幻のフュージョン・オムニバス盤
フュージョン・ジャズは1970年代半ばから1980年代前半の期間に流行したジャズのスタイルのひとつであるが、その流行の勢いというのは凄まじいものがあった。
アコースティックな4ビートのメインストリーム・ジャズは過去の物として片隅に押しやられ、新しいジャズの全てはエレクトリックであり8ビートであり、ソフト&メロウで聴き心地が良く、アーバンな雰囲気のジャズであった。
フュージョン・ジャズの流行当時、日本でもその猛威は凄まじかった。お洒落な洋食屋から喫茶店から、果てはスーパーマーケットまで、店内のBGMはフュージョン・ジャズが流れていた。もうジャズには、このフュージョン・ジャズしか存在しないかのような凄まじい勢いのブームだった。
そんな勢いのあるブームであるが故、その時代でしか創り出されなかったであろうフュージョン・ジャズの好盤が幾つかある。それらの「あだ花の様な好盤」はフュージョン・ジャズのブームが去った後、次々と廃盤扱いとなり、時が経つにつれ、その存在すら忘れられていった。
しかし、昨今のフュージョン・ジャズの復刻ブームに乗って、そんな忘れ去れた、その時代でしか創り出されなかったであろうフュージョン・ジャズの好盤がリイシューされている。これは、当時からのオールドなフュージョン・ジャズの我々にとっては嬉しいことである。
そんな「忘れ去れた、その時代でしか創り出されなかったであろうフュージョン・ジャズの好盤」が『NEW YORK』(写真左)である。8人の名うてのフュージョン・ギタリストがニューヨークにテーマを求めて繰り広げる、日本フュージョンの記念碑的名盤。
8人のギタリストとは、秋山一将、大村憲司、鈴木茂、竹田和夫、松木恒秀、松原正樹、水谷公生、矢島賢。当時、名うてのフュージョン・ギタリストがずらり。しかもギタリストの人選が「実に渋い」。当時のCBS/SONYも粋なことしたなあ。実に豪気なオムニバス盤である。
8人のギタリストが、8人8様、ニューヨークにテーマを求めて、ニューヨークのイメージをフュージョン・ジャズのギターの音で表現している。ニューヨークという大都会をイメージをフュージョン・ギターで表現する、という、今から思えば「ベタな企画」なんだが、しかし、これが素晴らしい内容なのだ。
8人のギタリスト以外に、当時、YMOのメンバーとしてブイブイ言わせていた「教授」こと、坂本龍一がキーボードとアレンジで参加していたり、パーカッションの斉藤ノブ、ドラムに林立夫や村上秀一、ベースに後藤次利などのメジャーなミュージシャンの名前をズラリと並んでおり、ジャズ畑のみならず、ロック畑のミュージシャンも巻き込んだ「異種格闘技」風のセッションがなんとも魅力的です。
とにかく聴いてみて下さい。日本フュージョン・ジャズが、当時、如何に充実していたかが判る内容です。米国のフュージョン・ジャズも良いが、日本のフュージョン・ジャズも負けていない、どころか米国フュージョン・ジャズと対等もしくはそれ以上の充実度に思わず口元が綻びます。
8人の名うてのフュージョン・ギタリストがニューヨークにテーマを求めて繰り広げるオムニバス盤という特殊なアルバムなので、今後、廃盤になってしまう可能性大と睨んでいます。入手する向きには早めの入手をお勧めします。
震災から4年8ヶ月。決して忘れない。まだ4年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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