マーカスのルーツ・ミュージック
いつの時代も、彼のエレベを聴く度に、唄うように語るように響き渡るテクニックにほとほと感心するばかりである。そのエレベ奏者とは、ジャコ・パストリアスと双璧をなすエレベ奏者、マーカス・ミラーである。
彼の名前を意識したのは、マイルス・バンドでのこと。1981年の奇跡のカムバック作『The Man with the Horn』の中で彼の名前と出会い、彼のエレベと出会った。1981年と言えば、エレベの天才、ジャコは既に体験していたが、このマーカスのエレベは、ジャコのエレベと同類ではあるが、ジャコとは趣が異なる、と感じた。
マーカスのエレベは理知的である。ジャコのエレベは才能と感覚のみで弾きまくる「天才ならではの仕業」なんだが、マーカスのエレベは、ジャコの「天才ならではの仕業」に理知的な構築力が付加される。感覚で弾きまくりながら理路整然としたフレーズ満載とでも形容しましょうか。
と言うことで、僕にとってのエレベのヒーローは「ジャコとマーカス」。ジャコは1987年9月に逝去しているので、現代では新作は出ない。しかし、マーカスはまだまだバリバリの現役。マーカスは1959年6月生まれだから、僕の一学年下の今年56歳。いよいよ中堅からレジェンドの域に達しつつある。
そんな彼の今年の新作がこれ。今年の3月にリリースされた、Marcus Miller『Afrodeezia』(写真左)。解説を紐解くと、セネガル、ナイジェリアやブラジル、マリ、南米、カリブ、アメリカ南部の音楽要素を取り入れブラック・ミュージックのルーツを巡る話題作、とある。
アルバム全編を聴いて判るのは、このアルバムのテーマは「マーカスの考えるブラック・ミュージック」である。このアルバムに登場する楽器が面白い。ゲンブリ(ベースの元祖)、コラ、ジェンベ、カリンバなど、アフリカの伝統楽器。そして、カルカバ(鉄のカスタネット)のリズムやマンデスタイルのギターなど、西アフリカのルーツミュージックなどが、アルバム全体に散りばめられている。
しかもそれぞれのルーツ・ミュージックを奏でる楽器については、現地のアーチストたちによって演奏されているのだ。確かに、そのエスニックな雰囲気が色濃く漂っている。これが実に魅力的だ。
収録された曲調は、アメリカン・アフリカンの音楽的ルーツを巡るもの。ゴスペル、サンバ、カリプソ、ニューオリンズ、モータウン、そしてジャズ。ジャズは何でもあり、と言うが、このアルバムはそれを地で行くもの。バラエティー溢れる曲調を飲み込んで、スケールの大きいフュージョン・ジャズが展開される。
さすがマーカス。彼のアレンジとプロデュースの才は、マイルス・バンドの時代、あのマイルス御大から絶大なる信頼を得ていた位に優れたもの。しかしながら、このアルバムを聴くと、改めて、彼のアレンジとプロデュースの才に感服してしまいます。よくここまで、アルバムとして仕上げられるもんですね。
加えて、アルバム全編に渡って、ポップでキャッチャーな曲で占められていて、とても聴き易く親しみ易いアルバムに仕上がっています。勿論、マーカスの唄うような、語るような、驚異的なテクニックのエレベは健在。とても充実したマーカスの新作です。
震災から4年8ヶ月。決して忘れない。まだ4年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« スピリチュアルなエレ・ジャズ | トップページ | こんなアルバムあったんや・53 »
コメント