ジャズ喫茶で流したい・73
このアルバムの音源をずっと探していた。2度ほどCDでリイシューされたのだが入手できず。リイシューされた中古CDは高額で手が出ず。いよいよLPに手を出すしか無いか、と思っていたら、ひょんなことから音源が手に入った。
そのアルバムとは、Arthur Blythe『Illusions』(写真左)。1980年の作品。Arthur Blythe (as), Abdul Wadud (cello), James Blood Ulmer (g), Bob Stewart (tuba), John Hicks (p), Fred Hopkins (b), Bobby Battle, Steve McCall (ds)。
楽器の構成を見れば、通常のジャズの作品では無いことは直ぐに判る。チェロがある、チューバがある、この辺はギル・エバンスに通ずる楽器構成。バンドの音に深みが出来て、彩りが豊かになる。
そして、ギターにアバンギャルド・ギターのウルマーが参加し、アブストラクトとメインストリームの両刀遣いのピアニスト、ジョン・ヒックスがいる。重低音なブンブン・ベースのホプキンスがいる。この面子を見ただけで、このアルバムに詰まっているジャズは、純ジャズでもなければ、録音当時、流行していたフュージョン・ジャズでもない。
エレクトリック・マイルスの音をアコースティック楽器中心に置き直した感じのコンテンポラリーなジャズがギッシリ詰まっている。収録された曲の全てが、リーダーのブライスのオリジナル。
1曲目の「Bush Baby」を聴いただけで、このアルバムは「ただ者」では無いことが良く判る。チューバ、ギター、チェロ、ドラムスという独特のアンサンブルが刺激的で、ベースの入らない変則編成の「捻れてぶっ飛んだ」演奏に、思わず脳髄がギシギシ刺激されます。グチュグチュグチュなウルマーのギターが堪らない。
2曲目の「Miss Nancy」とラストの「As of Yet」では、逆にベースのホプキンスが参入して大暴れ。重低音を振り撒いて、すさまじいドライブ感が爽快なベースは唯一無二。無敵の超弩級のエレベです。怒濤の様なウォーキング・フレーズ。
タイトル曲「Illusions」は、337拍子ならぬ、223拍子と334拍子が混ざった変則拍子な「捻くりまくった」限りなく自由度の高い演奏。新しい感覚に耳を奪われる。今の耳で聴いても、新しい感覚の音。
リーダーのブライスのアルトは切れ味良く、エッジが「立った」音。適度にヴィブラートがかかって、尖りまくったフレーズが「ただ者」ではない雰囲気を色濃く醸し出す。アバンギャルドな香りがかなり色濃い反面、不思議と聴き易さもあって、捻れてぶっ飛んだ」演奏ばかりなアルバムですが、意外とすんなりと一気に聴き通してしまいます。
ロフトジャズの総決算だとか到達点だとか、当時は評価されていましたが、このアルバムは決してフリー・ジャズなアルバムではありませんし、アブストラクトなジャズ盤でもありません。僕の耳には、メインストリームなジャズにカテゴライズされていて、その「捻れてぶっ飛んだ」フレーズの連続の心地よさに、思わず「ヘビロテな盤」になっています。
いや〜、やっぱりこの盤は良いですね。ずっと探していて探し疲れて諦めかけていた時に、ラッキーにもひょんなことから音源が手に入って、ほんまにラッキーでした。今年の我がバーチャル音楽喫茶『松和』の10大ニュースの上位に位置するリイシュー音源ゲットでした。
震災から4年9ヶ月。決して忘れない。まだ4年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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