超然と我が道を行くサックス
この人のテナーを聴いていると、スタイルとか流行とか、変化とか進化とか、そんなものには全く無縁、ただひたすら自分のスタイルでサックスを吹き、ただただ自分の思いつくままのフレーズを吹く。それがまあ、全くの自然体で、味のあること味のあること。
そのテナー奏者とは、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)。愛称デックス。この人のテナーは別格。他のテナー奏者との比較ということすら超越している。なんせ、彼の「ブリッ」という一吹きで、ああこれはデックスだ、と判るくらいの強烈な個性なのだ。
そんなデックス、彼のリーダー作はどれもが優秀だが、特に「ブルーノートのデックスに外れ無し」というのが僕の感想。特に、1960年代のデックスに外れは無い。どれもが、とても優れたハードバップな演奏ばかり。どれを聴いても「ああ、これがハードバップなんやなあ」と感じ入ってしまう出来のアルバムばかりである。
そんな中、僕が愛聴する一枚がこれ。Dexter Gordon『Doin' Allright』(写真左)。1961年5月の録音。ブルーノートの4077番。ハードバップが成熟した、絵に描いた様な優れたハードバップな演奏が聴くことが出来る一枚。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Freddie Hubbard (tp), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。
う〜ん、ブルーノート・レーベルならではの渋い人選。実はこのメンバー、初共演なんですね。調べてみてビックリしました。このアルバムの演奏を聴けば判るんですが、すごく息が合っているんですよ。初共演とはなあ。さすがブルーノート、リハーサルにしっかり時間を使っていますね。
特に、この Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds) のリズム・セクションが実に良い味を出している。この趣味の良いリズム・セクションが紡ぎ出すリズム&ビートに乗って、とっても気持ちよさそうに、デックスがテナーを吹き上げていく。
デックスの全くの自然体で吹くテナーの味わい。鼻歌を唄うように全く力みの無い、それでいてしっかりと芯のあるアドリブ・フレーズ。スケールの大きい、包み込むような吹き回し。決して耳につかない、適度なテンポ。時々顔を出すユーモラスな借用フレーズ。
本当に彼のブロウを聴いていると、スタイルとか流行とか、そんなものはどうでもよくなる。デックスはデックスであればよい。加えて、このアルバムのデックスのブロウはとても安定感がある。これぞハードバップ、という内容がとても愛おしい。
そうそう、忘れてはならないのが、このアルバムでのフレディ・ハバード。いつもははしゃいで、その優秀なテクニックをひけらかせて、ペラベラと雄弁に五月蠅い位に吹きまくるのだが、このアルバムのハバードはちょっと違う。なんと珍しく、控えめにそっとデックスに寄り添う様に吹いています。なんだなんだ、やれば出来るやないか。
さすがは「ブルーノートのデックスに外れ無し」。ハードバップど真ん中な一枚です。とにかくデックスのテナーが良い。ジャズ者万民にお勧めの好盤です。
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