初期のバートンはクロスオーバー
ヴァイブという楽器は、サックスやギターなど、ポピュラーな楽器とはちょっと異なる、取り扱いや弾き方など、かなり特殊な楽器とは思うのだが、ジャズでは、演奏される主要な楽器の末席あたり、数は少ないが、ヴァイブで一代を成したジャズメンが何人かいる。
まあ、ジャズでヴァイブと言えば、おおよそ「ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)」の名前が挙がる。ミルト・ジャクソンがモダン・ジャズの中で、ヴァイブという楽器をジャズで使用する定番楽器の位置に押し上げ、定着させたレジェンドである。
で、僕にとって、ミルト・ジャクソンを追う二番手のヴァイヴ奏者はと言えば「ゲイリー・バートン(Gary Burton)」。僕は、このバートンとの出会いは、チック・コリアとのデュオの諸作とであった。
1978年のことだった。最初は『Crystal Silence』だったかと思う。4本マレットを駆使した和音が特徴で、こんなに高速に、こんなにニュアンス豊かに弾きまくるヴァイブに初めて出会って驚愕した。
このバートン、初期の頃は当時流行のクロスオーバー・ジャズに走って、電気楽器を活かした、かなり尖った演奏を繰り広げている。1960年代後半から1970年代前半まで、思いっきりクロスオーバー・ジャズした演奏で、ブイブイ言わせていた。
特に、そのクロスオーバー・ジャズな作品は、RCAとAtlanticレーベルに集中しており、現在の純ジャズなバートンをイメージして、この初期の頃の諸作を聴くと、全く別人の、クロスオーバー・ジャズしたマッチョなバートンの音世界に驚愕すること請け合いである(笑)。
そんなAtlanticレーベルのバートンを体験するのに、格好のベスト盤がある。Gary Burton『Turn of The Century』(写真左)。1976年にリリースされた、Atlanticレーベル時代のジャズロックな楽曲を集めたベスト盤。アルバムで言うと、『Good Vibes』『Gary Burton & Keith Jarrett』『Paris Encounter』『Throb』『Alone At Last』辺りから選曲で構成されている。
クロスオーバー・ジャズ時代のバートンの難点は、アルバム毎にその音世界のコンセプトは変わることが無く、曲の出来、演奏の出来によって、良し悪しが分かれるという傾向にある。
クロスオーバー・ジャズ時代のバートンの真髄を理解するには、その曲の出来、演奏の出来が良い楽曲を、複数のアルバムからピックアップすることが一番の近道になる。そんな近道を実現してくれているのが、このAtlanticレーベル時代のベスト盤『Turn of The Century』。
尖った硬派なクロスオーバー・ジャズの数々。当時、やっと進化を始めた電気楽器を駆使し、8ビートを大胆に導入しつつ、ジャズとロックの融合音楽をガンガンに弾きまくる。楽曲的にも良くこなれており、クロスオーバー・ジャズといえば、ラリー・コリエルやジョン・マクラフリンという名前が浮かぶが、それに拮抗するというか、同列に位置する、内容充実なクロスオーバー・ジャズがここにある。
ミルト・ジャクソンに次ぐ、ジャズ・ヴァイブ奏者のゲイリー・バートンの本質の一面が良く理解出来るベスト盤です。クロスオーバー・ジャズの好例としても良い内容です。ゲイリー・バートンに興味を持ち、彼を理解しようとする向きには格好のベスト盤でしょう。
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