuba),  John Hicks (p), Fred Hopkins (b), Bobby Battle, Steve McCall (ds)。

楽器の構成を見れば、通常のジャズの作品では無いことは直ぐに判る。チェロがある、チューバがある、この辺はギル・エバンスに通ずる楽器構成。バンドの音に深みが出来て、彩りが豊かになる。

そして、ギターにアバンギャルド・ギターのウルマーが参加し、アブストラクトとメインストリームの両刀遣いのピアニスト、ジョン・ヒックスがいる。重低音なブンブン・ベースのホプキンスがいる。この面子を見ただけで、このアルバムに詰まっているジャズは、純ジャズでもなければ、録音当時、流行していたフュージョン・ジャズでもない。

エレクトリック・マイルスの音をアコースティック楽器中心に置き直した感じのコンテンポラリーなジャズがギッシリ詰まっている。収録された曲の全てが、リーダーのブライスのオリジナル。

1曲目の「Bush Baby」を聴いただけで、このアルバムは「ただ者」では無いことが良く判る。チューバ、ギター、チェロ、ドラムスという独特のアンサンブルが刺激的で、ベースの入らない変則編成の「捻れてぶっ飛んだ」演奏に、思わず脳髄がギシギシ刺激されます。グチュグチュグチュなウルマーのギターが堪らない。
 

Illusions

 
2曲目の「Miss Nancy」とラストの「As of Yet」では、逆にベースのホプキンスが参入して大暴れ。重低音を振り撒いて、すさまじいドライブ感が爽快なベースは唯一無二。無敵の超弩級のエレベです。怒濤の様なウォーキング・フレーズ。

タイトル曲「Illusions」は、337拍子ならぬ、223拍子と334拍子が混ざった変則拍子な「捻くりまくった」限りなく自由度の高い演奏。新しい感覚に耳を奪われる。今の耳で聴いても、新しい感覚の音。

リーダーのブライスのアルトは切れ味良く、エッジが「立った」音。適度にヴィブラートがかかって、尖りまくったフレーズが「ただ者」ではない雰囲気を色濃く醸し出す。アバンギャルドな香りがかなり色濃い反面、不思議と聴き易さもあって、捻れてぶっ飛んだ」演奏ばかりなアルバムですが、意外とすんなりと一気に聴き通してしまいます。

ロフトジャズの総決算だとか到達点だとか、当時は評価されていましたが、このアルバムは決してフリー・ジャズなアルバムではありませんし、アブストラクトなジャズ盤でもありません。僕の耳には、メインストリームなジャズにカテゴライズされていて、その「捻れてぶっ飛んだ」フレーズの連続の心地よさに、思わず「ヘビロテな盤」になっています。

いや〜、やっぱりこの盤は良いですね。ずっと探していて探し疲れて諦めかけていた時に、ラッキーにもひょんなことから音源が手に入って、ほんまにラッキーでした。今年の我がバーチャル音楽喫茶『松和』の10大ニュースの上位に位置するリイシュー音源ゲットでした。

 
 

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2015年12月17日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・28

こういう、あっけらかんとして聴き易くて、テクニック優秀、歌心満載なスムース・ジャズも時には良い。特にギターの音色が良い。小春日和のジャズ喫茶の昼下がりにピッタリだ。

そんなギターの音色が印象的なスムース・ジャズのお気に入りの一枚が、Joyce Cooling『Playing It Cool』(写真左)。1997年の作品。日本では人気が無いんですが、米国では結構人気のスムース・ジャズ・ギタリストだそうです。まあ、日本ではこの「スムース・ジャズ」というジャンルが人気無いので仕方が無いですかね。

改めて「Joyce Cooling(ジョイス・クーリング)」。米ニュージャージー出身の女性ジャズ・ギタリスト。ウェス・モンゴメリーの演奏に感動したことがきっかけにギターを学び出したとのこと。テクニックは確かなもので、一流のフュージョン・ギタリストである。今でも珍しい女性フュージョン・ギタリスト。ルックスもまずまず。

しかし、このアルバム『Playing It Cool』を聴いていると、そんなルックスが云々ということはどうでも良くて、確かなテクニックとキャッチャーでメロディアスなフレーズと爽快感溢れる音色が実に魅力的。
 

Playing_it_cool

 
誰かがネットで形容していたが、「ジョージ・ベンソンとウエス・モンゴメリーの個性を足して2で割って、聴き易い、ラジオ・フレンドリーでキャッチャーな音にアレンジした音」というのは「言い得て妙」です。

ディープな感情表現やファンクネスを極力排除して、リズム&ビートもライトな感覚で、要所要所でテクニックをしっかりと噛ましながら、耳当たりの良い、それでいてしっかりと芯の入ったアドリブ・フレーズには、思わず聴き耳を立ててしまいます。気合いを入れずにライト感覚で聴き流せるのが良い感じです。

バックの演奏をよくよく聴いていると、結構、しっかりとした、芯の入った演奏を聴かせてくれます。ベースもしっかりと重低音を響かせながらベースラインをガッチリとキープし、ドラムは打ち込みっぽくなりがちなスムース・ジャズのリズム&ビートのエッジをラウンドさせつつ、ちょっとアナログな香りを漂わせていて聴き心地良しです。

取り立てて大向こう張った仕掛けは全く無いスムース・ジャズですが、演奏全体のライトなリズム感覚と流れる様なギター・フレーズの爽快感が知らず知らずのうちに癖になる、そんな「スルメの様な魅力を持った」なかなかの好盤です。1980年代のAOR、フュージョン・ジャズのファンだった方々にお勧めです。

 
 

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2015年12月16日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・27

このテナーのワンホーン盤は、ジャズ喫茶の昼下がりに流すに最適なアルバムだと思います。実際に、音楽喫茶『松和』の昼下がりによくかけるアルバムです。意外とその存在、内容が知られていない好盤で、このアルバムをかけると必ずお客がジャケットを確認しにやってきます。「これ誰のテナー?」。

出だしの「Beyond the Bluebird」の演奏を聴いて、やっぱり、こういったリラックスしたテナーの演奏っていいよな、と改めて思います。しかも、テナーのスタイルは「オールド・スタイル」。太くスッと入って終わりでブブブッ。昔の明らかにビブラーよろしく、思いっきりズズズブブブッでは無い。素直に太くスッと入ってきて終わりでブブブッ。

このシンプルなオールド・スタイルなテナーの主はベニー・ウォレス。そして、聴いているアルバムはセルフ・タイトルの『Bennie Wallace』(写真左)。1998年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Wallace (ts), Tommy Flanagan (p), Eddie Gomez (b), Alvin Queen (ds) 。ウォレスのワンホーン・カルテットである。

まず、バックのリズム・セクションが良い。フラガナンのピアノ、ゴメスのベース、アルビンのドラム。名前を並べただけで、そのリズム・セクションの安定感と安心感が耳に浮かぶ。これはええぞ、と思わず頬が緩む。そんなピアノ・トリオである。このバックである。フロントのテナーは絶対に吹きやすいし、絶対に安定する。
 

Bennie_wallace

 
冒頭の「Beyond the Bluebird」を聴けばそれが良く判る。安定のリズム・セクション。それをバックに、悠然とリラックスして、大らかに吹き上げていくウォレスのテナー。テーマの旋律の吹き上げから、安定の「オールド・スタイル」。単純に「ジャズってええなあ」と心から思える余裕のブロウ。

ベニー・ウォレスは日本ではメジャーな存在では無い。アルバムもあまりリリースされていないし、常時、入手できるアルバムは僅少。最近、ダウンロード・サイトからデジタル音源でなんとか10枚程度のアルバムが常時入手できる様になったことは朗報だった。

しかし、彼のテナーは個性的。ジョン・コルトレーンのスタイルの対極にいる、テナーのスタイルとしてはメインストリーム・ジャズ系でオールドなスタイル。文章では表し難いが、フレーズはちょっと引っ掛かる様に滑らかに出てくる。スケールは幅広で大らか。太くスッと入って終わりでブブブッ。テナー・マンとしての個性は一流。

良いアルバム、良い「テナーのワンホーン盤」です。バックのリズム・セクションも味があって安定感があって、これも良し。ウォレスのテナーの個性を、ゆったりとリラックスしたブロウで愛でることが出来る好盤です。

 
 

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2015年12月15日 (火曜日)

真の「大人のフュージョン」

こういうアルバムを聴かされると「流石やなあ」と心から感心してしまう。そのバンドの面子を見渡すと、Bob James (key), Lee Ritenour (g), Nathan East (b), Harvey Mason (ds)。フュージョン・ジャズの立役者、レジェンドと呼んで良い強者ばかりがズラリと並ぶ。これは凄いなあ、と改めて感心する。

そのバンドとは「Fourplay(フォープレイ)」。1990年、ボブ・ジェームスのリーダー作「グランド・ピアノ・キャニオン」にて、4人揃ってセッションを行い意気投合しグループを結成。翌年にセルフ・タイトルでデビュー(2014年12月17日のブログ参照・左をクリック)。 http://v-matsuwa.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-675e.html

このデビュー盤は素晴らしい内容だった。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のフュージョン・ジャズである。とにかく、演奏のレベル、テクニックが異常に高い。そして、フレーズの洗練度合いが高い。リズム&ビートも当時として新しい響き。いずれも1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのレベルは軽く凌駕している。

こんな素晴らしいフュージョン盤を出して、メンバーがレジェンドと呼んで良いフュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人がメンバーである。2作目を出そうとするかなあ、と懐疑的に見ていた。次のアルバムのコンセプトが描きにくいのでは、と危惧した。そして、それならば「や〜めた」といきなり解散するのでは、と思って見ていたら、このセカンド盤がリリースされた。

セカンド盤とは『Between the Sheets』(写真左)。1993年のリリース。パーソネルがデビュー盤と同じ。このフュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人が、Fourplayとして2枚目のアルバムを出すとは思わなかった。嬉しい誤算というか、嬉しい不意打ちだった。で、このアルバム、更なるフュージョン・ジャズの進化形を提示してくれたのか、と思いきや、その予想は覆された。
 

Between_the_sheets

 
この『Between the Sheets』は、上質のスムース・ジャズである。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のスムース・ジャズである。レジェンドと呼んで良いフュージョン・ジャズの重鎮達が本気で取り組むと、これだけ上質で内容の濃いスムース・ジャズが創出される。そんなベテラン4人の矜持を強く感じさせてくれる、充実のセカンド盤である。

収録されたどの曲も、適度なテンションが張り巡らされ、ゆったりと歩くような余裕のリズム&ビートに乗って、決して速弾きでは無い、間と奥行きを活かした余裕のハイテク・フレーズが繰り出されている。丁々発止とやりあったり、悠然とフレンドリーにユニゾン&ハーモニーをかましたり、変幻自在、硬軟自在にスムースで印象的なフレーズを冷静にバッシバッシと叩き出して行く。

大向こうを張る大立ち回りがある訳では無い。どちらかと言えば地味で落ち着いた展開である。それでも、一度聴けば、また頭から聴き直したくなるような充実感がある。それだけ、内容的に充実し洗練され、かつ印象的な演奏が詰まっているんだろう。ちなみにボーカルは、Chaka KhanとPhillip Baileyがゲスト参加している。

真の「大人のフュージョン・ジャズ」。フュージョン・ジャズやスムース・ジャズなんてジャズじゃ無いという硬派なジャズ者の方々には絶対に受けないですが、往年のフュージョン・ジャズ者の方々でしたら、このアルバムは一聴の価値があるでしょう。オーディオ的にも良質なアルバムで、特にネイザン・イーストのベースの音が良好な音圧できめ細やか、クリアな低音が魅力的です。

 
 

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2015年12月13日 (日曜日)

Dave Grusinの傑作の一枚

1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのブーム。フュージョン・ジャズにおいては「アレンジ」という技は大変重要な位置を占める。電気楽器中心のフュージョン・ジャズは、音の重ね方、フロントとバックの演奏のバランスなど、アコースティック楽器中心のジャム・セッションには無い難しさがある。

そんなフュージョン・ジャズのアレンジャーとして、僕が一目置いてきたのは、ボブ・ジェームス、デイブ・グルーシン、デビッド・マシューズの3人。この3人には、ジャズ者初心者の頃、大変お世話になった。とにかく、素晴らしいアレンジなのだ。聴き易くて、味わいがあって、奥深さがある。

そんな味わい深さを強烈に感じさせてくれるアレンジャーが「デイブ・グルーシン(Dave Grusin)」。フュージョン・ジャズ、アダルト・コンテンポラリー及び映画音楽を代表するピアニスト、アレンジャー。ピアニストとしては、独特の音色とフレーズが特徴的で、一聴すればすぐ判るほどの個性。アレンジも音の重ね方、バランスが特徴的で、一聴すればすぐ判るほどの個性。

デイブ・グルーシンのキーボード、そして、アレンジにはファンクネスが希薄。逆に、クラシック音楽にも通ずる音の美しさ、煌めきが特徴。録音の傾向については、少し深めのエコーが叙情的でかつ印象的。そんな特徴、個性が一番出ているアルバムがこれだと感じている。

そのアルバムとは、Dave Grusin『Night Lines』(写真)。1983年のリリース。1983年と言えば、フュージョン・ジャズのブームも終焉を迎え、リリースされたフュージョン・ジャズのアルバムも内容的にはイマイチのものばかりがリリースされていた時代。そんな中、この『Night Lines』は白眉の出来で、他のアルバムを引き離してその内容は際立っていた。
  

Night_lines

 
ちなみにパーソネルは、Dave Grusin (p,syn), Ed Walsh (syn), David Sanborn (sax), Marcus Miller, Lincoln Goines (b), Buddy Williams (ds), Rubens Bassini (per), Phoebe Snow, Randy Goodrum (vo)。フュージョン・ジャズの著名なプレイヤーがズラリと勢揃い。フュージョン時代末期、圧巻のパーソネルである。

このアルバムは、リズム・セクションが打ち込み中心で作られている様で、アルバムの内容としては、グルーシンのアレンジとグルーシンのキーボードを中心に愛でる、グルーシンの、グルーシンによる、グルーシンの為のアルバムと言えるでしょう。フュージョン・ジャズの高テクニックな丁々発止とした演奏を期待する盤ではありません。

逆に、グルーシンのアレンジとキーボードを愛でるに、これだけ最適な盤は無い。アレンジとキーボードのグルーシンということのみに着目すると、このアルバムはデイブ・グルーシンの最高傑作に位置する盤ではないかと思っています。グルーシン独特の音色とフレーズ、音の重ね方、バランスが実に良く理解出来る、グルーシンを理解する為のアルバムですね。

アルバム全体の内容的には「フュージョン・ジャズ、ここに極まれり」という位の、フュージョン・ジャズの一つの完成形を我々に聴かせてくれます。良いアルバムです。フュージョン者の方々には是非一聴をお勧めしています。

 
 

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2015年12月12日 (土曜日)

ジョンの命日に思いを馳せる

気がつけば、今日は12月12日。もう既に今年も後20日を切った。今年は温かい冬の始まりで、昨日などは東京では最高気温が20度を超えたとのこと。史上3番目に大きいエルニーニョが発生しているとかで、今年は久し振りに暖冬になる確率が高い。

12月は僕にとって特別な月である。自分の人生において「決して迎合しない、自分の人生はできる限り自分でコントロールする、決して長いものには巻かれない」と強く思い、それが自分の信念として定着した衝撃的な事件が起きた月である。

「1980年12月8日、22時50分、スタジオ作業を終えたレノンとヨーコの乗ったリムジンがアパートの前に到着した。2人が車から降りた時、その場に待ち構えていたマーク・チャップマンが暗闇から「レノン?」と呼び止めると同時に拳銃を両手で構え5発を発射、4発がレノンの胸、背中、腕に命中し、彼は「撃たれた! (I'm shot!) 」と2度叫びアパートの入り口に数歩進んで倒れた。(Wikipediaより引用)」。

そう、ジョン・レノンが殺害されたのが「12月8日」。今年で35年になる。存命であれば、来年の2016年は75歳となる年。もうそんなに年月が経ってしまったのか。1980年当時、僕は22歳。大学3回生で、ジョンが狙撃された事件は大学生協の電化製品売り場のラジオ放送で知った。そして、ジョンの逝去をテレビの緊急ニュースで知った。

当時、ジョンのプライベートに関してはあまり感心しなかったが、彼の思想、音楽性については、大いに影響を受けていた。その精神的支柱的ミュージシャンが、全く関係の無い赤の他人に撃たれて、あっと言う間に生命を奪われた。しかし、まだ40歳の若さである。相当強い虚しさに襲われた。当時、相当にショッキングな事件だった。

さて、そのショッキングな事件を境に、自分の人生の信念を固めたわけだが、人生の節目節目において、ジョンの曲は常に僕を励まし、癒し続けてくれている。そんな彼の曲の中で、一番好きな曲が「Mind Games」。同名のタイトルアルバム、ジョンの4枚目のオリジナルアルバムである『Mind Games』(写真左)の冒頭の1曲目である。

この曲は僕の「人生の応援歌」である。「Imagene」も良いが、僕にとっては、この「Mind Games」が絶対的存在である。アルバムは1973年のリリース。「ヌートピア宣言」という邦題の為、社会性の強いメッセージ・ソング集のような誤解を受けがちなアルバムですが、そんなことはありません。ジョンのアルバムの中で一番優しいアルバムだと思います。
 

Mind_games

 

We're playing those mind games together
Pushing the barriers planting seeds
Playing the mind guerilla
Chanting the Mantra peace on earth

We all been playing those mind games forever
Some kinda druid dudes lifting the veil
Doin' the mind guerilla
Some call it magic the search for the grail

Love is the answer and you know that for sure
Love is a flower you got to let it, you got to let it grow

So keep on playing those mind games together
Faith in the future, out of the now
You just can't beat on those mind guerrillas
Absolute elsewhere in the stones of your mind

 

僕たちはみんな精神の試行錯誤を繰り返している
固い壁を突破したり、そこに新たな種を植えたりしながら
意識革命をしているんだよ
地球に平和を!というマントラを唱えながら

僕たちは、これからも思考実験をくり返すだろう、
みんな永遠にね
ドルイド教の司祭のような男もベールを剥げば、
自分の精神と格闘している
魔術とか、聖杯探しなんて意味がないとか言われながら

愛こそが「答え」だって、君にはよくわかってる
愛は、君が育てて、君が咲かせる「花」なんだって

だから、一緒に思考することを続けていこう
これから生み出される未来を信じて
自分自身の精神を革命しようとする人々を、
攻撃するなんてできないよ
意志の力は、何よりも強いんだから

 

自分については、50歳を過ぎて54歳で生死の境を彷徨い、ジョンとは違って幸運にも生き存えている。今ではジョンの生き様や音楽的成果を丸ごと受け入れることが出来る様になった。振り返ってみて、彼が、歴史上、偉大なミュージシャンの一人だったことは疑う余地は無く、その生き様はとても「人として誠実」だったと感じている。

 
 

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2015年12月11日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・72

今を去ること35年前。ジャズを聴き始めた頃、当時は「これはあかん、真っ当に聴かれへん」と敬遠していたフリー・ジャズ。不思議なもんで、ジャズを聴き続けて20年ほど経った頃から、スッと憑きものが取れた様に、フリー・ジャズが聴ける様になった。

それから、定期的にフリー・ジャズを聴いている。まあ、相当にアブストラクトでフリーキーな演奏ばかりである。そうそう毎日、聴き続けることは出来ない。一週間に1枚もしくは2枚程度かなあ。それでも、フリー・ジャズについては、全く抵抗無く聴ける様になった。

さて、そんなフリー・ジャズであるが、そのアルバムが発売された当時は、完全にフリー・ジャズな演奏だと感じていたのに、今の耳で聴くと意外とそうではなく、限りなくフリーではあるが、どちらかと言えばモーダルなジャズなんではないか、と感じるアルバムが多々ある。

例えば、このアルバムがそうである。Archie Shepp『Steam』(写真左)。1976年5月の録音。当時、西ドイツのニュルンベルグでの「East-West Jazz Festival」のライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts,p), Cameron Brown (b), Beaver Harris (ds)。シェップ自身がピアノを弾いているが、テナーを吹きながら、同時にピアノは弾けないので、ピアノレス・トリオと解釈して良いだろう。

シェップのフリーなブロウの特徴が良く判るのが、冒頭の「A Message from Trane」。演奏時間約19分の長編。ジョン・コルトレーンに捧げられた演奏なのだが、シェップは、彼の個性を前提にしながら、コルトレーンのフレーズ、吹き方を真似て吹きまくる。
 

Archie_shepp_steam

 
シェップのブロウは良い意味で「軽い」。フリーキーなフレーズが軽快に展開される。そして、アドリブ・フレーズが判り易く、聴き易い。疾走するブロウの中で、安定した和音感覚を駆使して、判り易く聴き易いフレーズを叩き出していく。難解で捻れた不協和音をひねり出すことは無い。そして、コルトレーンの様に「馬の嘶き」の様なアブストラクトな咆哮を吹きまくることは無い。

以下の収録曲を見渡すと、1970年代のシェップはスタンダードをフリーに演奏した。このアルバムでもスタンダード曲を好んで採り上げている。これが面白い。フリー・ジャズな演奏は決まって本人のオリジナル曲であることが殆どなのだが、シェップはスタンダード曲を採用して、これを限りなくフリーな演奏で軽快に解釈していく。

1. A Message from Trane (Cal Massey)
2. Solitude (Eddie DeLange, Duke Ellington, Irving Mills)
3. Invitation (Bronislaw Kaper, Paul Francis Webster)
4. Ah-Leu-Cha (Charlie Parker)
5. Steam (Archie Shepp)
6. 52nd Street Theme (Thelonious Monk)

5曲目の「Steam」だけが、シェップの自作曲。1曲目の「A Message from Trane」はカル・マッセイ作の、4曲目の「Ah-Leu-Cha」はチャーリー・パーカー作のミュージシャンズ・チューンを採用しているところが渋い。

Enjaレーベルの音質の良い録音も特筆すべき特徴。フリーキーなフレーズが軽快に展開される。限りなくフリーではあるが、どちらかと言えばモーダルなジャズの響きが実に軽快である。良いアルバムです。フリー・ジャズ入門盤としても最適でしょう。

 
 

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2015年12月10日 (木曜日)

やっとこのトランペットに再会

このトランペッターとの出会いは「Gil Evans Orchestra」だったと思う。とても印象的なトランペッターだった。流麗なテクニック&フレーズ。天高く伸びる様なハイノート。モーダルでイマージネーション豊かなアドリブ・ライン。一発で好きになりました。

そして、学生時代、今を去ること36年前。例の「秘密の喫茶店」で聴かせて貰ったアルバムがこれ。"Hannibal" Marvin Peterson『Hannibal』(写真左)。

1975年のデビュー作。Marvin Peterson (tp), Michael Cochrane (p), Diedre Murray (cello), Stafford James (b), Michael Carvin (ds), Chris Hart (per) の「Hannibal and the Sunrise Orchestra」と呼ばれるセクステット。

ジャケットを見ての通り、まさしく象の雄叫びである。ハンニバルは1948年生まれだから27歳の時の録音になる。若い。その若さに任せて、後先考えずに吹きまくる吹きまくる。天を翔るが如く、空を漂うが如く、太陽に向かって吹き上がるが如く、トランペットを吹きまくる。凄まじい迫力である。耳を突き抜けるハイノート。天性のハイノート・ヒッターである。
 

Hannibal

 
前半の曲は全て「吹きまくり」。中高音域を中心にバリバリに攻めまくります。これほど綺麗に吹き上げるように高音のフレーズを吹き続けるトランペッターを僕は他に知らない。バイタリティー溢れるトランペットであり、力感溢れるトランペットでもある。冒頭の「The Rabbit」から脱兎の如く突っ走ります。

後半の曲は妖しい響き。モーダルで幽玄に漂い、漠然と広がる様な浮遊感溢れるフレーズ。琴を弾きながらハンニバルが歌っています。実にアバンギャルドでサイケデリックです。ラストはMalcolmXに捧げられた「Soul Brother」。思いっきりスピリチュアルな名演に思わず身を乗り出して聴いてしまいます。気合い満点のブロウ。

スタンダード曲のカバー「Misty」が意外性抜群。ハンニバルの歌心溢れるトランペットが聴けて、思わずグッときます。叙情性溢れるトランペットは白眉の出来。ハンニバルが単に体育会系の体力一発勝負なトランペッターでは無いことが判ります。

以前より、聴きたい聴きたいとCDのリイシューを待っていたのですが、意外や意外、ダウンロードサイトで音源がゲットすることが出来る時代になりました。やっと聴き直せた『Hannibal』。今年の嬉しいリイシュー音源ゲットの最右翼です。

 
 

震災から4年8ヶ月。決して忘れない。まだ4年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2015年12月 9日 (水曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・9

Richard Beirach & David Liebman『Omerta』(写真左)。デュオである。Richard Beirach (p), David Liebman (ts, ss,fl)。当時、まだまだ若手の部類の二人。多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマン。この二人がデュオったらどうなるのか、そんなワクワク感の高い二人のデュオ盤である。

1978年6月、日本は東京の「Onkyo House」での録音。 TRIOレコードからのリリース。時は1978年。ジャズ界はフュージョン・ジャズのブーム真っ只中。純ジャズなど、大半のジャズ者の方々は見向きもしない。純ジャズなど「過去のもの」とバッサリ切り捨ててしまう評論家もいた。そんな時代である。

そんな時代に、多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマンの二人を招聘して、純ジャズなデュオを演奏させ、録音して、アルバム化してリリースする。TRIOレコードって、なんて豪気なレーベルだろう。この素晴らしいデュオ盤が、純日本のレーベルからリリースされたことは誇って良いと思う。

さて、このデュオ盤であるが、素晴らしい内容である。ピアノのバイラーク、サックスのリーブマン、二人の息はピッタリ。二人とも多弁なミュージシャンではあるが、デュオ演奏が故、相手の音をしっかり聴く必要がある。よって、この多弁な二人が、ちょっと寡黙になって、結果、良い塩梅の口数になっているのだ。これは「瓢箪から駒」である。

多弁過ぎるほど音符だらけで疾走するバイラークのピアノが、良い塩梅に「間」と「ゆったりとしたスピード」なピアノになって、実に味わい深い、滋味溢れるピアノに変身している。見事である。こんなに安定した着実で地に足の着いたタッチで弾くバイラークを僕は他に知らない。
 

Omerta

 
多弁でモーダルなリーブマンのサックスが、「間」と「余裕ある展開」を獲得することによって、リーブマン独特のアドリブ・フレーズの個性をしっかりと確実に理解することが出来る様になり、実に味わい深い、滋味溢れるサックス&フルートに変身している。これだけリーブマンのフレーズをしっかりと体感できる演奏はなかなか他に無い。

そんな二人のデュオ盤である。デュオという演奏のフォーマットの妙を存分に味わえる。デュオ演奏が故、相手の音をしっかりと聴きながらの「対話」である。ちょっと「間」を外したり、コード進行に変化を付けたり、スタンダード曲のメロディーに捻りを加えたりと、なかなか丁々発止としたやりとりが実に魅力的です。

多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックス。バイラークとリーブマン、お互い意気投合し、長年デュオ演奏を続ける仲でありつつ、丁々発止とした熱いやりとりも出来る、理想的なデュオ・パートナーなんだなあ、と改めて感心します。

浜辺で遊ぶ裸の子供二人の写真のアルバム・ジャケット。この子供二人が、このアルバムでの無垢で純粋なデュオ演奏を展開するバイラークとリーブマンの二人を表現している様で秀逸。良いアルバムです。

 
 

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2015年12月 8日 (火曜日)

ファーマーとバードの邂逅です

このアルバムにはなかなか縁が無かった。と言うか、敬遠していたと言っても良い。存在は、ジャズ者中堅の頃、ジャズを聴き始めて10年くらい経った頃から知っていた。でもなあ、このアルバムにはなかなか触手は伸びなかった。

だってですよ、このジャケット・デザインですよ。パチモンの雰囲気満載ですやん。しかも、プレスティッジ・レーベルからのリリースである。やっつけ仕事、一発勝負のジャム・セッション的録音を旨とするので、その出来不出来の差が激しい、というか、不出来の割合が結構高い。

二人の人気トランペットが双頭リーダー。これってどう考えたって、オールスター的なジャム・セッションですやん。まあ、小遣い稼ぎに、ワッと集まって、一発勝負でレコーディングして、出来不出来は二の次。ワッと集まっての一発勝負なんで、それぞれのジャズメンのコンディションはまちまちなの、みえみえですやん(笑)。

そんなアルバムとは、これ。Art Farmer and Donald Byrd『2 Trumpets』(写真左)。1956年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer, Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Barry Harris (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds) 。パーソネルは、全くもって申し分無い。ハードバップの人気ジャズメンが集結している。

特に、二人の人気トランペットが双頭リーダー、いわゆる「主役が二人」なのが全くもって危ない。優秀なトランペッター同士である。どうしても張り合ってしまうのではないか、張り合って、それが裏目裏目に出て、本来のそれぞれが持つ個性を全くつぶし合うような、そんなジャム・セッションがジャズの世界には良くあるのだ。
 

2_trumpet

 
で、このアルバムは、やっとこさ、2年前に入手した。で、聴いてみて「あら、ビックリ」。この双頭リーダーの、アート・ファーマーとドナルド・バードの相性は抜群に良い。お互いがお互いの音をよく聴き、それぞれの個性を理解した上で、ユニゾン&ハーモニーからアドリブ合戦を繰り広げている。これには感心した。

速い曲でのアドリブの展開については、それぞれの個性とアプローチが非常に良く出ていて面白い。バラード曲については、それぞれの情感の表現の仕方、アドリブ部での解釈の違いなど、良い意味でその個性が程良く出ていて、とても興味深い。なんだか「一粒で二度美味しい」グリコのキャラメルみたいなアルバムである。

二人のトランペットの音は完璧にハードバップ。アルトのマクリーンも完璧にハードバップ。ハリスのピアノ、ワトキンスのベース、テイラーのドラムのリズム・セクションも明らかにハードバップ。このアルバムには、徹頭徹尾、ハードバップな音がギッシリと詰まっている。

ハードバップ入門として、ジャズ本などに紹介されることは殆ど無いアルバムです。長年、廃盤になっていて入手困難だったのが原因なんでしょうが、最近では、ダウンロードサイトからでも音源が購入できる様で、このアルバム、ハードバップ入門盤としてその名を挙げられることが多くなれば良いですね。そんな感じの好盤です。

 
 

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2015年12月 7日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・55

ジャズのアルバムをコレクションしていると、時々、前評判も何も無く、リリースされた後もネット上ですらそのアルバムのコメントに振れることが少ない、全く地味なアルバムなのに「これは何だ」とビックリする様な優れた内容のアルバムに出くわすことがある。

今回、そんなアルバムとして出くわしたのが、Ginger Baker『Coward Of The County』(写真左)。1999年、Atlanticレーベルからのリリース。アルバムのリーダーの表記については、正式には「 Ginger Baker And The DJQ2O With Special Guest James Carter」。

「DJQ2O」とは「Denver Jazz Quintet-To-Octet」の略とのこと。そして「Special Guest」として挙げられている「James Carter(ジェームス・カーター)」は、1969年ミシガン州デトロイト生まれのジャズ・サックス奏者。今年46歳の中堅ジャズメン。

豪快で強烈、ワイドに吹きまくるパフォーマンスが個性。ソプラノからバリトン・サックス、バス・クラリネットなど各種リード楽器を操る「マルチ・リード奏者」。メインストリーム・ジャズ風の端正で正統なブロウから、アバンギャルドでフリーなブロウまで、サックスの主なスタイルに適用する。

そして、リーダーはドラマーのGinger Baker(ジンジャー・ベイカー)。なんとまあビックリな存在のロック系ドラマーで、ジャック・ブルース、エリック・クラプトンらと「クリーム」で活動したドラマーとして有名。1939年生まれ。「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のドラマー」に於いて、第3位のロック史上、重要なドラマーの一人。

パーソネルは、Artie Moore (b), James Carter (b-cl,ts), Ted Hess (ts), Ginger Baker (ds), Todd Ayers (g), Glenn Taylor (steel-g), Shamie Royston (org), Eric Gunnison (p), Ron Miles (tp)。James Carterだけは知った名前だが、それ以外は知らない名前ばっかり。
 

Coward_of_the_county

 
それでもこのアルバムの演奏内容は「モーダルなジャズ」の類であり、白眉なもの。1960年代後半のマイルス・バンドの雰囲気をよりフリーに、よりコンテンポラリーにした、実に先進的でモダンな「モーダル・ジャズ」である。初めて聴いた時、とにかくその内容にビックリした。

モードな展開を活かした自由度の高い、印象派の様な演奏から、アバンギャルドでフリーキーな演奏まで、このバンドの表現能力は相当に高い。テクニックもかなり高度で確かなもの。モーダルなアドリブ・フレーズはキャッチャーで親しみ易い旋律が爽快。モーダル・ジャズの中でも聴き易い部類で「判り易くモダン」。

リーダーのジンジャー・ベイカーのドラミングがこれまた素晴らしく個性的。一聴して、このドラミングは「純ジャズ」なものでは無いことが直ぐに判る。バスドラを活かして、ビートを強調する様は明らかに「ロック調」。その上に、繊細でテクニカルなドラミングが彩りを添え、複雑にリズム&ビートが重なる中、ジャズではあまり聴く事の出来ない「多彩でバラエティ溢れる」ドラミングを体感することが出来る。

他のメンバーも高度なテクニックと流麗なフレーズをもって、リーダーのジンジャー・ベーカーのドラミングに支えられ、ジェームス・カーターのサックスにリードされながら、爽やかにたおやかに、モーダルなジャズを展開して行きます。現代のモダンな感覚で再構築された、1960年代後半のマイルス・バンドの音世界。

こんなアルバムがあるなんて、全く知りませんでした。しかも、それがロック・レジェンドなドラマー、ジンジャー・ベイカーのリーダー作なんて。いやはや、ジャズという音楽ジャンルは奥が深く懐が深い。このほのぼのとしたイラストのジャケットに騙されてはいけない。良いアルバムです。

 
 

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2015年12月 6日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・54

2014年7月11日、惜しまれつつ亡くなったジャズ・ベースの哲人、チャーリー・ヘイデン。2013年12月10日、同じく惜しまれつつ亡くなったジャス・ギターの名手ジム・ホール。この二人の邂逅の記録が昨年、突如リリースされた。

ヘイデンのベースもホールのギターも派手なパフォーマンスとは無縁、どちらかと言えば、裏方に回ってその味を発揮するという、いわゆる「玄人好み」のミュージシャンである。前面に出て、アドリブ・フレーズをガンガンに弾きまくるタイプでは無い。共演者の演奏に耳を傾けながら、効果的かつ小粋なサポートを繰り出す、そんなタイプの二人である。

1990年の Montreal International Jazz Festival でのライブ録音。14年もの間、倉庫に眠っていた音源である。そして、どちらかと言えば、裏方に回ってその味を発揮するという、共演者の演奏に耳を傾けながら、効果的かつ小粋なサポートを繰り出す、そんなタイプの二人のデュオである。地味すぎるほど地味な内容なのでは無いか、と危惧する。 

しかし、冒頭のセロニアス・モンク作の「Bemsha Swing」の演奏を聴くだけで、その危惧は杞憂に過ぎないことに気が付く。この癖のある、モンク独特の「捻れ旋律」満載の難曲をいとも軽々とデュオ演奏で盛り上げていく。意外なほどに二人ともアグレッシブであり、素敵にスイングしている。
 

Charlie_haden_jim_hall  

 
ベースとギター、どちらも似通った弦楽器ではあるんですが、上手く役割分担しつつ、息がピッタリ合ったデュオ演奏を展開しています。ギターの速弾きにどうベースが追従するのか、と固唾の飲んで聴き耳を立てていたら、なんとまあ、ヘイデンのベースの速弾きの凄いこと。ホールのギターと対等で、魅力的なユニゾン&ハーモニーを聴かせてくれます。

「Bemsha Swing」「Body and Soul」「Skylark」といったスタンダード・ナンバーの出来が白眉。似通った弦楽器通りのデュオなので、アレンジとアドリブ・フレーズが平凡だと確実に飽きるんですが、この二人のデュオにはそんなものは無縁。適度なテンションの中、丁々発止とテクニックのあらん限りを尽くして、二人のデュオ演奏が続きます。至福の一時です。

ヘイデンのベースも、ホールのギターもその音色の多彩さには驚きます。ベースとギター、それぞれ、ここまで多彩な音、表現が引き出されるとは思いませんでした。さすがヘイデンとホール、唯一無二の職人芸です。

いや〜こんな素晴らしいデュオ音源が倉庫に眠っていたんですね。ビックリです。1990年当時、この音源をお蔵入りさせてしまった関係者はどういう感性をしていたのでしょうかねえ。今回、発掘されて良かったです。とにかく、最高にアグレッシブでハートフルなヘイデンとホールのデュオを堪能出来ます。良いライブ盤です。

 
 

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2015年12月 5日 (土曜日)

「赤い鳥」というバンドがあった

週末は「ジャズの合間の耳休め」。暫く、昔々、1970年代から1980年代前半にかけて聴き親しんだ「日本のソフトロック」や「ニューミュージック」を振り返ってみたい。簡単に言うと、僕が高校時代から大学時代に聴いた「お気に入り」盤を聴き直してみよう、ということ。

今日は「赤い鳥」。昔々、今から40年以上前である。僕がまだ中学一年生。あの頃は親の転勤で岡山にいた。親父のラジオを拝借して自室であれこれチューニングしていた。そこで知ったのがFM放送。そのFM放送では音楽を流していることも。その流れてくる音楽は当時、クラシック中心。しかし、そんなクラシック中心の音楽の中に、新しい雰囲気の日本の楽曲があった。

そんな新しい雰囲気の日本の楽曲が「フォーク」と呼ばれるジャンルの音楽だということは、「中一コース」という雑誌を読んで理解した。そして、そのフォーク・ソングの中で、かなりモダンな感じがする楽曲があった。その楽曲の主は「赤い鳥」というバンドだった。

「赤い鳥」。1969年に結成、1974年解散。1969年11月「第3回ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテスト」、フォーク・ミュージック部門の第1位を獲得、他部門の優勝グループを抑え、グランプリを獲得。オリジナル・メンバーは、後藤悦治郎 (g), 平山泰代 (p), 山本俊彦 (g), 新居潤子 (vo,g), 大川茂 (b) の5名。

ボーカルの確かさ、ユニゾン&ハーモニーの美しさ、演奏の確かさ、アレンジの斬新さ、どれをとっても、当時、日本では突出したバンドだった。当時、流行していた他のフォーク・ソングとは一線を画していた。 

各地の子守唄・伝承されている歌などを美しいコーラスワークで聴かせる傍ら(これが彼らの考える「フォーク・ソング」だったようだ)、当時としては先進的な「ソフトロック」的な音楽性も兼ね備えていた。
 

Akaitori

 
そんな「赤い鳥」、僕は大のお気に入りになった。アルバムについては、資金力がついた高校時代に、この2枚を手に入れ、既に解散してしまった「赤い鳥」の高度で先進的な音楽性に感心しながら聴き入っていた。そのアルバムとはこの2枚。

1971年リリースの『竹田の子守唄』(写真左)と1973年リリースの『パーティー』(写真右)。数ある赤い鳥のアルバムの中で、この2枚が聴き易く、赤い鳥の音世界に入りやすい「入門盤」的な内容。赤い鳥のアルバムの中で、一番、大衆向けにプロデュースされたアルバムである。

『竹田の子守唄』は代表盤として一番挙げられる盤で、民謡をベースにした「竹田の子守唄」、そして、日本ポップスの永遠の名曲「翼をください」が収録されていて、この2曲の為に買っても良い位の名盤。他に「忘れていた朝」「河」などもっとスタンダードになってもよい位、出来が突出している楽曲もあり、このアルバムの内容は、日本フォーク・ソングの名盤として聴き継がれるべき盤である。

『パーティー』は、新メンバーの大村憲司のギターと村上秀一のドラムがフィーチャーされ、日本の「ソフトロック」の源流を聴く様な、日本のソフトロックの初期の名盤として聴き継がれる盤である。赤い鳥の音楽性の二面性である、ポップス色とフォーク色のせめぎ合いが見事で、1973年という時代の中、かなり突出して先進的な内容にビックリする。

赤い鳥はメンバー全員がメインボーカルがとれ、同時に全員がソングライターであった。そんな中、そのメンバー個々に才能が存分に発揮されたアルバムがこの『パーティー』だと解釈している。小粋なアルバム・ジャケットと共に、赤い鳥のバンドの個性と実力が最大限に発揮されたアルバムでしょう。

もう今から40年以上前の出来事になってしまった。でも、日本ポップス史上、この「赤い鳥」の存在は、絶対に押さえておかなければならないものであり、その「赤い鳥」の個性と実力を手っ取り早く感じ取るには、この『竹田の子守唄』と『パーティー』を体感するのが早道でしょう。素晴らしいアルバムです。

 
 

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2015年12月 4日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・48

この人のピアノは、過度に「端正」。過度なまでの疾走感。人を越えた、人間業とは思えない高度なテクニック。そして、張り詰めた高テンション。この人のピアノを聴いていると、息が詰まるような切迫感を強く感じて、若い頃は苦手な部類だった。
 
そのピアニストとは、Phineas Newborn, Jr.(フィニアス・ニューボーン・ジュニア)。1931年生まれ。1989年、57歳の若さで鬼籍に入っている。彼のピアノは「驚異のテクニシャン」と表現される。オスカー・ピーターソンやアート・テイタムなどの様な流麗なタッチでは無い、ブロックコードの使い方など、パキパキ硬派なタッチ&フレーズが個性的。
  
彼自身、神経障害が持病で、それが原因で活動がたびたび中断された。その影響かもしれないのだが、どこか不安定、かつ過度に端正。過度に疾走し、過度なテクニックが展開する。どこか人間離れした、危ういバランスの上にたったピアノは、どこかテンションが高く、そのアドリブ・フレーズは息が詰まるような切迫感。
 
そんなフィニアス・ニューボーン、彼のリーダー作は、あまりに彼の好きなようにピアノを弾かせてしまうので、その息が詰まるような切迫感が強く出て、どうにも、初めて彼のピアノを聴く向きには荷が重い。まず、初めてフィニアスのピアノを体験するには、サイドメンに回った彼のピアノを聴くのが良い。
 
そんなフィニアスがサイドメンに回った好盤の一枚がこれ。Roy Haynes『We Three』(写真左)。1958年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Roy Haynes (ds), Phineas Newborn, Jr. (p), Paul Chambers (b)。味のある職人ドラマー、ロイ・ヘインズのリーダー作である。
 

We_three
 
 
この多彩な音とタイム感覚で、硬軟自在、変幻自在のドラミングで演奏全体をコントロールする、リーダーのヘインズのドラム。このドラムが、フィニアスを良い意味で「コントロール」する。
 
そして、時々、崩れそうになるフィニアスをしっかりと「支える」ポール・チェンバースのベース。フィニアスは好サポート得て、良いレベルの切迫感と緊張感の中で、彼独特の「どこか不安定で、かつ過度に端正」なピアノが展開する。
 
サイドメンに回ったフィニアスは適度な、80%の力の入れ具合で良い感じのピアノを弾きまくる。この程度の「息が詰まるような切迫感」が丁度良い。切迫感をそっと押さえるのに合わせて、アドリブ・フレーズの歌心がくっきりと浮き出てくる様は、なかなかに滋味溢れていて味わい深い。
 
ただ、テクニックが余りに端正で高度な為、ちょっと深い味わいが不足する部分があるのはご愛嬌。録音したのは1958年。フィニアスがまだ27歳の若さ。深みを追求するには、まだまだ若すぎる。でも、それを割り引いてもこのアルバムのフィニアスは、傾聴に値する素晴らしさだ。
 
ピアノ・トリオの好盤としても、ジャズ者万人にお勧め。どのレベルのジャズ者の方々でも、このピアノ・トリオ盤は楽しめると思います。ジャケット写真もシンプルで優秀。良いアルバムです。
 
 
 
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2015年12月 3日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・71

昨日書いたが、ジャズ喫茶って、たまにはジャズ者の方々が「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけることが大事だと思う。とにかく「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。

例えば、このピアニストの音も、恐らく、ある程度ジャズを聴き込んだジャズ者の方々であれば、「これは知ってる」とか「これは誰が弾いているか知ってる」となるのではないか。聴けば直ぐ判るピアニストである。これだけ個性的なピアノは他に無い。というか、唯一無二である。

Thelonious Monk『Solo Monk』(写真左)。1964年10月、1965年3月の録音。孤高のジャズ・ピアニスト、バップの高僧と呼ばれる「セロニアス・モンク」のソロ盤である。セロニアス・モンクは1917年生まれだから、47歳の時の録音になる。ジャズメンとして中堅からベテランの域に達した、充実のソロ・ピアノ盤である。

モンクのピアノの個性を確認し愛でるには、ソロ盤が一番。バックの演奏を一切排除して、モンクのピアノのみが朗々と流れる。そういうシチュエーションが、モンクの個性を感じるのに一番である。

それほどまでに個性的なモンクのピアノである。まず、ボイシングが普通では無い。不協和音がガンガン出てくる。そして、独特のタイム感覚。そこで止まるか、と思いつつ、そこで走るか、と驚き、いきなり左手がガーンと入って、右手が不協和音を旋律していく。おおよそ、クラシック音楽には全く無いピアノ。
 

Solo_monk

 
クラシック・ピアノを聴き馴れた耳には、このモンクの独特なタイム感覚とボイシングを持つピアノは、かなり辛いだろう。でも、モンクのピアノって、アルバムを聴き重ねていくと癖になってくる。なんか、この独特なタイム感覚とボイシングが心地良くなってくる。癖の強いチーズの様な感覚。

逆に、クラシック音楽の不協和音を活用した、ストラビンスキーやバルトークの交響曲などを聴き馴れた耳には、モンクの不協和音フレーズは意外といけるのではないか。モンクの不協和音フレーズは意外と計算され、その構築美がたまらない。しかも、この不協和音フレーズはジャズの中でも唯一無二。これだけ効果的に不協和音を活用出来るピアニストはモンク唯一人。

そんなモンクのピアノは、その癖が強く出たものはちょっと聴くのがしんどい、というジャズ者の方も多い。特に、若い頃のモンクのピアノは、モンクの個性と癖が強く出たものが多い。確かに僕も若い頃は、このモンクの癖が強く出た盤はちょっと苦手だった。

そういう意味で、この『Solo Monk』のモンクのピアノはあっさりしている。モンクの癖がほど良くこなれていて、とても聴き易いモンクのソロ・ピアノである。穏やかな日に陽向ぼっこをしながら聴いている様な、そんなほのぼのとしたモンクのピアノは優しい。タッチも柔らかくて、聴き心地がとても良い。

一般万民向け、モンク入門盤として最適な盤でしょう。ジャズ喫茶で軽く流すのに良い盤です。そして、モンクの個性はしっかりと判る盤なので、この盤をジャズ喫茶でかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。そしてその得意げな顔がこう語る。「これ、セロニアス・モンクのピアノやね」。

 
 

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2015年12月 2日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・70

ジャズ喫茶では「これは誰だ」と確かめたくなるような、聴いたことが無い粋な盤をかけることもあるが、この「聴いたことが無い粋な盤」ばかりかけると、自信過剰なジャズ者の方々から「得意げに知らない盤ばかりかけるな」とお叱りを受ける(笑)。

やはり、たまにはジャズ者の方々が「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけることが大事だと思う。とにかく「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。

このアルバムをかけた時が面白い。Clifford Brown『The Beginning And The End』(写真左)。伝説のトランペッター、クリフォード・ブラウンの最初期の音源(1952年3月21日、シカゴでの録音)と25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションの音源(1956年6月25日、フィラデルフィアでの録音)。

最初期の音源は「I Come From Jamaica」と「Ida Red」の2曲。ジャズではなくR&Bのグループでのラテン曲での演奏。ラテン調の前奏に思わず「えっ」と思い、ラテンな演奏が繰り広げられて「ええ〜っ」と思い、ボーカルが入ってきて「これはなんだ〜」と思っていたら、スッとブリリアントなトランペットの音が滑り出てきます。ホッとする瞬間。

25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションの音源は「Walkin'」「Night In Tunisia」「Donna Lee」の3曲。どれも、ビ・バップからハードバップの名曲ばかり。演奏の内容は完璧なハードバップ。 パーソネルはクリフォード以外、無名のジャズメンばかり。恐らく地元のジャズメンとのライブ・セッションだったのだろう。クリフォードのトランペットだけが傑出している。
 

The_beginning_and_the_end2

 
最初期の音源でも、25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションの音源でも、クリフォードのトランペットは飛び抜けて素晴らしく、光輝く様なブリリアントなトランペットの音色は明らかに「クリフォードの個性」。クリフォードならではのトランペットのブリリアントな響きは明らかにそれと判る個性です。

最初期の音源で、スッと出てくるクリフォードのトランペットの響き、25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションでのバリバリ吹きまくるクリフォードのトランペットの響き。 スピーカーから出てくると、決まって、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。そしてその得意げな顔がこう語る。「これ、クリフォード・ブラウンのトランペットやね」。

クリフォード・ブラウンのトランペットが、如何に初期の頃から完成されていたか、そして、そのテクニックは既に最初期の頃に備わっていたかが良く判る、クリフォードの天才の度合いの高さが良く判る、とても良く出来た企画盤です。そして、運命の悪戯というか、運命の残残酷さを改めて思い返させてくれる企画盤でもあります。

1956年6月26日、リッチー・パウエル(バド・パウエルの弟)の妻、ナンシーの運転する車にリッチーと共に便乗してフィラデルフィアからシカゴに向かう途中、ペンシルベニア・ターンパイクで交通事故死。25歳。事故当夜は雨が降っており、ナンシーを含めて3人全員がこの事故で亡くなった(Wikipediaより抜粋)。

 
 

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2015年12月 1日 (火曜日)

久々のカルデラッツォのトリオ盤

ジョーイ・カルデラッツォ(Joey Calderazzo)。デビュー作『In the Door』のリリースが1991年だった。カルデラッツォは1965年生まれ。デビューは26歳の若さだった。タッチは力強く、フレーズは多彩。マッコイ・タイナーにロマンチシズムをまぶしたようなモダンなピアノだった。

そんなカルデラッツォも今年で50歳。ジャズ界でも「もはや中堅、ベテランの域」。才能が物を言う世界で、約四半世紀の長きに渡って第一線で活躍してきたのだから大したものだ。そんなカルデラッツォのピアノ・トリオ盤が新たにリリースされた。

Joey Calderazzo『Going Home』(写真左)。じっくりと腰を据えたスタジオ録音をベースとした作品。ちなみにパーソネルは、Joey Calderazzo (p), Orlando le Fleming (b), Adam Cruz (ds)。2曲目「I never Knew」にのみテナーが入る。そのテナーの主はBranford Marsalis。

このピアノ・トリオ盤、2000年にColumbiaからリリースされた『Joey Calderazzo』から数えて、15年振りのスタジオ録音によるトリオ作になるとのこと。へぇ〜、ジャズ・ピアニストって結構ピアノ・トリオを好むと思っていたのだが、カルデラッツォは違うんやね〜。
 

Going_home

 
ピアノの響きがとても豊かで魅力的で、タッチの明確なところはマッコイ・タイナーを想起させつつ、ポエム的なフレーズの紡ぎ方とスキッとした、シンプルで透明感のある和音の作り方は「カルデラッツォ独特の個性」。コンテンポラリーでスタイリッシュなメロディ感覚は実に「クール」。

静謐感と躍動感がバランス良くミックスされて、切れ味の良いピアノ・トリオ演奏が展開されます。トリオのアンサンブルも見事。ユニゾン&ハーモニーも耽美的で透明感のあるもの。この辺りはビル・エバンスの雰囲気に似ているところもあって、思わずニンマリする。

ここまで来れば、このピアノ・トリオは米国産では無いことに気がつく。この音は明らかに「欧州」の音。明らかに、ピアノ・トリオの音を「アーティスティック」に聴かせてくれる。随所で見せる瑞々しいメロディは実に魅力的。聴き惚れる感じですね。

シンプルではあるが奥が深く、曲が進むにつれ、知らず知らずの間に聴き込んで、気が付いたら全てを聴き通している、そんな惹き込まれるような魅力満載のピアノ・トリオ盤です。アルバム・ジャケットを含め、ちょっと地味な感じがしますが、どうして、なかなかに内容の詰まった好盤だと思います。

 
 

震災から4年8ヶ月。決して忘れない。まだ4年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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