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2015年11月 5日 (木曜日)

超然と我が道を行くサックス

この人のテナーを聴いていると、スタイルとか流行とか、変化とか進化とか、そんなものには全く無縁、ただひたすら自分のスタイルでサックスを吹き、ただただ自分の思いつくままのフレーズを吹く。それがまあ、全くの自然体で、味のあること味のあること。

そのテナー奏者とは、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)。愛称デックス。この人のテナーは別格。他のテナー奏者との比較ということすら超越している。なんせ、彼の「ブリッ」という一吹きで、ああこれはデックスだ、と判るくらいの強烈な個性なのだ。

そんなデックス、彼のリーダー作はどれもが優秀だが、特に「ブルーノートのデックスに外れ無し」というのが僕の感想。特に、1960年代のデックスに外れは無い。どれもが、とても優れたハードバップな演奏ばかり。どれを聴いても「ああ、これがハードバップなんやなあ」と感じ入ってしまう出来のアルバムばかりである。

そんな中、僕が愛聴する一枚がこれ。Dexter Gordon『Doin' Allright』(写真左)。1961年5月の録音。ブルーノートの4077番。ハードバップが成熟した、絵に描いた様な優れたハードバップな演奏が聴くことが出来る一枚。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Freddie Hubbard (tp), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。

う〜ん、ブルーノート・レーベルならではの渋い人選。実はこのメンバー、初共演なんですね。調べてみてビックリしました。このアルバムの演奏を聴けば判るんですが、すごく息が合っているんですよ。初共演とはなあ。さすがブルーノート、リハーサルにしっかり時間を使っていますね。
 

Doin_allright

 
特に、この Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds) のリズム・セクションが実に良い味を出している。この趣味の良いリズム・セクションが紡ぎ出すリズム&ビートに乗って、とっても気持ちよさそうに、デックスがテナーを吹き上げていく。

デックスの全くの自然体で吹くテナーの味わい。鼻歌を唄うように全く力みの無い、それでいてしっかりと芯のあるアドリブ・フレーズ。スケールの大きい、包み込むような吹き回し。決して耳につかない、適度なテンポ。時々顔を出すユーモラスな借用フレーズ。

本当に彼のブロウを聴いていると、スタイルとか流行とか、そんなものはどうでもよくなる。デックスはデックスであればよい。加えて、このアルバムのデックスのブロウはとても安定感がある。これぞハードバップ、という内容がとても愛おしい。

そうそう、忘れてはならないのが、このアルバムでのフレディ・ハバード。いつもははしゃいで、その優秀なテクニックをひけらかせて、ペラベラと雄弁に五月蠅い位に吹きまくるのだが、このアルバムのハバードはちょっと違う。なんと珍しく、控えめにそっとデックスに寄り添う様に吹いています。なんだなんだ、やれば出来るやないか。

さすがは「ブルーノートのデックスに外れ無し」。ハードバップど真ん中な一枚です。とにかくデックスのテナーが良い。ジャズ者万民にお勧めの好盤です。
 
 
 
★震災から4年7ヶ月。決して忘れない。まだ4年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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