ジャズ喫茶で流したい・70
ジャズ喫茶では「これは誰だ」と確かめたくなるような、聴いたことが無い粋な盤をかけることもあるが、この「聴いたことが無い粋な盤」ばかりかけると、自信過剰なジャズ者の方々から「得意げに知らない盤ばかりかけるな」とお叱りを受ける(笑)。
やはり、たまにはジャズ者の方々が「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけることが大事だと思う。とにかく「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。
このアルバムをかけた時が面白い。Clifford Brown『The Beginning And The End』(写真左)。伝説のトランペッター、クリフォード・ブラウンの最初期の音源(1952年3月21日、シカゴでの録音)と25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションの音源(1956年6月25日、フィラデルフィアでの録音)。
最初期の音源は「I Come From Jamaica」と「Ida Red」の2曲。ジャズではなくR&Bのグループでのラテン曲での演奏。ラテン調の前奏に思わず「えっ」と思い、ラテンな演奏が繰り広げられて「ええ〜っ」と思い、ボーカルが入ってきて「これはなんだ〜」と思っていたら、スッとブリリアントなトランペットの音が滑り出てきます。ホッとする瞬間。
25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションの音源は「Walkin'」「Night In Tunisia」「Donna Lee」の3曲。どれも、ビ・バップからハードバップの名曲ばかり。演奏の内容は完璧なハードバップ。 パーソネルはクリフォード以外、無名のジャズメンばかり。恐らく地元のジャズメンとのライブ・セッションだったのだろう。クリフォードのトランペットだけが傑出している。
最初期の音源でも、25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションの音源でも、クリフォードのトランペットは飛び抜けて素晴らしく、光輝く様なブリリアントなトランペットの音色は明らかに「クリフォードの個性」。クリフォードならではのトランペットのブリリアントな響きは明らかにそれと判る個性です。
最初期の音源で、スッと出てくるクリフォードのトランペットの響き、25才で事故死する数時間前に残された最後のセッションでのバリバリ吹きまくるクリフォードのトランペットの響き。
スピーカーから出てくると、決まって、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。そしてその得意げな顔がこう語る。「これ、クリフォード・ブラウンのトランペットやね」。
クリフォード・ブラウンのトランペットが、如何に初期の頃から完成されていたか、そして、そのテクニックは既に最初期の頃に備わっていたかが良く判る、クリフォードの天才の度合いの高さが良く判る、とても良く出来た企画盤です。そして、運命の悪戯というか、運命の残残酷さを改めて思い返させてくれる企画盤でもあります。
1956年6月26日、リッチー・パウエル(バド・パウエルの弟)の妻、ナンシーの運転する車にリッチーと共に便乗してフィラデルフィアからシカゴに向かう途中、ペンシルベニア・ターンパイクで交通事故死。25歳。事故当夜は雨が降っており、ナンシーを含めて3人全員がこの事故で亡くなった(Wikipediaより抜粋)。
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